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ドリームキャッスルの中は、中世の長廊下が続いていた。辺りは暗く、窓から照らされる薄い月の光だけが、ぼんやりと道標を示す。
夢二はスマホのライトをつけた。もう充電は5パーセントしかない。すぐに金太を探し出さなければ。
「金太?」
美しく不気味な城内では、一際自分自身が孤独に思えた。
何故、二人は死ななければならなかったのだろう。あの殺人鬼は一体何者なのか。
靴音を鳴らしながら一歩一歩進んでいく。扉を一つ一つ確認するが、鍵がかかっていて入れる部屋はまだない。すると、突然クラシカルな音楽が流れ出してきた。
夢二はこの音楽を知っていた。
小さな頃に、この遊園地に遊びに来ていた時も、この城の中で流れていた。
また幼い記憶が溢れ出す。
棺桶の中で、眠っている父の姿。
黒い親族達はそれを見つめている。
母は、その後、新しい父の代わりを連れてきた。
「夢二、今日からこの人があなたのお父さんよ」
差し伸べてきた、まるっきり形の違う大きな手。夢二はその手を振り払い、逃げた。母は怒って、夢二に叫んだ。
「あんた、何でそんな事するの!」
夢二は知っていた。こんなの父親じゃない。母は騙されている。これは夢で現実ではない。本当の父はもっと優しくて、温かくて、いつも愛してくれた。
ドリームキャッスルの中で、迷子になった子供の頃。手を掴んでくれたのは、あのウサギの着ぐるみだった。
あの優しい手の温もりを、夢二は知っていた。