似ていない所
「…。」
何を話したら良いのか…分からない…。
あれから、私達は事務所でお昼ごはんを食べている。
顔を上げて、ちらっと大野さんを見るとコンビニで買ったであろうパンをもぐもぐ食べている所だった。
何か話しかけなくちゃ…と思い、思い切って話しかけてみた。
「お…大野さんって大卒なんですか?」
さっき、学生の頃に通っていた…って言っていたから、聞いてみた。
『あっ、そうですよ。藤原さんもですか?』
「私は、高卒なんですよ。早く、働きたくて…大学には行かなかったんです。」
『そうなんですね。そういえば、藤原さんは、誰の本が好きですか?』
「私は、東山 誠の本が一番好きです。」
この人は、ミステリー関係の本を執筆している人なんだ。
周りの人は、普通は恋愛関係の本でしょ…とよく言ってくるけど、私は東山さんが一番好きだ。
『あっ、僕もその人好きなんですよ!!文章の書き方が、一番しっくりくるんですよね。』
まさか、大野さんも好きだったなんて…。
大野さんは、皆みたいに恋愛関係とは言ってこないんだな…と思うと、何だか嬉しかった。
「私は、恋愛関係よりミステリー関係が好きなんですよ…。」
恋をしないと決めてから、読むのをやめた。
理由は、分からない。
『良いと思いますよ。周りに言われても、自分が好きなら…。』
こっちをじっと見て、そう言ってくれた。
あの人は、私の顔なんてよく見てくれなかったし、本はあまり読まない人だったよね…なんて思い出していた。
「ありがとうございます。自信が持てました。」
『大丈夫ですよー。』
そう言って、ニコッと笑いかけてくれた。
あの人の笑い方とは、全然違ったからなのか…心臓がドキドキしていた。
まるで、恋をしている女の子じゃん…と思いながら、お弁当の続きを食べた。