三極の機甲少女4
「ヒィイヤァアアアッハアアアアアアアオ! いいぞユーフォリムス!」
「ヒィイヤアアアアアアアアアアアアオ!? 高い! 高すぎですよマスター!」
程よく上空にあがる。と言うよりプログラムに上限とかはあるんだろうか。ちょっとどこまで上がれるか試したくもなったけど、今はやるべきことがある。
この高さだとあの二人がどれだけ激しい戦闘を繰り広げているかが目にわかる。巨大な学園の一角が完全に抉れて廃墟みたいになっているじゃないか。
確かにあそこに突っ込むのは気が引ける。体中の血の気が引いていくようだ。きっと痛い思いをする。行きたくない。
だけどそれ以上に、僕はかつての僕自身を感じたかった。あそこで暴れている二人を止める。
いずれプログラムを破壊し、現実世界をも巻き込んで破壊を繰り返し、甚大な被害を引き起こすかもしれないあの二人を止める。
それを止めることのできる人物は何て優秀なんだろう。また僕は、優秀であることを証明できる!
「さぁ落ちろユーフォリムス。僕らを、あの爆音の渦に叩き落とせ」
最高到達地点にたどり着いたユーフォリムスは上昇を止め、その身を地上へと翻し、僕らは、一気に急降下する。
上昇とは違った、まるで無重力の中にいるような風切り音と風圧。一寸の違いなく目的地へと進んでいるこのスピード。たまらない。僕はこの速さすら取り戻したんだ。
「ま、マスター! 振り落とされそうです!」
「もうすぐ振り落とすから我慢するんだ! ユーフォリムス! 二人の間に飛び込んで、ユニットの一つは地面にそのまま直進しろ!」
命令のままにユーフォリムスは勢いを直前まで殺さずに戦っていた二人の間に割って入り、その衝撃で舞っていた粉塵がさらに舞い上がる。
ちなみに粉塵が舞って見えないが既にゲンガーはユニットから叩き落としてそこら辺に転がっていると思う。
自分の役割を果たせよ、ゲンガー。
「粉塵? それに空から未確認飛行物体!? これもアンタの三立か! ゼクトォ!」
粉塵が舞う中、木霊するはカミ子の声。
声から場所がわかる。そこにいるんだな。
「今だユーフォリムス! ユニットをカチ上げろォ!」
先行させておいたユニットをカミ子の足元から出現させる。
先ほど先行させたユニットはただ先行させたのではない。地面の中に潜らせあらかじめカミ子の周辺に待機させておいたんだ。
カミ子はゼクトと違って基本的に自分の立ち位置を変えないから楽に忍ばせることができた。
それに狙い通り。
やっぱりだ。さっき見せられたカミ子のゼクトの拳を全部防いだ自動で敷かれる陣。
あれはあくまで攻撃から身を守るための防御手段。攻撃と認知しない行動には対応しない。つまり攻撃をしなければ陣は敷かれない。
ユニットはそのままカミ子の手を捕縛しながら勢いよく戦線を離脱する。突発的な無重力感にカミ子も反射的にユニットにしがみ付いたおかげでスムーズに事が運んだ。
僕もユニットの後を追ってその場を離れる。
頼むぞゲンガー。僕がカミ子の相手をしている間、偶像召喚を使ってでもゼクトの足止めをしっかりしろよ。
「さぁてカミ子と決着をつける場所は」
いい場所がある。学校の敷地内にある陸上競技のゴムの四百メートルトラック。
障害物も何もないあそこが決着をつけるにおあつらえ向けだ。
あとはカミ子をその目的の場所に連れていくだけだ。
「フンっ!」
連れていく最中。バキン! と金属音が耳に届いた。目の前を飛んでいたユニットがフヨフヨとふらつき始める。
見ていたから分かる。カミ子の野郎、ユニットに弾丸をぶち込みやがったんだ。
ユニットはカミ子を捕まえておく力を失い、カミ子は空中に放り出される。
「危ない!」
僕は急いで落ちようとしているカミ子の下に向かおうとしたけど、空中に陣を敷いて鉄で足場を作ったカミ子は当たり前のように空中に足を留めた。
そう言えばそうだったな。カミ子にとってにとって空中になんて無きに等しかったな。と言うより、ユニットパーツが墜落していく。
「あぁ……ユニットパーツ。後で絶対に回収してやるからな」
「随分舐めた真似してくれるじゃないか。えぇ主人公ィ!」
空中に立つカミ子。随分とご立腹の様子だ。目に見えてわかるお怒りマーク。青筋立てての剣幕である。
「私がせっかく気持ちよくゼクトをぶっ倒そうと思ってたのに、まあいい。アンタが私に何をしようか知らないけど、まずはゼクトを倒して、その後アンタの相手をしてあげる。それまで邪魔しないで」
そう言って魔女の棒を召喚し、カミ子は元いた場所に帰ろうとする。
やはり今のカミ子の脳内は僕ではなくゼクトに向いているのか。そりゃア面白い具合に互角の戦闘をしているんだ。きっと手に取るように自分が強くなっているのがわかるんだろう。
だけどこれ以上戦って数値の底上げをしてもらっても困る。あまり高くなりすぎると僕も手が出せなくなる。
なら、呼び止める。それはとても簡単なこと。こう、一言言えばいい。
「逃げるのか?」
僕は嘲笑するようにぽそりと一言呟いた。
鉄の箒にまたがって今まさにこの場を離脱せんとするカミ子の動きが止まった。あん? とガンくれてくるカミ子。
よし、掴みは上々だ。




