どうして、あなたには…
トイレで泣いていた私だったが、暑くなってきて外へ出た。
今は、7月の初旬だから部屋の温度も高いらしい。
洗面台で手を洗いながら、自分の顔を見ると少し目が赤くなっていた。
こんな顔でお店に出られないなぁ…と思い、ボーっとしていた。
どうして長瀬くんは、今更私と話したいなんて言ってきたのか…そればかりを思っていた私は、考えないようにしてお店へ向かった。
「大野さん、ありがとうございました。」
にっこりと笑って、レジにいてくれた大野さんへお礼を言った。
『藤原さん…。』
私の顔をじっと見て、大野さんは私の名前を呼んだ。
一体、どうしたんだろう…?
『藤原さん、もしかして…泣きました?』
その一言に、どう返事をして良いのか分からなくなってしまった。
「…な…泣いてないですよ…。」
『…そうですか。少し目が赤いように見えたので…。すみません…。』
大野さんには、私の事はお見通しだったりする。
前に長瀬くんの事を思い出して、落ち込んでいた時もだった。
こんな風に心配してくれた大野さんに、今までの事を話したかった。
だけど、私達はただの会社関係だから…話せる訳なんてなく、私はお礼を言っただけだった。




