第34話 二剣落着
「うおおおおおお、氷弾氷弾氷弾!」
僕こんなに必死になったのいつぶりだろう?ともかく一瞬のチャンスだ、無駄には出来ない。
「くっ、」
苦し紛れにサトウが聖剣を振るが、上手く身体が動かず、何発かは食らってしまった。
「チャンス!その聖剣貰ったああああ!」
「くっ、シズク、お前だけでも逃げろ!」
なんとサトウはシズクを聖剣で攻撃した!
「何を・・・・・・」
ガキィン!
「サトウ、ごめんね・・・・・・」
シズクはサトウの斬撃を聖剣で受け、吹っ飛ばされた!
「俺が望んだ事さ・・・・・・」
「まさか逃げられるなんて、だけど一本は貰うよ!」
「ここまでか・・・・・・」
シャーレの氷剣がサトウを貫き、そしてシャーレは聖剣を手に入れた。
「サトウ・・・・・・、着地したら直ぐにあの女からサトウの聖剣を・・・・・・ッ」
急激に引っ張られる様な感覚がシズクを襲う!
「釣れたぜクソッタレ!」
「なっ、あの時の聖剣ドロボー!」
「堕ちなァ!」
地上のダッシュが何か引っ張る様な動作を見せると、シズクの体はまた引っ張られ、無防備に地面に落ちて行く。
「———!?フックか!?」
「今更気付いても遅いぜ!」
「いいや遅くないわ、ふんぬうううううう!」
シズクはフックロープのロープ部分を掴み、引っ張った!
「こ、コイツ、なんて馬鹿力だ・・・・・・だが!」
ダッシュが体を持っていかれながら何かを操作した、すると———
「ぎゃああああああああああ」
「このフックロープはフロウの特注でな、特殊な操作をするとロープ部分に高圧電魔法撃流が流れる様になっていたのさ、煙幕貼った時に拾えて良かったぜ。」
黒焦げと聖剣が落ちて来る、ダッシュは聖剣を回収し、黒焦げからフックを外した。
「まーたフロウに助けられちまったぜ、今回の報酬から少しぐらいはアイツに分け前をくれてやるかな・・・・・・」
「おお、ダッシュ・・・・・・終わったか・・・・・・」
「ああ、終わったな・・・・・・」
もう一本の聖剣もシャーレさんが回収し、残っていた墓守も全滅していた、一件落着って感じだった。
「ほれっ、サンキューな」
と、俺が投げたフックロープをフロウは残った左腕でキャッチすると、「ぶった切れた俺の右腕どうしようかなぁ」ってぼやいた。
凄く長い戦いだったがこれでようやく終わる。
アリスを拾ってとっとと俺達の街に帰ろう、ケチなマスターの酒場に行って浴びる程酒を飲もう。
「———ッ!」
!?、何かが迫って来た気がして咄嗟に躱すと、そこにはシャーレが居た。
「ハッハッハー、いや〜ごめんね、手が滑っちゃったよ。」
「んも〜、疲れてるんスかシャーレさん?」
「アッハハハー」
「って、そうは済まされねぇっスよォ!」
横薙ぎの一太刀、シャーレは当然のようにバックステップで躱した。
「(まぁ当たらねーよな・・・・・・)事情ぐらいは聞いていいっスか?」
「いいよー、不意打ちを避けれたご褒美って事でね。」
シャーレは視線を落としながら続けた。
「ダッシュ君は僕が依頼したミッションは覚えているかな?」
「この街に隠された魔法を探せ、っスよね?」
「そうだ、そしてその魔法は今僕のこの手の中にある」
シャーレは右手に持った二振り目の聖剣を掲げて見せた。
「そもそも僕がこの依頼をしたのはね、魔獣を封印し、その魔獣が持つリソースを吸い上げるシステムを手に入れる為だったんだよ。」
「なるほど、よく分からねーですけどその話とさっきの不意打ちになんの関係が?」
