第36話 森の一幕
「上昇剤を大量に飲んで最初の聖剣所有者並に適合値になる事で魔獣の封印を解除したのか・・・・・・考えたなダッシュ君。」
『ゴオオオオオオオオオオオオオオ!!!』
「あのデカブツ僕に向かって突っ込んで来やがった、マズいぞぉ、流石のシャーレさんでもアレを相手取るのは無理がある。」
山の様な巨体、燃える身体————!?あれ、炎に隠れてよく見えないけど、一部だけ燃えてない所がある、傷だ、それも新しい傷。まさか僕のメテオのとばっちりを受けたのか?だとしたらまだ勝機はある!
「氷の王道ッ!」
瞬時に氷の道が出来る、そしてそれは魔獣の一番大きな傷口へと向かう。
「疾ッ!」
シャーレは聖剣を片手に氷の道を駆け上がる、それは魔獣の突進より早い!
「とうっ!」
氷の道からジャンプし、魔獣の巨大過ぎる身体に聖剣をピックの様にして張り付く。
『ゴオオオオオオオオオオ!!!』
魔獣がたまらず暴れる。
「ぎぁああああ、落ちる!落ちる!」
シャーレも必死にしがみ付くが、このままではいずれ落ちるのはめにみえていた。
「しゃーない、ちょっと痛いけどあれやるかぁ」
シャーレは自分の腕と魔獣の肌を凍らせてくっ付けた!
「よし、これで落ちないな———」
フラグだった、シャーレがしがみ付いていた傷口付近も燃え始めたのだ!
「だっ、ダメだ、しがみ付いてられない!ならばせめて・・・・・・」
シャーレはお土産だとばかりに魔獣の傷口に聖剣の一撃を叩き込んで落ちて行った。
「華麗に着地!」
スタッ、と擬音が聞こえそうな程に華麗な着地をしたシャーレは辺りを見回した。
どうやら魔獣にしがみ付いている間にさっきの広場から森に移動していたらしい。
上を見上げると、木々の隙間から辺りをキョロキョロ見ている魔獣が見えた。
「木のお陰で、木の影に隠れる事で魔獣は僕を見失ったみたいだけど、コッチもダッシュ君を見失ってしまったなぁ」
ダッシュ君を探し出して倒して魔獣を止めるか・・・・・・
いや、もうこのまま逃げようかなぁ、正直元々の目的は達成した訳だし、ダッシュ君も組織から仲間を何人か連れて来れば楽勝だろうし。
「よし、帰って寝よう!」
そうと決まれば脱出だ、夜の森はめちゃくちゃ暗いが、魔獣の炎のお陰で明るかった。
そう、炎のお陰で———
「火事じゃん・・・・・・」
「ハァ、ハァ、に、逃げねーとヤバいッ!」
時は少し巻き戻る。
今はダッシュとシャーレの戦いが始まってすぐだ。
フロウはここに居たら間違いなく消されると考え、シャーレの注意が自分から外れた瞬間即逃げ出したのだ。
しかし右腕を切り飛ばされたダメージは大きい。いくら傷口を凍らせて応急措置をしたとは言え走る事は出来ない、それどころかバランスが狂いまともに歩く事すら難しかった。
かなりの量の失血により失った大量もそうだがこの暗い夜の森もかなりキツかった。
「このまま適当に進んで夜明けを待つか?い、いやダッシュの野郎がもし負けたらアリスも俺も簡単に消されちまう、何とかしてアリスと合流しなくてはッ・・・・・・三人で逃げるにしろ、戦うにしろ、何の情報も無しに殺されちゃあ流石にアリスが可愛そうだ。」
しかしアリスが今何処に居るかも分からないしこの体力じゃ何処も目指せない・・・・・・
「いや、ここはしっかり考えよう。シャーレから距離は取ったし夜の森なら簡単には見つからない筈だ。」
そうしてフロウは手近な木に寄りかかった。
深呼吸して思考を整える。まずは状況整理だ。
・・・・・・絶望しかねぇ・・・・・・
ギュイイイイイイイイイイイイン!!!
「誰だ!」
フロウが音がした方向を振り向くと、虚ろな顔をして手に持ったチェーンソーでそこら中の木を切るゴスロリ女が居た、電源ランプが怪しく光っていた。
「きゃああああああああああ!」
フロウは思わず乙女の様な気持ち悪い悲鳴を発してしまった。
「あれ、フロウじゃんどうしたのぉ?」
何とゴスロリ女はアリスだった!
「お、おう・・・・・・受け止め難い現実から目を逸らしてた所だよ・・・・・・」
「あっそぉ〜」ギュイイイン「あ、あれ、手ぇ切れてるじゃん」ギュウウウン・・・・・・
「いやちょっと指切っちゃったみたいに言うなよ!見ろよこの傷!すげー痛いんだぞ!」
「うわぁ、痛そー」
「だろ?これがめっちゃ痛くって・・・・・・ってそんな事はいいんだ、良くはねーが。」
そうしてフロウは話を切り出した。
「———って訳なんだ。」
「なるほどね」
「ところでお前さんはなんでこんな森に居たんだ?」
「私疲れるとねー、よくこのトゥウィンクルで木を切るんだよね、なんか妙に馴染むっていうか、それがまるでこの子の本来の使い方であるかのような・・・・・・そんな感じになって心が落ち着くんだ。」
「ふーん」
「まっ、とにかく急ごうよ。そこそこピンチなんでしょ。」
「あ、ああ。けど俺そんなに早くは歩けねーからな!」
描写不足な点が有った為、第34話を修正しました。




