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第2話:雄輔said

 

俺は雄輔。

親父の金融会社を陰ながら支える、……悪く言えば『借金取り』をしている。

親父は俺に比べて気が弱く、常に客に良いように言いくるめられる。

そんな親父をフォローしながら金を返さない奴等に脅し……をかけるのが俺の勤め。



「雄輔さん。今日は誰の家に脅しかけますか?」

「ばかやろう!脅しかけるんじゃねぇ!金を巻き上げに行くんだよ!」

「立派に恐ろしいっすよ……」

部下の奴とそんな話をしながら向かうのは、先々月50万を借りて返しに来ない奴の家だ。

「あいつ今日こそ返してくれますかねぇ?」

「あぁ?……返さすんだよ」

俺はニヤリと怪しく笑いながら、運転席の部下に答えた。



「おーい福田さんよぉ。金……そろそろ返せや」

「まままま待って下さい!……まだお金の方は揃ってないんですよぉ!」

「知るかっ!てめぇの内臓売ったら50万なんざ知れてるだろうが!あぁ!?」

「ひぃい!!」

福田は涙やら鼻水やらを出しながら必死に俺に頭を下げる。

俺は福田を鼻で笑いながら背を向けてその場を後にした。



本当に馬鹿らしい……。

あんな無様な格好までして泣きつくなら、金なんか借りなければいい話だ。

何で金に全てを頼るんだ?

「雄輔さんやりますねぇ」

「てめぇらも頑張れや」

ゲラゲラ笑いながら俺は近道になる角を曲がるように言った。



「しかし今日は人通り少ないから、運転楽っすね〜」

「そうだな」

俺はなんとなく煙草に日をつけようとした。

その時前方に、下を向いて歩く女子高生が見えたんだ。

「うわっ!」

部下は素早くバンドルを切り、女子高生にはすれすれの位置で車を急停車した。

俺は立ちすくむ女子高生に向かって急いで車から飛び出した。

「すまない……大丈夫だったか?」

そう言うと女は意識を失い、俺の胸に倒れてきた。

「お…おい!大丈夫か!?」

俺は胸に倒れてきた小柄な女の肩を揺すりながら、声をかけた。

女は返事をしない。

「雄輔さん大丈夫ですか?」

「大丈夫じゃねぇ!早く車を出せ!うちに運ぶぞ!!」

「えぇ!?……はい!」



女はただ寝ていただけらしく、俺のベッドで横になる女はぐっすり寝ていた。

「何やってんだよ俺ぁ……」

頭をガシガシかきながら、俺はため息をついた。

女が持っていた鞄を思い出し、俺は鞄をあさりはじめた。

見つけた生徒証明証を見ながら、俺は女の顔を見た。

「……『奈々』……ねぇ」

証明写真に映る奈々とか言う奴の顔は、寝顔から想像もつかないくらい表情の無い顔をしていた。

 

奈々って奴には何か事情があってあんな顔をしてるんだろうな……。

「雄輔さん……彼女は?」

「あぁ……寝てるだけだ」

「え?」

「……ちょっと出てくる……」

俺は部下で奈々って奴の件で車を運転していた笹本に告げた。

笹本はわかりましたと頷き、俺の部屋に食事を持って入った。



この世は腐ってる。

そんな世の中を作った人間も腐ってる。

俺はそんな世界に生きる自分が嫌いなだけだ。

だから、たとえ借金取りとして障害を終えても、苦じゃねぇんだ。

あいつを……瑞希を失ったあの日から、俺の世界は消えたんだ。



俺をここから救い出してくれるなら誰でもいいんだ……。



けどそう思っていた自分に、お前が踏み込んで来た。

どこか瑞希と似ていて、どこか瑞希と見違える程の魅力があるお前が……。



どうしたらいい瑞希……。

俺は久しぶりに、お前以外の誰かに溺れそうだ。

急に俺の目の前に現れた、小柄な女……奈々に。



俺は一人になりたくて、がむしゃらにバイクを走らせた。

とにかく風に当たりたかった。

帰ったら、あいつが居る。

ちょっとでも平静を保つためには、バイクを走らせるのが得策だと思った。



俺の新しい日々がすぐそこで始まろうとしていたんだ。



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