「話は最後まで聞けよ、まぁ、簡単に言うとダッシュ君、君の持っている聖剣がそのシステムに必要不可欠だった、だから奪おうとした。」
「おい、待てよ!」
フロウが声を荒げる。
「聖剣が欲しいなら報酬に色を付けたりしてダッシュから回収すれば良いだけじゃねーか!わざわざ斬りかかるなんて———」
「いやフロウ、それは違う。」
俺はフロウの言葉を遮る。
「まっ、やっぱりそうだよね〜、ダッシュ君は。」
「なっ、どうゆう事だよ!?」
「ダッシュ君はね、もう聖剣の力に魅了されちゃってるのさ。」
ああ、そうさ・・・・・・
「シャーレさんの言う通りだ、俺はこの力を誰にも譲るつもりは無い。」
俺は聖剣を———俺の力を構えた。
「いやー、まぁそうなるよね・・・・・・」
「いやダッシュおかしいだろ!何力に溺れてんだよ!」
「・・・・・・俺は今回の戦いで思い知ったのさ、コイツ・・・・・・この聖剣が無ぇと、もうお前やアリスに付いていけねぇって事を!」
歯をくいしばりながら今回の戦いを思い返す、アリスは墓守の頭とやりあって勝った、フロウだって策を巡らせて自分より強い相手を倒した、それなのに俺は大したことをしていない、聖剣を持っていながらそれを掻い潜られてパクられる始末だ、こんな惨状で聖剣のパワーまで失ったら、俺は本当のカスになっちまう。
「聖剣は今回の手柄に貰ってこーと思ってたんだがなぁ、流石にそうは行かねーよなぁ・・・・・・」
もう言う事は無い、そうして視線を上げると、とんでもない光景が目に入った。
「・・・・・・え?」
シャーレが度肝を抜かれた様な顔をしていたのだ!
「ちょちょちよ、ちょっと待ってくれ、ストップ、ストップだ。」
「なんスか、もう話す事は無いっスよ。」
「いや、ダッシュ君正気なのかい?」
「・・・・・・ケンカ売ってんスか?」
「うわああああああ正気だコレ、ダッシュ君頭の中に『ウチクダケ・・・・・・』とか聞こえてこない?」
シャーレの様子は怖い程おかしかった。
「いや、今は・・・・・・」
ちょっとビビって素直に答えちまった!クソッ、ペース狂うぜ!
「じゃあダッシュ君、正気で僕に聖剣を渡さないつもりなのかい?」
「そうっスけど・・・・・・」
もうなんなんだよ!
「いや〜、てっきりダッシュ君に仕込んだ適合値上昇剤の副作用がきてるのかと思ったよ。」
今なんかさらっととんでもない事を言われた気がする。
「適合値上昇剤?副作用?何の事だよ!?」
まぁそうなるわな、と言った感じてシャーレは頭を掻いた。
「ドーピングだよ、ダッシュ君。君には元々聖剣を握る才能なんて無かった。」
「・・・・・・え?」
「聖剣を握るにはね、聖剣との性質的相性、基礎魔力量の多さもしくはその両方が必要なのさ、そして君にはその両方が無かった。」
驚愕する俺をよそにシャーレは語った。
「今回の依頼では聖剣と接触する可能性が高かったからね、君がこの街に来る前に隙を見て飲ませたのさ。」
「あっ、あの時・・・・・・」
思い当たる節はあった。
「しかし運良く聖剣を手に入れたのもそうだがまだ正気を保ってるもの中々のものだよ、上昇剤の副作用は聖剣に精神を侵食される事だからね。」
まぁ、シャーレの話の半分は分かった、相手が正気を失ってるともなれば後ろから斬りつけるのも納得できる。
「・・・・・・でまぁ、やろうか。僕から斬りかかった訳だし、君も最初から聖剣を渡すつもりも無いみたいだしね。」
「そうっスね・・・・・・」
「俺は打ち砕く紅き聖剣の使い手、ダッシュ!」
「僕は全てを凍てつかせる薄氷の魔人、シャーレ!」
「「いざ、勝負!」」




