第38話 さよなら、バッファータウン
ダッシュはバッファータウンの傍で、丁度いい馬車を見つけ、馬車留めのヒモを切り、御者席に座り、馬車を急いで走らせた。
「おっととぉ、馬車泥棒とはおじさん関心しないなぁ・・・・・・」
「どいてなおっさん、引かれちまうぜ!」
「おお、すまんすまん。ところで旦那、この街で白い髪の女見なかったか?」
コイツがシャーレの言っていたジンって男か。
シャーレとの激戦のすぐ後だからか分からないが、妙に感覚が研ぎ澄まされ、強者の隠しきれない殺気が感知出来た。
「い、いや、知らないな、先を急ぐんで失礼するよ。」
「旦那ァ、こんな夜更けに急いでどうするってんだい?」
感付かれたか・・・・・・?いや、まだ襲ってこない辺りまだ大丈夫だろう。
「馬車泥棒だからな、早いとこトンズラしてぇだけさ、じゃあなおっさん。」
ダッシュは馬車を走らせた。
すれ違いざまにおっさんをよく見ると、腰には地味な剣が一本刺してあった。
四天王の獲物があんな地味な剣だとは思えねーが、先を急ごう。
「アリス、フロウ!乗れッ!」
馬車を走らせバッファータウンから出た。
「ねぇこのシャーレさんの棺なんか重いんだけど。」
(それは氷の重さだよアリスちゃん・・・・・・)
「えっ、この人喋れんの?」
「違うぞダッシュ、この氷の棺外からだとビクともしないが中からだと魔法で不思議な振動を起こして声が出せるんだ。」
器用だなぁ・・・・・・
「よし、乗せ終わった。ダッシュ!先を急ごう!」
「固定はバッチリだ、いつでも出れるぞ!」
「よし、行こう!」
馬車を走らせた瞬間———
「!?」
荷台の後ろにさっきのおっさんが居た。
「やっぱりアンタだったのか・・・・・・」
「そりゃこっちの台詞だぜぇ・・・・・・」
ゴクリ・・・・・・、走る馬車の中、異様なまでの緊張感が走る。
「アリス、荷台を切り離せッ!」
フロウが真っ先に声を上げた。
「おっと、そうは行かないぜ!」
おっさんの居合い切りが飛ぶ!
「チッ・・・・・・」
ガキィン!ダッシュがその居合を防いだ!
「アリス!俺ごとでいいから荷台を切り離してくれ!」
「分かった!」
ギュイイイイイイイイイイイイン!!!
「俺と一緒に馬車から落ちてもらうぜ!」
「そいつは嫌なお誘いだなっ!」
おっさんは連続切りを放った!狭い荷台の中で溺れてしまえるぐらい大量の斬撃がダッシュに迫る!
「うおおおおおおおおお!」
た、対応しきれねー、何回か痛いの食らっちまった。
「これを耐えきるのか、なかなかやるな!」
おっさんの目は勝利を確信している様だった。
「だが本来の目的は果たさせてもらった!」
「あっ、まさか!」
シャーレの棺が置いてあった荷台の一部だけ斬り落とされている!
「ダッシュ!手を伸ばせ!」
フロウがロープを投げた、どうやらアリスが荷台を切り離し終わった様だ。
「いつか借りは返すからな、おっさん!」
おっさんはニヤリと笑うと、荷台から落ちて行った。
「ダッシュ、もっとスピード上げろ、あのおっさんが追ってこないとも限らねえ!」
「もう全速力だ!」
「ねぇねぇ、私達ってどこに向かってんの?」
そういや決めてなかったな、どうしよう。
「フロウ、どっかいい街とかあるか?」
「出来るだけ遠くがいいだろうな、少なくとも組織のテリトリーからは出ておきたい。」
地図を広げていたアリスが地図の一部を指指した。
「ここはどう?」
「職人の街か、いいんじゃねーの?俺の義手も探せるかもしれねーし。」
「よし、じゃあ次の目的地は職人街だ!行くぞおおおおお!
「うん!」「おお!」
気付けば夜も明け始め、漆黒の空に青い色が混じっていた。
日が昇る方向に向かって俺達は走った、戦いで得た少しの物と、失った物を抱えて———
エピローグ
朝起きると昨日から続いていた喧騒は何処へやら、このバッファータウンは静かだった。
いつもよりも早く起きたから街を回ろう、昨日の騒ぎがどうなったか気になる。
数分歩いた。
嘆く商人、瓦礫と化した家々、街の端の方まで行ってみると燃えカスとなった森まで見えた。
「今日はいつもよりも売れるな・・・・・・」
少年はいつもよりも早く家に帰り、パンを作った。
一番安い食パンを、いつもよりも多く作った。
第1部、バッファータウン編 完!
読んでくれてありがとうございます!おはようございます、作者です。
この転生勇者に3秒で負けたやつが主人公のラノベは私が「作品を完結まで作る」という目標で始めたもので、作品を作った事の無い作家志望だった私がここまで来れたのはなんだか感慨深いものがあります。
続編については考えてません。もし大反響があればフロウの義手を探す話とかダッシュ達の過去編とか組織の四天王達の話とか書いてみたいですね。
改めて、ご愛読ありがとうございました!




