第8話:スンヒョクの森
16強戦を終え、次なる舞台はベスト8。チャンソプから役割を託されたスンヒョクは, 自身の「分析」という武器を再確認します。そんな中, スンヒョクは自分のデッキに眠っていた「伝説のカード」の真価を知ることに……。物語が大きく動き出す第8話, ぜひお楽しみください。
# 第8話:スンヒョクの森
## 第1部 - 役割分担
2026年5月、16回戦が終わって数日後。
スンヒョクは学校の屋上でチャンソプと向き合った。
「今日、ベスト8の対戦表が出る」
チャンソプが口を開いた。
「俺、来週数学オリンピックの準備しなきゃいけない。対戦表が出たらカカオトークで送る」
口調は相変わらず淡々としていた。感情のない声。
「それと日程管理みたいなのはお前が担当してくれ。お前の方が几帳面だから」
チャンソプはその言葉だけ残して振り返った。冷たい風だけがスンヒョクの横を通り過ぎた。
「俺が何、秘書か?」
スンヒョクがむっとして背中に向かって叫んだ。
「なんでそんなこと俺がやらなきゃいけないんだよ?」
その時、横に立っていたジウンが静かにスンヒョクに近づいて耳打ちした。
「チャンソプがあなたを信頼してるからよ。あなた、分析と整理が上手じゃない。お願い、怒らないで」
瞬間、スンヒョクの口元がわずかに震えた。信頼という言葉が彼の心を複雑にした。
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プライドは傷ついたが、その言葉が完全に間違っているとは思わなかった。
数日前、スンヒョクは16回戦を思い出した。セリンのチームとの対決で自分が戦略転換を提案し、それが勝利の足掛かりになった。チャンソプもそれを認めていた。
「分析は...俺が得意だから」
スンヒョクはそう気持ちを立て直した。
「どうせ同じチームだ。あいつも俺を少しずつ認めてきてる。ジウンや俺は、まだチャンソプほど強くないけど...俺たちがもっと強くなれば、あいつも完全に認めてくれるはずだ」
スンヒョクは拳を握った。今度こそ、もっとうまくやれると。
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## 第2部 - セリンとの再会
一方、ベスト8の対戦表を確認しに行く道。
スンヒョクとジウンは道でセリンと出会った。
セリンはきまり悪そうに笑って言った。
「いいわね。チャンソプがあなたたちのチームメイトで。正直言って、あなたたち2人だけだったら...大変だったでしょうね。私たちのチームにはあれほどのエースがいないから」
スンヒョクは頷いた。
「その通りです。チャンソプは確かに強いですから。実は...この前の16回戦でも、チャンソプが投入されなかったら...大変だったと思います」
セリンはしばらく沈黙してから慎重に言った。
「この前の試合...いい勝負だった。あなたたちの戦略転換、本当に良かったわ」
スンヒョクは小さく微笑んだ。
「先輩のおかげでたくさん学びました。試合を分析する方法とか」
「でも勝ったのはあなたたちよ。これからも頑張って」
ジウンが静かに頷き、セリンは明るい表情で2人を励ました。
スンヒョクの眼差しはもう揺らがなかった。
「強くなること。それがこの世界で生き残る道だ」
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## 第3部 - ベスト8対戦
ベスト8の対戦表を確認していたスンヒョクの目が、見覚えのある名前で止まった。
**1年7組 vs 2年5組**
その下に、名簿が書かれていた。
ソ・ミヨン、チャン・ドユン、チャ・イェリン...
