第37話 絶望と交渉と勝負の行方
「命からがら森火事から抜けたよ!」
命からがら森火事から抜けたシャーレだった。
ここは何処だろう?暗い森の中、木を切り飛ばしながら出来るだけ真っ直ぐバッファータウンの方に向かった筈なんだけど・・・・・・
「おっ、あれはバッファー本社じゃん!でも割と遠いなぁ・・・・・・」
森から脱出出来ただけでもラッキーだろう、さっさと馬車でも見つけて組織の本部に帰ろう。
「って、そう簡単に行く訳無いよね。」
「よく分かってんじゃねーか。」
シャーレのすぐ後ろには魔獣の上に乗ったダッシュが居た。
「私も居るよぉ〜」
「アリスちゃんもいるのね・・・・・・こりゃあ参ったな。」
「へっへっへ、シャーレさん、その聖剣置いて行くなら見逃してやってもいいっスよ。」
「君は右腕切り飛ばされた・・・・・・えっと名前は確か・・・・・・」
「俺シャーレさんに名前覚えられてねーの!?」
「ドンマイだフロウ」「フロウフロウ!私はシャーレさんに名前覚えられてたよ!」
なんか魔獣の上は賑やかだなぁ。魔獣デカ過ぎてよく見えないけど・・・・・・
「まっ、とりあえず聖剣を渡すかどうか答えようか。」
シャーレの雰囲気が変わった。
それに気が付いたダッシュは隣のアリスを肘でつついて合図を出す。
「・・・・・・」
ゴクリ・・・・・・。
ダッ!
シャーレは驚異的な脚力で魔獣の頭の高さまで飛び上がった!
「僕の答えはコレだ!薄氷と火炎の聖剣の槍!!!」
氷牙を纏いし聖剣が、全てを貫かんと魔獣の額投げつけられる!
「その手はフロウが読んでたぜ!行け!アリス!」
「後で大金請求してやるからなダッシュ!」
アリスの戦闘用チェーンソートゥウィンクルのエンジンが変形し、パイプが生えた!
「うらああああああ!ターボストライク!」
惨殺の刃がジェット噴射で空中のシャーレに迫る!
「君達まさか、魔獣を捨てて僕の命を取りに来たのかい!?マズいぞぉ・・・・・・ッ!」
アリスのチェーンソーと薄氷の防御の相性はかなり悪い、ならばここはッ!
「アリスちゃん本体を撃ち落とすッ!氷の連撃銃!」
ババババババババッ!拳大の尖った氷の粒が大量にアリスに発射された。
「急には止まれないッ!突っ込むしか無いッ!」
ガガガガガガガガガガガッ!トゥインクルで大体の氷弾は防げたが、勢いが止まってしまった!
「うわあああ、落ちる〜!」
「はっはっは、僕といっしょだねぇ。」
「アリスとシャーレとついでに俺達が乗ってる魔獣も落ちる、どうするダッシュ!」
「シャーレの投げた聖剣を回収しよう。聖剣さえ取っちまえばシャーレの魔力も底が見える筈だ!」
「そうは行かないよダッシュ君!聖剣適合値が高い者のみが使える特権、聖剣回収!」
「ああ、クソッ聖剣がシャーレの手元に戻って行く・・・・・・」
「仕方ねーか、よし!フロウ、お前のフック返しとく、これで倒れていく魔獣から上手く降りてくれ。」
ダッシュは前だけを見ていた。
「・・・・・・勝ってこい。」
「おう!」
「アリス、手を出すななんて言わない。シャーレが隙を見せたら後ろからザクッと殺ってくれ。」
「いやダッサ、まぁやるけども。」
「ダッシュ君汚いぞー!」
「うるせー!どんな手を使ってでも倒してやるッ!」
ドッスーン!!!
「「ッ!」」
額を聖剣で貫かれ、完全に死んだ魔獣が倒れるのを合図に最後の一騎打ちが始まった。
ガキィン!
「流石にドーピングで適合値を上げただけあるね・・・・・・」
「逆にアンタはなんでドーピングも無しにそんなに強えんだよ・・・・・・」
「はっはっはー、それは乙女の秘密ってやつさぁー。僕にその聖剣を渡すなら、強くなれるようにトレーニングしてあげても良いけどね。」
「魅力的な提案だが、蹴らせてもらうッ!」
ダッシュは鍔迫り合いの形を崩し、シャーレの腹部に蹴りを入れた!
