第7話:奈々said
私はお母さんとお父さんを引き連れて、客間に入った。
良かった……お父さん休みで。
「……で、何か大事なお話なんでしょう?話して?」
私と雄輔さんは顔を見合せ、お母さんとお父さんを見た。
「私の名前は葛原雄輔です。奈々さんとお付き合いさせて頂いてます」
「葛原……じゃあ君は葛原裕一の息子さんかな?」
「父をご存知なんですか?」
「うん。幼なじみだからね」
「えぇぇえぇ!?」
私は驚きのあまり、悲鳴に似た声をあげた。
だって幼なじみなんか……誰が聞いても驚くよ……。
社長とサラリーマンだよ?
幼なじみでこの差は……?
「でも良かった……裕一の息子なら安心だな」
「お母さんも裕一さんは知ってるわ。安心ね」
「それと……」
雄輔さんは頭を下げながらゆっくり声を出した。
「奈々さんとずっと一緒に居たいんです……一緒に暮らしても良いですか?」
今私たちは笹本さんが運転する車で移動中。
付き合っていることも、同棲(?)のことも、あっさり許可を貰えた。
雄輔さんは爆笑しながら後部座席の椅子を叩いた。
「お前の両親ウケる!あんなあっさりかよ!……まぁ親父と幼なじみってのにはびっくりしたけどな」
やっぱり雄輔さんもびっくりしてたんだ……。
そして私は、カーテンを少し見つめたあと、無理矢理まとめさせられた荷物を見ながら、苦笑いをした。
そしたらいきなり雄輔さんが、笹本さんとの間をカーテンで仕切り、後部座席が見えないようにした。
するといきなり雄輔さんの顔が近づき、私は固まった。
キス……されていた。
「……んぅっ」
私は驚きのあまり、雄輔さんの肩を叩いた。
雄輔さんの顔がほんの少しだけ離れたけれど、唇が触れるか触れないかのところまで近い。
「何?初めてのチュウ?」
少しクスクス笑いながら、私を見る。
私は恥ずかしくて顔を赤くしながらうつ向きかけると、顎をすくい上げられ、目と目が合った。
「俺……奈々の彼氏だろ?」
そう笑いながら雄輔さんはまた私にキスをしてきた。
今度はさっきより深いやつ。
時折角度を変える雄輔さんにされるがままの私は、ちょっとずつ雄輔さんのキスに酔いはじめる。
(雄輔さん……馴れてる)
私はそう思った。
その時、私は苦しくなってきて頭をのけようとした。
そしたら頭の後ろから手で押さえつけられ、頭を引けなくなった。
雄輔さんに身も心も溶けそうだ。
「……お前も舌出せ……」
雄輔さんがいきなり口を離すから、私はその言葉を聞きながらいっぱい息を吸った。
吸いきったらまた雄輔さんの唇が重なる。
キスをしながら雄輔さんは、私の歯列を舌でなぞる。
私は言われたようにしないと不味い雰囲気になり、恐る恐る舌を伸ばす。
少し目を開けると、嬉しそうに微笑む雄輔さんと目が合った。
目が離せなくなった私は、雄輔さんの舌と絡まる感覚を感じながら雄輔さんを見つめた。
そして車が雄輔さんの家に着く。
笹本さんが前から一度だけ、
「着きました。車の鍵は閉めといて下さいね」
とだけ言い、車を降りた。
家に着いてもキスを一時辞めなかった雄輔さんが、不意に唇を離して、私を見た。
「奈々……今日からよろしく」
それだけ言って、雄輔さんは車からカーテンをうざそうに避けながら降りた。
私は数分動けずにいた。
雄輔さんがカーテンから顔を出した。
「早く出ねぇと車に閉じ込めるぞ?」
「えっ……出ます……」
私は車から降りると、その場に倒れそうになった。
それを雄輔さんに抱きとめられ、雄輔さんはクスクス笑った。
「何……感じた?」
耳元で楽しそうに囁く雄輔さんに、私は本気で好きになってしまったらしい……。
これからの日常……。
きっと楽しいはずだと、期待に胸を弾ませながら。




