エピローグ
ヘリの中で、スノウからたくさんのことを聞いた。スノウが本当の天使である事、俺を救うために地上に降りてきてくれたこと。
確かに、スノウが天使だなんて、にわかには信じられない。けれど、あの殺人鬼を雪に変えた魔法や、俺の心の病を取ってくれた光は、人間にも、どんな科学者でもできないことだから、俺は納得する。
「ロシアについたら、一から言葉を学ばないとな」
このヘリはスノウが呼んだという。なんでもロシアなら中国とかよりは安全に見えるからだそうだ。
その時辺りから、スノウの顔つきが暗かった気がするのだが、今はとても疲れたから、考えるのは後にすることにした。
「……そろそろ、かな」
スノウが落ちてきた霧にできた穴。その近くで、スノウはスクッと立ち上がり、そういった。
「スノウ?」
疲れた頭を起こし、スノウを見据える。すると、スノウは心なしか、寂しそうに微笑んでいるようだった。
「私はここで降りる」
……え? そりゃスノウなら可能だろうけど……
「降りるって、なんで!?」
確かにそれはスノウの自由でもある。けれど、せっかく二人して助かれるのに、わざわざそんなことしなくても……
「私には、この国でやることがあるから……それに、実はね……私は天使だから、あんまり人の前には出ちゃいけないの」
そんなルールどこにある、と言おうとした矢先、空がゴロゴロとなりだした。
「ほら、神様が、怒ってる。きっと、この霧を出たら、私たちは落とされるわ」
言いながら、スノウが泣いている。俺も、泣いていた。
「じゃあね」
言葉は出なかった。無力な自分を呪いたかった。
「霧が晴れたら、また会いましょう」
そういうと、突然ヘリの出口が開いて、乗務員があわてて閉じようとするも、吹き飛ばされる。
「さよなら……流」
暴風の中、スノウが出口から空に出ていく。
さようなら……愛しのスノーフレーク……。
「なんて、口が裂けてもいわねぇ……」
落ちていくスノウをなんとか眺めながら、つぶやく。そして
「俺がいつか!! 迎えに行くからな!!!!」
どんな手段を使ってでも、どれだけ時間がかかろうとも、迎えに行ってやる!!
灰色の雪~fin~
ここまで読んでくださった方へ……ありがとうございました。読んでくださった方は、出来ましたら、読んだ証として、感想なりなんなり、一言でも書いて行ってもらえると幸いです。
流の物語は、作者の頭の中では、まだまだ続きます。書いても良いようでしたら、近いうちにでも書き始めたいと思います。
改めて、読んでいただきありがとうございました。