第19話 大いなる目覚め
この球体、仕組み自体は単純だけど操作している魔力量が多過ぎる、やっぱりこの街がビンゴかな。
シャーレはサトウから奪った球体を走りながら解析し、そんな事を考えていた。
「!?」
突然球体の魔力の波長の振れ幅が大きくなった!
「まさか、この球体の中身をぶち撒けよぉってのか!?」
流石のシャーレも流石に焦る、そんな事をしたらどうなるのかだって想像に容易い。
「氷獄結界ッ!」
氷魔法の派生の一つ、氷獄結界、それは対象を氷で閉じ込めて封印する魔法の上位魔法だった。
「を、球体の内側にッ!」
球体ごと氷漬けにしても、内なるモノのパワーには敵わない、ならば完全に出切る前にその内なるモノのパワーを削ぐ!コレは魔法操作に長ける僕にしか出来ない芸当だろう、いやぁ〜シャーレちゃん天才!
「なんて言っても余裕全然無ぇけどな。」
球体から紅い光が溢れ、世界は紅に包まれた。
「うおおおおおお、アリスやっちまえーーーーー!」
「長あああああああ、勝ってくれえええええええええ!」
時は戻ってバッファービル前、アリスと墓守の長の頂上バトルをダッシュ達、そして墓守達がそれぞれ戦いながら応援していた。
「アリスそこだあああああ、あっぶねぇ!」
「チッ、避けたか・・・・・・長ああああそんなヤツに負けないでええええええ、ゴフッ」
黒フードにタックルをかましたフロウが鼻を掻きながら、
「よそ見とは随分と余裕だなぁ!いいぞアリスううううううう!」
そんなブーメラン発言をした時だった。
世界は紅い光に包まれた。
世界は紅い光に包まれた。
一瞬の後、それはそこに居た。
山と見紛う程の巨体、燃える身体、荒々しいツノ、紅いバッファローの魔獣がそこには居た。
圧倒的質量!圧倒的パワー!最強おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
『グオオオオオオオオオオ!!!』
大気を揺るがす咆哮、その場の誰もがソレを見上げた、アリスと墓守の長を除いて。
全ての者が強大な力に当てられ、さっきまでの合戦と打って変わって静寂に包まれたバッファータウンで、それでも二人は戦っていた。
「いい加減殺されやがれゾンビジジイッ!」
「ワシにもお前さんがゾンビかなんかに思えてきたわい」
一呼吸の後、両者の必殺技が交差する。
「回転率220パーセント!オーバードライブッ!」
「石槌拳!」
強大なパワーがぶつかる刹那、強大なパワーに引き寄せられたもう一つのパワーが突進する!
『オオオオオオオオオオ!!!』
「「邪魔だデカブツがぁッ!」」
二人の必殺技が方向を変え、紅バッファローの魔獣の山の様な巨体をキロ単位でぶっ飛ばす!
強者同士の戦いに水を差す無粋は許されない!
「さぁ、続けようか、小娘」
「ああ、今の邪魔で私の回転数も上がっちまった、衝動はもう抑えられない、」
スゥーーーーー。
「回転率、計測放棄モード!」
「墓守拳法、止の型。」
墓守拳法、止の型。それは墓守拳法の原典となった拳王の指南書の禁書項目を解読、その後自分の身体に合わせてチューンアップする事で完成した墓守の長の奥義モード、己の心臓、呼吸、代謝を止める事で、技の威力が上がり、そしてその技は途切れる事は無い。
ワシは目の前の敵をただの狂戦士と見た、しかしこうも思った、ここまでの強敵、己が命を懸けてでも打ち倒したいと。もっともそんな思考はもう置き去りにしてしまったがな。
「この一合が終わる時、私かジジイ、どっちかは死んでるんだろうな。」
狂戦士の声色には月夜の湖面の様な平静さがあった。
「ああ、」
思考は終わる、もう何を思う事もあるまい。
「「いざ、最終勝負ッ!」」




