第3話 船出と地下と眠りし悪魔
フロウの部屋に着くと「やぁパシリ君お疲れ様」「ダッシュありがとねー」と二人が迎えてくれた。フロウ・・・・・・テメーは三枚におろす。
二人とも服を着替えていた、フロウは地肌の上にアロハシャツと黒いズボンといういつもの姿に、アリスは上下赤いジャージ(萌え袖は健在)と言うさっきまでゴスロリな服を着ていたとは思えないファッションだった。触れないでおこう・・・・・・
取り敢えずみんなで多少ペペロンチーノをつまんで腹の虫を黙らせた後、俺は話を始めた。
「なるほど、確かにそれはいい設け話だな」
フロウはそう言って頷いた、やはりコイツは話が早い。アリスの方も特に意見は無いようなので、今日中に荷物をまとめて明日の朝にでも出発する事になった。
翌日、いつもの服装に着替え、荷物を馬車の荷台に詰める、出発祝いに一杯飲んでから馬車に乗った。
「目指すはバッファータウン、行くぜええええええええええ!」
「うおおおおおお」「おーー」
そうして馬車は真紅に燃える朝焼けの中に消えて行った。
時は戻ってダッシュ達が出発する数日前、バッファータウン某所。薄暗くジメジメしたその場所は異様な熱を帯びていた。
そこには怪しげなフードを被った集団が居た、数は十数人といったところだろうか。
「ではこれより定期会議を始める」
渋い声、フードから覗く口元にはしわがあり、年老いている様だ。
「長、地下調査隊から報告です。深層の”アレ”の状態が不安定で近いうちにこの町のエナが暴走する恐れがあります。」
中年ぐらいの男が緊迫した面持ちで報告する。周りの人間にも緊張や不安が伝わっていく。
「地上でもあの盗人どもがやたらめったらにエナを操っている・・・・・・不用意にエナを使い魔法を連発すれば”アレ”を刺激する事など目に見えているだろうに。」
「見に行った者が言うには聖剣が光ったって・・・」「聖剣に異常だと!聖剣にもしものことがあれば地下のアレが目覚めるかもしれんのだぞッ!」
会議が荒れる、若い声やら老いた声、小さい声から大きい声、混ざってしまえばそれは等しく騒音で、その音からは何の情報も分からない。すると、長と呼ばれた男が口を開いた。
「聖剣の様子については確証を、盗人どもへの対策は地上に上がるエナの量を減らせばよい。」
「つまりアレの封印をする人員を増やすということですか?」
長は「うむ」と言って続ける。
「封印を強くすればアレから流れるエナの量も減り、アレの状態も安定するじゃろう」
「分かりました。ではサトウ、シズク、ムラタの三人を追加で封印係に採用します。長、問題無いでしょうか?」
「うむ、これにて解散!」
会議は終了し、各々の足取りで闇の中に消えていった。
アレが封印されている深層はとても暑く、怪しげなフードの集団———墓守と呼ばれる彼らにとって深層に行かなければならないアレの封印係は墓守の中でも嫌がられる仕事であった。
段々と周りの空気が暑くなるのを感じながら僕ら三人は深層へと続く階段を下りていた。
「暑い・・・・・・」
沈黙を破りそう漏らしたのは、赤くて整った髪が滝のような汗でぐしょぐしょになったムラタだった。
「この下はもっとあついんですからこんなところから泣き言なんて言わないでくださいよぉ・・・・・・」
そう答えた目が死んでる僕ら下っ端三人組の紅一点シズク、彼女の青くて長い綺麗な髪も今となってはもう見る影もなかった。
「ンなこと言ったって暑いモンは暑いだろーが!」
「別にそんなこと言ったって暑さは変わらないでしょ・・・・・・」
そんな二人の会話を横で聞きながらスタスタと階段を下って行くと、階段の終点———封印係の仕事場に付いた。アレが放つ炎の様なオレンジ色の光はやけに明るくて不気味だった、それをボーっと眺めていると後ろから軽いノリの声が聞こえてきた。
「おーい茶髪ーアレは見えたかー?」
ムラタお前・・・・・・僕の名前覚えてないのか・・・・・・、僕は足を止めて「眩しくて見えない」と答えて足を止めた。
二人の方を見ると結構距離があって待っている間なんとなく手持ち無沙汰だったので二人の会話を聞いていた。
「茶髪って・・・・・・流石にそんな呼び方は無いでしょ・・・・・・。」
沈黙するムラタ、シズクはそれを見て何か察した様に言葉を続ける。
「まさかサトウの名前忘れてたの!?」
「あっそうだよサトウサトウ!ついでにで悪いんだけどアイツの下の名前も忘れちゃって・・・・・・悪いんだけどこの際だから教えてくんね?」
ため息をつきながらやれやれといった様子でシズクが答える。
「もう忘れんじゃないわよ、サトウの下の名前は———
ダッシュ達の出発と、怪しげな黒フード達・・・・・・
次回からとうとう物語が動き出す!




