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過去と出会い②
「失礼します。」と言いながら、事務所へ入った。
椅子に見た事がない人が一人、下を向いて座っていた。
『あっ、大野さん。』
大野さんと呼ばれた黒髪の男性は、『はい。』と返事をして顔を上げた。
「…。」
嘘でしょ…そう思った。
言葉なんて、出てこなくて私は立ち尽くしていた。
『あっ、藤原さん。この人が、今日から入る人だよ。』
「は…い。初めまして、藤原 凜音です。」
『初めまして。僕は、大野 秀人です。』
その後、二人で頭を下げ合った。
私の頭の中は、昔好きだったあの人の事ばかりでいっぱいだった。
昔、転校してしまったあの人に…大野さんはそっくりだったのだ。
一瞬、あの人がいるのかと錯覚してしまった。
『早速だけど、一日の流れを教えてくれるかな?』
「分かりました…。」
『よろしくお願いします。』と頭を下げてきた大野さんを見て、「はい…。」と返事をしたのだった。