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第1話:奈々said

 

何をしてもうまくいかない。

そんな私奈々は、相変わらずつまらない学校に向かって歩いていた。

「行ってきます」

静かに告げて、私は玄関を出る。

周りの家からは今から出社のサラリーマンや、登校途中の学生がたくさん居る。

けれど皆私を追い抜いて、気がつくと私は一人でぽつんと歩いている。

歩くペースの遅い私は、すぐ皆に先を越される。

誰も私なんか居ないかのように速足で過ぎていく。



楽しいことなんてない。

私は現在高校に上がって三回目の春を迎えている。

今日は毎年憂鬱な身体計測の行われる日だ。

身長の低い私は、いつ背が縮むかが一番恐ろしいことだった。



「はい、次の人」

呼ばれて私が保健室に入る。

どうしても背伸びは許されず、大人しく背筋を伸ばすしかできない。

悪あがきは無駄……。

「150.……2かしら?」

「えぇ!?」

私は心の底から声を出した。

昨年よりも3mm低くなっていたからだった。

(とうとうきた……)

私は途方に暮れながら保健室を後にした。



保健室の外では、身体計測の記入カードを持った生徒で溢れていた。

「あ、奈々!どうだった?」

私に手を振りながら寄ってきたのは、小学校からずっと一緒の郁だ。

郁はスタイルも良く、横に並ぶと私がすごく子どもに見えるほどの大人っぽさに満ちている。

「駄目……縮んでた……」

「まじ!?あんた悲惨だねぇ」

クスクス笑いながら郁が私に記入カードを見せてきた。

「え!郁ってば160.7!?」

「ふふふ……とうとう夢の160代に突入っすよ」

郁がニヤニヤしながら誇らしげに私を見下ろした。

「ふがー!悔しいー!」

「あっははは!奈々も頑張って牛乳飲みなさい!」

楽しそうに郁が笑うから、私は何も言い返せなかった。



更衣室に入り、体操着から制服に着替えるとき、郁が私の横で目を丸くした。

「あんた……何カップよ?」

「……変態」

郁は羨ましいくらい大きな胸を持ってるのに、私を見てそこまで目を見開かなくても……。

「ちびの癖に胸はしっかりあるのね奈々ってば」

「しっ……失礼なっ!」

そんな他愛ない話をしながら私は郁と教室に帰った。



教室には着替えを早々とすませた男子が溢れていた。

「あ、奈々と郁!」

「孝太郎……」

私たちに笑顔で両手を振るのは、私の幼なじみの孝太郎。

茶髪で左右の耳朶にはシルバーのピアスが光る。

「相変わらずちびなんか?」

「ははは……シメますよ?」

私は軽くあしらいながら、自分の席に腰を下ろした。

隣の席の椎名が私を見ながらクスクス笑う。

「奈々ってば一体何センチだったんだよ」

「むっ……150はあったもん!」

「まさか縮んでたのか?」

ごもっともな意見に顔を赤くしながら椎名を睨んだ。

「ビンゴか?ビンゴか??」

楽しそうに言ってくるから、私は無視をすることにした。



放課後―――……。



私は身体計測の結果に満足いかないまま、部活に向かった。

今吹奏楽部に入っている私は、準備室から担当しているアルトサックスを取り、練習教室に行った。

サックスパートは物理室を与えられているため、物理室の扉を開ける。

「奈々さんこんにちはー!」

「こんにちは」

私は笑顔で後輩に手を振る。

この時間が好きだ。

楽器を吹く時間が。

何よりも落ち着ける……そんな気がするから。



「……あちゃ……郁はもう帰っちゃったかなぁ……」

私はつい楽器を吹きすぎて、今時刻は夕方の19時を回っていた。

グラウンドには誰も居なくて、私はため息をつきながら鞄片手に歩き始めた。



学校を出て角を曲がると、目の前に大きな車が急停車した。

私と衝突しそうになったらしい。

「すまない!……大丈夫だったか?」

車の中から、眼鏡をかけた金髪にスーツで、いかにも怖そうな顔立ちの男性が出てきた。

そこで私は、気を失った……。



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