三極の後日談
あいつが消えて早幾月か。あの後色々と面倒事を抱えて奔走しながらもゼクトはあいつと同じ三立の学園として日々を過ごしていた。
「よっしゃーい! 今日の授業は終わり! ゴトゥディンの所に行かなくては! え? 今日も大変だなって? そりゃそうですヨ! サカナはゴトゥディンと約束したんですからナ! それでは!」
ゼクトはクラスメイトに手を振りながら窓から飛び出す。
フワライドウと言い、脚にブースターを装着し目的の場所に一直線に文字通り飛んでいく。
バルバルバルと音を立てて、ほとんど人の通りがない校舎の一角。多目的室の窓から豪快に突入する。もちろん窓は最初から開いている。
「サカナ! 見参! 一番乗りですナ」
「んなわけないだろ」
「ゼクト君がドベよ」
「んぐぉ! カミ子にゴトゥディン! 早いですナ」
先客がいた。と言うより窓が開いている以上先に誰かがいるのは当然か。
カミ子と静吉。二人はどうやらゼクトを待っていたようだ。
「では今日もさっそくプログラムに行きましょうゾ!」
「わかってるわよ。カミ子君も、張り切りすぎて暴走なんてのはダメよ」
「それはもう何回も言われてる。主人公の言葉を忘れたつもりはない。あいつに勝つのは最優にならなきゃなんだろ。だったら暴走なんてするつもりはない」
どうやらゼクトとカミ子はプログラム内で……自分の持つ可能性持ちの訓練をしているようだ。あいつの消滅が二人の考え方を固めて、自分が何をすべきかを考えているようだ。
「オッケー。じゃあ先に二人を送るわね。ウチはいつも通り適当に設定を弄ってから参加するから」
「了解であります!」
「んじゃまあ。今日こそ倒してあげる。ゼクトォ」
「簡単にはいきませんヨ!」
そう言って二人は椅子に座り、意識をプログラムへと飛ばす。
部屋に残ったのは静吉と『俺』だけだ。
「どう? あの二人も日に日に成長してるんじゃない? 無色透明の龍」
「まだまだだなぁ。俺の見立てじゃあいつらはまだ創造主様の域には達していない。本物の魔法使いを生み出すまでは成長していない」
物陰から俺はゾルリと顕現する。そう、あの日以来、一個人としての自由を得た俺。無色透明の龍こと天童源次郎だ。
「そう、天童源次郎だ。いいか静吉ィ。無色透明の龍と呼ぶなぁ。俺は創造主様から天童源次郎の名を継いだんだぁ。源次郎と呼ぶんだなァ」
「嫌よ。きーちゃんの名前は主人公だけど天童源次郎でもあるのよ。君を天童源次郎と認めたくはない」
つれないセリフだ。
そう俺は律儀にもあいつのお願いを守りゼクトとカミ子が正しい方向に向かうように日々見守っている。俺が無色透明の龍であると知っても問題のないであろう静吉と一緒に彼女たちの教育係として影から見守っている。
「あと、ウチのことを軽々しく静吉って呼ばないで。きーちゃんと同じ顔の君に静吉って呼ばれると……なんか嫌」
「ほんとにつれないなぁ。にしても理事長殿ォ。お前が色々と根回ししてくれているおかげここまでは順調だァ」
静吉と呼んで欲しくないなら理事長と呼んでやろう。
実はこいつ、この学園で噂されている幽霊理事長その人だったんだ。この学園自体三立の学校である為か三立の首領である静吉が元から理事長だったんだ。
つまりあの戦いは全てこいつの自作自演。理事長の命令でゼクトに試験を課したのではなく最初からネクスト・プライマルの実行のためにあの闘いを仕組んだんだ。
今となっては過去の話だけどな。
「で、順調ってことはこのままいけば」
「ああ、とりあえず基礎的な物は出来ている。後は極限まで肥大化して、徹底的に本物の魔法のあり方を教え込む。そうすれば『主人公の肉体を再生』できるってわけだぁ」
そう、俺は創造主様にあの二人が道を踏み外さないように見守れと言われたが、もちろんそれだけで終わるつもりなど更々なかった。
俺の今の目的。それはあの二人を育て上げて限りなく主人公に近い肉体を創り上げ、主人公をよみがえらすことだ。
その計画を静吉に提案したからこそ俺たちは協力関係にある。
「と言うより君が再生させたら一番早いんじゃないの? 本物の魔法使いなんだからそんなこと簡単でしょ?」
「そりゃ簡単だぁ。だけどな、その役目をあえてあの二人に課すことで成長させる。そして最後は、お前の再生情報を使い、WRを触媒に創造主様の記憶を呼び起こさせる」
そう、創造主様とゼクトとの繋がりを示す黒きWR。驚いたことに消滅せずに指輪と首輪が残った。
なぜ残ったかはわからない。ゼクトの契約がまだ続いっているからなのか。それとも三立のまだ見えぬ道が作用しているのかはわからない。
だが、WRの指輪が静吉の手にあることによって創造主様の記憶を錬金術化召喚術で作り上げた肉体に呼び起こすことができる。
ゼクト、カミ子、静吉の三人の力を使って創造主様を今一度呼び戻すことができる。
「蘇らせたら、きーちゃんきっと怒るわよね」
「怒るさ。余計なことをしやがってと声を荒げるだろう。ただそんなの関係ねぇ。創造主様の意思なんか関係ない。勝手に消えて満足されるなんざ納得いかねぇ。ゼクトも、カミ子も納得なんかしていない」
だから復活させる。理屈なんていらない。投げ出すことなんて許さない。創造主様の存在はまだ必要な存在だ。
「さぁ静吉も行くんだ。主人公を呼び戻す。俺たちの目的を完遂させるんだ」
主人公の物語は終わる。ここからは主人公のための新たなる物語が始まる。