「入った!」
「浅いよっ!」
すぐさま切り返すシャーレ!
「その間合いなら当たらねぇ!」
「それはどうかな?」
斬ッ!
「なん・・・だと・・・ッ」
「ふっふーん」
シャーレが聖剣の切っ先を上げて見せると、聖剣の刃の先に氷を付けてリーチを伸ばしていたのだ!
「私の・・・・・・おっとアリスちゃん動かないでね。」
「チッ・・・・・・」
アリスは間合いの三歩前で止められてしまった。
「改めて、私の勝ちだね。」
「・・・・・・」
「提案があるんだよ、ダッシュ君。」
「・・・・・・」
「私の直属の部下にならないかい?今回戦って分かった、君は強い。このまま殺してしまうのは惜しい程に。」
「・・・・・・」
「悪い話じゃ無い筈だぜ?そこのフロウ君・・・・・・だったか?の腕も僕の方でなんとかしようじゃないか。」
シャーレがその白い手を伸ばしてくる。
「・・・・・・少し、考えさせて下さい。」
ダッシュは少し虚ろな目で言った。
(堕ちたな・・・・・・)シャーレは心の底でほくそ笑んだ。ダッシュの目が心が折れた人のソレだったからだ。
「ダッシュ!俺はどっちでも良いけどよ、これはお前が始めたケンカだぜ!」
「ダッシュ、これはダッシュが決めるべき事なんだよね・・・・・・それはともかくここで私がシャーレさんに斬りかかったら面白くなぁい?」
「おっかない事言うねぇアリスちゃん、怖い怖い。ってな訳でダッシュ君、答えを聞こうか?」
「は、はい・・・・・・俺はシャーレさんの部下に・・・・・・」
ニヤリ———
「ならねーよバカが!俺は何にも譲らねぇ!回復の時間をくれてありがとヨォ!」
「見え見えだよダッシュ君!」
自分に注目を向けさせ、後ろのアリスちゃんの攻撃から意識を逸らす作戦だろう。
ギギギギギギギギギッ!よし、アリスちゃんの攻撃を凌いだ!後は———ッ!
「ゴハッ・・・・・・!?」
パンチだと!?何故そんなに早く動けるんだ?
ダッシュを見ると、身体の所々が燃えていた。
「成る程、傷口を燃やして止血したのか。ダッシュ君も案外演技派なんだねぇ、騙されちゃったよ。」
「い、いやシャーレさん。違うんだ。」
「あれ、また違った?」
「俺は本当に諦めていた、だから提案にも乗ろうと思った。だけど、勝手に身体が治ったんだ、勝手に身体が燃えたんだ!」
「ふぅん」
「勝てると思った、勝ちがまだあるなら、俺はそれを譲りたくねぇ!」
聖剣の適合値が高いから、生存本能にリンクしたりして身体を勝手に修復したった所か。
それにしたってあんな諦めてたのに勝ちがあり得ると思った瞬間すぐ手のひら返して戦いに行く精神はなかなかのものだ。
「まったく、流石だよダッシュ君。君の勝ちだ。」
「うおおおおおおおおお、あのシャーレさんに勝ったぞおおおおおおおおおお!」
「やったなダッシュ!」「今夜は私ドン勝食っべるぅ!」
「うんうん、すごいすごい。さて、僕はっと。」
シャーレはバッファータウンの方を向いた。
「ジンさーん、居るんでしょー。タースーケーテー!」
シャーレは仲間を呼んだ!
「あっ、こいつ仲間を呼びやがった!」
「ふふふん、それじゃ僕は事が終わるまで眠らせてもらうよ!氷の棺」
シャーレの身体が聖剣ごと氷の棺の中に!
「あっ、聖剣が!」
「後にしようぜ、ハッタリかどうか分かんねーけどジンって言ったらレジスタンス達の英雄にして組織の四天王の一人、勇気ある人ジン=ウォッカだ!」
「それってヤバくない?」
「チッ、しゃーねー。このシャーレさんの棺持ってズラかるぞ!」
「そうだな、この疲弊した状態で戦いたくはない相手だぜ。」
「俺は手近な馬車をパクってくる、アリスはフロウと一緒に辺りを警戒しといてくれ!」
「分かったよぉ〜」「急いでくれよ!」




