案内①
「…じゃ、まずは…売り場を見に行きましょうか…。」
一日の流れって何をしていたっけ…と忘れてしまった私。
まずは、売り場の案内でもしよう…と決めたのだった。
『分かりました。』
返事をした大野さんを見ると、ニコニコしている。
この表情まで似ている…と思いながら、売り場へ2人で出た。
『この本屋さん、ずっと憧れだったんです。学生の頃も、ずっと通ってました。』
大きな目をキラキラさせて話す大野さんは、格好良いな…と思った。
あっ、今のは駄目…。
私は、人を好きにならないと決めたんだから…。
「…そうなんですね。私も、本を読むのが大好きで…憧れだったんです。」
どうして、初対面の人に自分の事を話したのか…不思議だった。
『本って、良いですよね。あっ、ここがミステリー関係ですよね?』
「あっ、そうです…。案内してなくて、すみません…。」
案内するって言いながら、無駄話しちゃった…。
今は、仕事の事だけを考えないと…。
『大丈夫ですよ。隣が、恋愛関係で…その隣が文学…だったかな…。』
「全部覚えられていて、すごいです…。」
『いや、うろ覚えですよ。メモ、取っておきます。』
「はい。」
メモを取る姿は、一生懸命で真面目な人なんだな…と思った。