全員2年生の先輩だった。
「2年5組?ソ・ミヨン...チャン・ドユン...チャ・イェリンまで?」
スンヒョクは思わず名前をつぶやいて唇を噛んだ。
「これはちょっと厳しそうだな...」
その時だった。向かいから2年生の女子生徒が近づいてきた。肩をまっすぐ伸ばして堂々と立つ彼女、まさにソ・ミヨンだった。
彼女はスンヒョクの組を見回して口を開いた。
「あなたたちが...1年7組?ベスト8まで上がってきた後輩たちね」
言葉の端にわずかに笑うような微笑み。
「チャンソプ、あなたたちのチームでしょ?あの後輩、実力いいのに...でもなんで先発があなたたちなの?」
何か気になるような口調。
ジウンが静かに出た。
「先輩、チャンソプは優秀すぎて。一人で全部やっちゃうから...先生たちがチームワークの公平性の問題で控えにしたんです」
「あ、そういう事情があったのね。それでも16回戦まで来たってことは、あなたたちも実力あるってことじゃない?」
ミヨンは頷いてジウンに好感を示した。2人は一瞬で仲良くなり、結局連絡先まで交換した。お互い笑って会話する2人を見ながら、スンヒョクは心の中で思った。
「ジウンは社交性がいいな。俺もあんな風にできたらいいのに...」
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## 第4部 - 準備
ベスト8戦、その次は市大会。市大会さえ超えれば、全国大会。
「この大会さえうまくいけば...もしかしたら本当に人生が変わるかもしれない」
スンヒョクは頭を下げたまま考えた。
「全国大会優勝者なら、奨学金ももらえるし、入試にも有利だし...チャンスをつかめる」
スンヒョクは拳を握った。
「全力を尽くさないと。これは、俺にとって大事な舞台だから」
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最近、スンヒョクはだんだん集中力が高まっていた。昼休みにも食事をした後、静かに教室の隅に座ってカードを分析した。指先でカードをめくり、また集め、また混ぜる動作を繰り返しながら、まるで頭の中で何百回ものシミュレーションを回しているような様子だった。
それを見守っていたジウンは結局チャンソプを訪ねて口を開いた。
「最近スンヒョク、一日中一生懸命準備してる。朝も、休み時間も...」
チャンソプは頷いた。
「それがいいんだ。集中する方法を学んでるんだから」
パタン。チャンソプの手にはすでに全国大会案内冊子が開かれていた。表紙は輝いており、内部には大会規則と賞金、そして各地域代表チームの紹介がびっしり詰まっていた。
「試合では全力を尽くすことが大事だ。結局結果がついてくるから」
彼は冊子をめくりながらつぶやいた。
「校内大会が終わったら...全国大会が楽しみだ。そこにはどれだけ強いチームが集まるんだろう」
ジウンはその様子を見てクスッと笑った。
カードを見ながら静かに練習するスンヒョク、全国を見据えてすでにずっと先を行くチャンソプ。
「2人とも頑張ってるな」
ジウンは2人を見つめて小さくつぶやいた。
「よし、これなら...私たちのチーム、もっと強くなれる」
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## 第5部 - ソヘのニュース
スンヒョクは昼休みにもカードゲームのことばかり考えていた。ベスト8戦を前に相手チームの戦力をまとめたノートには、ミヨン先輩の過去の試合記録、プレイスタイル、弱点までびっしり書かれていた。
「ミヨン先輩は前年度ARバトル準優勝者...でもアリーナオンラインとは違うジャンルだから...」
独り言をつぶやきながら集中していた瞬間、ソヘが近づいてきた。
「スンヒョク、来週の体育の実技どうするつもり?」
「あ、お医者さんが体調見て調節しろって言ってた」
ソヘは躊躇してから明るく言った。
「スンヒョク...私、クローン病が完治したの。もう治療受けなくていいんだって」
「え、本当?」
スンヒョクは顔を上げてソヘを見た。彼女の顔が以前よりずっと明るく見えた。
「おめでとう、ソヘ。本当に良かった。大変だったでしょ...」
「うん、ありがとう。もう大丈夫になったの」
ソヘは明るく笑い、スンヒョクも笑顔を返した。
「これから健康に過ごしてね。ベスト8戦の時、応援に来てくれる?」
「うん!絶対行く」
ソヘが振り返ると、スンヒョクは再びノートに視線を落としたが、心の片隅が温かくなった。
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ジウンはソヘの言葉に目を輝かせて言った。
「わあ、本当に治ったんだ?あなた、あの病気ですごく大変だったじゃない」
ソヘは少し笑って頷いた。
「うん。でももう本当に大丈夫になったの」
そう言いながらスンヒョクを見た。
「スンヒョク...最近すごく集中してる。毎日一生懸命準備してるじゃない」
ジウンはクスッと笑った。
