今すぐ…
喫茶店を出た私は、今すぐ大野さんに会いたかった。
大野さんも早い時間に終わったのかな…なんて思いながら、職場へ向かう。
さっきは、長瀬くんと話す事しか考えられなかったから…大野さんの仕事が終わる時間まで見ていなかったのだ。
二度と恋をしないと思っていたのに、大野さんに出会って崩れてしまった。
大野さんの事は、仕事でしか知らないけど…好きになった。
そんな事を考えながら、職場へ歩いて向かう私を、夕日が照らしている。
空は、水色とオレンジ色の二色でとてもきれいだった。
その向こうに見慣れた本屋さんの建物が目に入った。
裏口に、誰か立っているみたいだけど…夕日が眩しくて見えない。
近付くにつれて、その人が誰なのか分かった。
「…大野さん…。」
私が会いたいと思っていた大野さんが何故か、悩んでいるように下を向いて立っていたのだった。
『…藤原さん…?』
大野さんは、私の声にはっとしたように尋ねてきた。
「どうしたんですか…?」
誰かを待っているみたいに見えたけど…何かあったのかな…と思っていた私に、大野さんはこう言った。
『藤原さんを待っていたんだよ…。』
そう言った顔は、笑っていたけど悲しそうだった。




