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第8話:雄輔said

 

(何やってんだ俺は……)

部屋に戻った俺は、ベッドに身を投げながら頭を抱えていた。

奈々にキスした……!?

しかもディープだと……!?

……最悪だ……。

「雄輔さん、よろしいですか?」

ドアの外から笹本が声をかけてきたので、俺はゆっくり頭を上げながら返事をした。

「……入れ」

「失礼します」

俺の力無い返事に、笹本がクスクス笑いながら入って来た。



「……どうしたんですか?」

「は?」

「奈々ちゃんの事です」

いきなり言われて、俺は笹本に目線を送った。

こいつは俺の知り合いの中で唯一睨んでもびくともしない。

「瑞希ちゃんと、重ねてたりしませんよね?」

「何で?重ねてたら何かあんの?」

笹本の問いに俺は、ちょっと得意気に返してみる。

だが笹本はより真剣な顔になって声を荒げた。

「重ねたら、瑞希ちゃんの気持ちが浮かばれません!……忘れたんですか?」

「……わかってる」



瑞希が死んだ日、瑞希の机の引き出しから遺言が出てきたのは、俺と笹本が死んだと知らされ病院へ行っていた帰り道だった。

急に瑞希のおばさんが俺の携帯に電話をかけてきて、

『瑞希の遺言が……あったの』

て寂しげな声で言うから、偽りじゃないと悟り、瑞希の家に向かった。

遺言には、『もう私は忘れて』『新しい人が出来たら、その人をいっぱい愛してあげて』って書かれていた。

俺はあの日から、新しい恋なんてものはしていない。

むしろ出会いが無かったと言うのが正しいのか……?



笹本は俺の顔を見ながら言葉を続けた。

「それに、奈々ちゃんは……あなたにとって瑞希ちゃんの言う新しい人になるかもしれないじゃないですか」

つまり、俺がこれから愛していく女って意味なんだが……。

瑞希には申し訳ないが、俺は笹本に言われる前から、新しい出会いなんだって思ってた。

もう俺自身が、お前に終わりを告げていたのかもしれない。



笹本が出て行って、俺はすることも無くただ黙って書類を整理していた。

親父が金を貸した奴等の、名前や住所、家族構成やらやらをまとめられた書類だ。

「まだこんだけ返ってねぇのか」

俺は深くため息をつきながら、書類の整理を進めた。

書類を見つめながら、俺は自分の心と向き合っていた。

(俺は奈々をどう見てるんだ?……瑞希と重なる部分は確かにあるけど……)

考えているとますますわからなくなり、俺は書類整理に気持ちを傾けた。

すると、携帯が小さく鳴った。

着信は奈々はだった。

「もしもし?」

『あ、雄輔さん……あの……』

「……何?」

『……やっぱりいいです……またご飯の時に』

奈々はそれだけ言って電話を勝手に切ってしまった。

なんだったんだろう……。

気にかけながら、ほんのり胸の内が暖かくなる感じがした。



「今日の飯……味薄くないか?」

「すっすみません!」

「……いいけど」

何となく苛々しながら俺はテーブルに並ぶ料理を食べた。

俺の苛々の原因は、普段俺の横で食べる奈々が、今日は笹本の隣で食べているからだった。

まぁ今この場に親父は居ないから問題ないんだけどな……。

「雄輔さん何かご機嫌斜めですか?」

笹本が首を傾げながら言った。

半分お前のせいだ……。

「なんでもねぇよ」

なんて笹本に強く言えないまま俺は話を流した。

奈々が心配そうに俺を見ているような感じがした。

ちょっとだけ、俺に気が向いたのかと思うと嬉しかった。



「……おっ……やすみなさい」

奈々が俺にだき枕を抱きしめながら言ってきた。

今日の苛々をまだ気にしてくれていたのだろうか……。

すでにパジャマで、髪がぺたんこになっている奈々を見ながら俺は、

「おやすみ」

と、少しだけ笑って言った。



今日一日でわかったのは、俺は結構嫉妬深くて、案外単純で……奈々を好きになったってことだった。



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