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ドリームキャッスルは園内の中央にある。そこへ行くには観覧車を通って行かなくてはならなかった。
夢二はなるべく音を立てないようその場からドリームキャッスルへ続く道へ急いだ。
「何でこんなことに」
こんな事になるのだったら、くだらない提案は止めるべきだった。
でももう遅い。光博と美希は死んだ。あのウサギに殺された!
自分も殺されるかもしれない。早く金太を連れてここを出なければ手遅れになる。
夢二は観覧車へたどり着いた。ドリームキャッスルへは後少しで着く。
その途端、観覧車は色を放ち、動き始めた。
夢二は、立ち止まってその光景を見た。
「何なんだよっ」
すると、夢二の頭の中で、またもや幼少の頃の記憶が蘇ってきた。
「ほら、パパと乗ってきなさいって言ってるでしょ?」
「嫌だ」
「どうして嫌なの?わがまま言わないの」
「この人は僕のパパじゃない!」
母親は、この人をパパと呼ぶ。父親は、もうとっくに死んでしまったのに。
見知らぬ人の差し伸ばした手を、夢二は振り払った。
観覧車の裏で、ウサギが笑ってこっちを見ている。まるで夢の国へ誘うように何度も手招きしている。
夢二はウサギを無視して、ドリームキャッスルへ足を走らせた。
園内の中央に大きくそびえ立つドリームキャッスル。絵本の中に出てくる、本当にお姫様の住んでいるような城だった。だが、何年も整備されずに放置されていたため、錆びつきおどろおどろしい雰囲気を漂わせている。
門の前まで行くと、着信音が鳴った。金太からだった。
無事だったのか、と喜んで電話に出た。
「金太か!今どこにいる!?」
しかし金太は答えない。はぁ、はぁ、はぁと息を荒らげた声だけが聞こえてくる。
「金太?おい、どうした、大丈夫か?」
『た……すけ、うわぁぁあ!嫌だ!嫌だ!やめろ!俺に近づくな!』
突然、電話越しに金太は激しく叫びだした。
「金太!おい金太!」
受話器からはツーツーと音が虚しく響くだけだった。
「早く金太を助けないと」
夢二は暗いドリームキャッスルの中へと急いだ。