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第二話 いつもの森、いつもの仕事


 この森に入るのは、もう何度目になるだろう。


 マグノリア・ジャンは、街道から少し外れた獣道を進みながら、足元を確かめて歩いていた。


 踏み固められた土。

 刈られた低木。

 引っかかりやすい蔓も、見当たらない。


 ここは、ジャンが何度も通ってきた道だ。


「……大丈夫」


 小さく呟き、周囲を見渡す。


 この辺りまでなら、危険な魔物はほとんど出ない。

 理由は単純だった。


 危ない道を、最初から使わない。


 戦えない。

 逃げるしかない。


 だからジャンは、森に入るたび、

 安全なルートだけを少しずつ覚えていった。


「ここから先は……ちょっと遠回り、っと」


 森の奥へ進むにつれ、空気がひんやりと変わる。


 木々が密集し、日差しが遮られる。

 魔物が急に強くなるわけではないが、

 面倒だと感じる冒険者が多い区域だ。


 時間がかかる。

 効率が悪い。


 だから、この先へ進む者は少ない。


 ジャンは足を止めず、さらに奥へ進んだ。


 やがて、視界がふっと開ける。


 木々に囲まれた、小さな広場。

 その中央に、太陽の光が真っ直ぐ差し込んでいた。


「……あった」


 地面一面に広がる、瑞々しい緑。


 サンシャインクローバー。


 葉に光を受けると、わずかに明るく見える薬草だ。


「今日も、ちゃんと生えてる」


 ジャンは膝をつき、一本ずつ丁寧に摘み始めた。


 引き抜かない。

 根を残す。


 そうすれば、また同じ場所に生えてくる。


 これは、本に書いてあった知識ではない。

 何度もここへ来て、失敗して、覚えたことだ。


 サンシャインクローバーは、回復薬の材料になる。


 飲めば、体力を即座に回復できる。

 冒険者にとっては便利な品だ。


 もっとも――


「治癒師がいれば、いらないんだけどね」


 ジャンは、ぽつりと呟いた。


 この世界には、治癒師という職業がある。

 魔法や技術で、仲間の体力を直接回復できる存在だ。


 パーティに治癒師がいれば、

 わざわざ回復薬を買う必要はない。


 だから、需要はそこまで高くない。


 危険な依頼に出る冒険者ほど、

 「回復役がいれば十分」と考える。


「……でも、ないよりはあった方がいい、よね」


 袋の中を確認する。


 すでに、かなりの量が入っていた。


 今日の分としては、十分すぎる。


 ジャンは、特に誇らしげでもなく、

 ただ黙々と手を動かし続けた。


 時間はかかったが、

 それはいつものことだ。


「よし……こんなものかな」


 立ち上がり、袋を肩にかける。


 重みはあるが、問題ない。


「帰る前に……」


 ジャンは、広場の端に視線を向けた。


 木々が少し密集している場所。

 小さな魔物が出ることがある。


 危険ではない。

 だが、油断すれば怪我をする。


 ジャンは、剣の柄に手を置いた。


 構えるためではない。


 慣れるためだ。


 距離の取り方。

 逃げる判断。

 どこまでなら無理をしていいか。


 全部、経験で覚えるしかない。


「……今日も、やっとくか」


 そう呟いた、その時。


 ジャンは、ゆっくりと息を吸い、

 視線を向ける。


 


ここまで読んでいただきありがとうございます。


初日のみ3話投稿で後は土日祝を除く毎日投稿でやっていきたいなぁと思ってます。


読んでいただけると幸いです。

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