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第十八話 湖畔の検証

今回から予約投稿を6時にしてみました。

よろしくお願いします。


また、今回は少し長いです。

毎回同じ様な分量でかける作者様たちは本当にすごいですね…

 季節がひとつ巡る頃には、ジャンとマーシャはほぼ毎日のように街の外へ出ていた。


 向かう先は、危険なダンジョンではない。


 ジャンが何度も足を運び、出現する魔物の傾向と危険度を確かめた、安全な採取穴場。


 ヴァミリア湖。


 穏やかな水面。

 湖畔には薬効の高いアルカリーフが群生している。


「今日はこの辺りまでにしましょうか」


「……はい」


 最後の一株を摘み取り、籠へ入れる。


 ここ最近の流れは決まっている。


 採取を終える。

 そして――


 岩場の陰から、ぷるりと黄色い影が現れる。


「……来ましたね」


「……今日も、ですね」


 レモンスライム。


 なぜか、採取が終わる頃を見計らったように単体で現れる。


 脅威度は低い。


 だが。


「今日も検証、やりましょう」


「はい」


 剣を抜いた瞬間。


 視界の奥に、十四個のブロックが浮かび上がる。


 剣、盾、矢。

 炎、風、雷、水。

 葉の紋様。

 そして、真っ白と真っ黒の¨ハズレ¨ブロック。


 毎回すべてが揃うわけではない。

 だが、おそらくこれが描かれている種類のはずだ。


(炎や雷は一つだけ描かれているのに、剣や矢は複数描かれているものがある……なぜだ?)


 一瞬思考する。


 だが首を振った。


(今は、炎だ)


 赤くゆらめく紋様が、二つ。


 今回の仮説は単純だ。


(もし十四個すべてを同じ模様……例えば炎にできたら)


 炎の魔法が発動するのではないか。


 理屈は分からない。


 だが、この模様が“何か”であることは確かだ。


 レモンスライムが滲み寄る。


 斬る。


 0。


 やはり攻撃は通らない。


「来ます!」


 酸が飛ぶ。


 身体をずらして回避。


 ぴちゃり、と地面を焼く。


 その直後。


 パチッ。


 一番右のブロックが消え、新しい模様が補充される。


(敵が動くと、右端が入れ替わる)


 ならば。


 炎以外を減らせばいい。


 十四個ある時だけ、一つ掴んで捨てられる。


 矢が七本描かれたブロックを掴み、放る。


 その瞬間。


「ジャンさん、集中しすぎです!」


 酸が直撃。


 ―100


 赤い数字。


 焼ける痛み。


 視界が揺れる。


 だが――


(耐えられる)


「すぐ回復します!」


 緑の光が包む。


 +100


 痛みが消える。


「大丈夫です! ジャンさん!」


 マーシャの声は強い。


「ジャンさんがどれだけ傷ついても、私が必ず癒します! だから――」


 一瞬、躊躇い。


 それでも。


「好きなだけ戦ってください……!」


 胸が熱くなる。


(一人じゃ、やらなかった)


 怖い。

 無謀だ。


 だが今は違う。


「ありがとう、マーシャ」


 自然と笑みがこぼれる。


「……本当に、ありがとう」


「はい。何度でも」


 


 視線をブロックへ戻す。


(炎、来い)


 右端に現れたのは、盾が九つ描かれた紋様。


 また被弾。


 ―100


 すぐに回復。


 +100


「ジャンさん、炎はいくつですか?」


「……三つ」


「増えてます!」


 希望が灯る。


 被弾。


 補充。


 捨てる。


 炎が四つ揃う。


「四つ……!」


 胸が高鳴る。


 だが。


 次の補充は水。


 さらに被弾。


 その瞬間。


 パチパチパチ、と連鎖する音。


 十四個すべてが伏せられ、一瞬で別の並びへと変わる。


「……っ」


 時間をかけすぎると、こうして全てが入れ替わる。


 何度かの検証で分かったことだ。


(どうしてだ)


 十四個あるはずなのに。


 炎は増えているのに。


 なぜか、四つを越えない。


 炎三つ。


 四つ。


 そこから先へ進まない。


「ジャンさん、焦らないでください」


 マーシャの声。


「今は一つの模様に揃えることだけに集中しましょう」


「……うん」


 深呼吸。


 もう一度。


 炎を集める。


 三つ。


 四つ。


 だがやはり、それ以上は増えない。


 時間が経てば、リセット。


 法則はある。


 だが、全容は見えない。


◇ーーーーー


 空が赤く染まり始める頃。


 レモンスライムは、いつものように湖へと逃げていった。


 まるで、こちらの限界を知っているかのように。


「……また、ですね」


「うん……」


 その場に座り込む。


 炎は最大で四つ。


 何度試しても、それ以上には増えない。


「偶然、ですかね」


 マーシャが呟く。


「ここまで同じなら、偶然じゃない気がする」


 ジャンは手を見つめる。


 十四個あるはずなのに。


 炎は四つで止まる。


 雷も、水も、風も。


「……もしかして」


「はい?」


「同じ模様は、四つまでしか存在しないのかもしれない」


 口に出してみる。


 妙にしっくりきた。


「……だから、それ以上は増えない?」


「うん。もしそうなら……」


 十四全部を炎にするという仮説は、最初から成り立たない。


 湖面が揺れる。


 沈黙。


「じゃあ」


 マーシャが顔を上げる。


「明日は、別のことを試してみましょう」


「……そうだね」


 小さく笑う。


「炎を集めるだけが正解とは限らない」


 四つまでしかないなら。


 その四つに意味があるのかもしれない。


 今日の検証は、失敗ではない。


 新しい仮説が生まれた。


「これからもよろしくね、マーシャ」


「はい!」


 夕暮れの湖を背に、二人は歩き出す。


 まだ知らない。


 この“気付き”が、想像以上に大きな一歩だったことを。

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