中年おっさん、戦国をゆるく生き抜く
習作です。完全なる。ごめんなさい。
とても冷える夜だった。
その分空が澄み渡り煌めく星の海を月の船が航る夜。
僕はうっかり死にました。
ええ、うっかりしてましたね……
趣味である中世の城館探索中に山の中で迷子になりまして、堀切から転落しちゃいました。てへへ。
そう、転落したはずなのでした……
「こらこらこらこらあー!」
いきなりの怒声に耳を驚かされた
見ると鍬を持った翁が走りよってくる。
「ただで飲み食いしたんじゃからぼさーっとしとらんでもっと働かぬか!この盗人めが!ふんじばって谷に捨ててくるど!」
気合い入りまくりなこの翁はこの家の主である。
した森「なんばいうとですか、盗人じゃなかろうもん。芋汁はうまかったけど盗んでなかとですよ?食べちゃいますよーって声かけたじゃないですか、、、返事なかったけど。」
「このあほたれが!返事もなしに人の物を食うのは盗人に決まっとるわい!しのごの言わんと働かんかい!」
「へいへい勤労は尊いですよねー」
二人は口喧嘩しながらも、原野を開墾していた
冬枯れの野に一昨日火を放っておき、その火が消えたので木の根や石を掘り起こしていたのだ。
もう半日も動いていたのだが、物思いに耽ってしまい、叱られてしまったのだ。
なぜ開墾をしているのかというと……
それは5日ほど前のこと、僕は具合が悪くてたまらない!と思い目を覚ました。
あたりは鬱蒼とした森、小鳥の声が耳を驚かす
(そっか……あのときうっかり落ちて……
この具合悪さは死ぬからなんだろうな。
こんな美しい場所で最後を迎えられるのは幸せだったのかもね
多少心配してもらえるかな、泣いてくれるだろうか。
結局、情を交わしてはくれなかったけど、少しはあの人の記憶に残れたのかな。もう一度、声が聞きたいな。
気持ちが全くないことは知っている。
ただもう一度、あの人の声を聞きたかったな。)
感傷的になってしまい、涙が頬を伝う。
つい瞼を擦る。
あれ?動くし痛くないや
おや?足も動くし立てるよ???
「あっれー?どこも痛くないし動けるよ?」
それを把握した刹那、虚脱感が襲う
そっかお腹減ったのか!だから具合悪くなっていたのだった。
その場を離れて下山しようとあたりを見回すと、リュックサックが落ちていた。愛用品があったことに安堵して移動を始めた。
川の音を頼りに、上流へゆっくり移動する。
縄張り図と地図の記憶によると、落ちた場所は山の尾根を切断する堀切で、ちょうど切岸になってたはず、一旦山を越えないと里には出られないはずだった。
山に囲まれた場所のはずなのだ。
30分ほども歩いたところで、不安に教われた。
規模の小さな城跡なので、10分もかからないはずなのだ
おかしいと思い始めたころに、翁の家を見つけたのだ。
古い家が残ってるもんだな、やっば絶対あれ心スポ……
と、思いながらも近寄ってみると、いい匂いがしてくる。
まんが日本昔話さながらに、ぐつぐつとおいしそうに囲炉裏に鍋が煮えていた、怖さはあったが空腹には耐えられず
ついつい手を出してしまったのだ。