第7話 サトウの憂鬱
朝になったので起きた、朝と言ってもここは地下なので眩しい朝日を見ることはない。
昨日あんな事があったから墓守の上層部達は徹夜で対策会議を進めていた、だからだろう、いつもは静かなこの時間も墓守達はどこか忙しない様子だった。
そんな様子をぼーっと見ながら持ち場へ向かっていると、後ろからムラタが話しかけてきた。
「おーい、サトウ、集合だ、なんでも臨時集会をやるみたいだぜ、多分昨日の聖剣絡みだろうな。」
わかったと言って振り返ると、いつもはこの時間寝ているシズクが珍しく起きていた。
「……何よ」
「あっ、いやごめん、この時間に起きてるなんて珍しいと思って。」
僕のそんな発言に気を立てたようにシズクは
「昨日あんな事があったのよ、あの後すやすや眠れる方がどうかしてるわ!」
と、かなりご立腹だった、そうえば彼女は昨日の聖剣争奪戦の時、援軍に行ったんだったな。
「まぁそうカリカリすんなよ、コイツはその時早上がりで寝てたんだから。」
とムラタがなだめるがシズクは「フン」と言って足早に集会に向かった。
「アイツ昨日あと一歩のところで盗っ人を逃してイラついてるんだよ、あんまり悪く思わないでやってくれ。」
ムラタは頰を軽く掻きながらそう言った。僕には何を思ってそんな事を言ったのかよく理解出来なかったが、ムラタが「俺達も、そろそろ集会行こうぜ」と急かすので、考えを辞め、集会に向かった。
集会の内容を簡単にまとめるとこうだ、
1、聖剣を盗んだ犯人はおそらく、過去に『隠していた魔法』を盗んだ盗っ人にしてこの街一番の大企業『バッファー社』の手の者だろうということ。
2、これからバッファー社に襲撃をかけるから各自準備に当たれ、斥候がバッファー社の最新の見取り図を作ってくるので斥候が戻ってきたらすぐに出発するということ。
僕は何もこんなに焦ったスケジュールを組まなくてもと思ったが、周りの墓守達は集会が終わるや否や大急ぎで準備を始めた。
なんでもバッファー社は「アレ」の正体を掴みかけていて、聖剣の解析が終わってしまうと、万に一つも勝ち目が無くなるらしい。
そりゃあ大変だと思いながらもどこか気後れして突っ立っていたが、珍しく焦った様子のムラタに急かされたので、僕もそそくさと準備を始めることにした。
この時の僕はまだ、聖剣を盗んだ相手がまさかこの街に無関係のよそ者だなんて思いもしなかった。
昼頃に斥候が帰ってきて、すぐさま見取り図を頭に叩き込み、ついに作戦が始まる。
「作戦開始ッ!」
「応ッ!」
長の掛け声が集会をやっていた大ホールに響き渡る、それに答え墓守達も声をあげる、僕は声を出す気分じゃなかったから、何となく口パクで誤魔化した。
作戦はこうだ、まず先行した墓守達が騒ぎを起こす、次に長を含めた墓守の最高戦力のグループが裏口からバッファー社に潜入し、聖剣及び盗まれた「アレ」のデータを回収するといった感じだ。僕とムラタとシズクの三人は騒ぎを起こす部隊の第ニ波を受け持った為、今さっき出発した第一波の五分後に出発、バッファー社周辺で状況を見て、第一波が劣勢になったら援軍として駆けつける手はずだ。
「あの、サトウ、さっきはごめん、その昨日のこと引きずっちゃって……」
僕たちの出発五分前、突然シズクがそんな事を言った。
「?」
僕が不思議そうな顔をしてシズクを見ると、
「だから、さっきはその———
「第ニ波、出撃ッ!」
シズクの言葉を遮るように出撃の合図が出た。
僕はその言葉の続きはもう聞けないんだろうな、そんな事を思いながら地下を後にした。