「でしょ?それだけ真剣にやってるから、ベスト8も十分勝てると思う」
「ベスト8戦の日...私、観客として行ってもいい?」
「もちろん!当たり前よ。来てくれたら力が出る」
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## 第6部 - 発見
その日の夕方、スンヒョクは寝る考えも忘れて机の前に座り、YouTubeで「ヨーロッパアリーナオンライン選手権大会」を視聴していた。
映像はすぐにドイツ企業シュタインツの代表取締役カール・フォン・ハインツが舞台に登場する場面に移った。
カールはきちんとしたスーツ姿で舞台中央に立ち、はっきりした英語の発音でゆっくりと口を開いた。
「This game was the final will of Mr. Steve Jobs, the former CEO of Apple, before his death.」
「アップルの創業者スティーブ・ジョブズ前CEOが死の直前に残された最後の遺言でした」
「It began with Apple, continued through a partnership with Sony, and was finally released by our company, Steinz, as the fruit of a tri-national collaboration between the United States, Japan, and Germany.」
「アップルが始め、ソニーが協業し、最終的に我が社シュタインツが発売した米国、日本、ドイツ3カ国の共同作品です」
画面にはカール・フォン・ハインツのプロフィールが大きく表示された。
**カール・フォン・ハインツ(Karl von Heinz)**
オックスフォード大学数学科卒業
イギリス人の母、ドイツ人の父
EU/ドイツ二重国籍者
Steinz代表取締役兼主席設計者
スンヒョクは感嘆の声を漏らした。
「確かに...すごい人だな」
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カメラが再び舞台中央を映すと、ハインツはテーブルの上のカード4枚をゆっくりと広げて見せた。
「Diese Karten sind die stärksten in der Arena Online.」
(このカードはアリーナオンラインで最強のカードです)
字幕がドイツ語の台詞の下に整然と流れた。
スンヒョクは映像を停止してそのカード4枚をキャプチャした。
「このレベルのカードがあってこそ全国大会でも競争できるんだな...」
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## 第7部 - ロラン
ところがカードを注意深く見ていたスンヒョクは目を丸くした。
「...待って」
そのうちの1枚が、まさに自分のデッキに入っているカードだった。
**AIグラディエーター - ロラン**
「特にこの伝説のカードの中で、最もバランスの取れたカードがこれです」
ハインツ代表は画面の向こうを見つめて真剣に言った。
「AIグラディエーター - ロラン」
彼の声は落ち着いていたが、その中に込められた重みは重かった。
「このロランは攻撃と防御、転換機能まで備えたカードです」
シャルルマーニュ大帝の12騎士の一人をモチーフにしたこのカードは、アリーナオンラインの伝説的な強化型カードとして知られていた。
「俺が...これを持ってたのか?」
スンヒョクの手がわずかに震え始めた。
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映像の中のハインツが最後に言った。
「皆さん、どうかこのカードをご覧になったら...慎重に扱ってください。希少なカードは常に多くの注目を受けますから」
その瞬間、スンヒョクは深く息を吸い込んだ。
「本当に...こんなカードだったんだ...」
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## 第8部 - 決意
ベスト8戦を前に、スンヒョクはロランのカードを慎重にデッキの中心に配置した。
「シャルルマーニュの12騎士...アリーナオンラインの伝説カード...これは本当に特別なカードだ」
彼は震える手でカードを見つめてつぶやいた。
「このカードの価値を知る人は多くないはずだ。慎重に使わないと」
スンヒョクは席から立ち上がってカードケースを開け、ロランを含む5枚のカードを全部集めて入れた。それを再びカバンの中に入れてジッパーをしっかり閉めた。
「絶対になくしちゃダメだ」
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その夜、スンヒョクはベッドに横になって天井を見つめた。
「ロランのカード...これをどう活用すればいいんだろう?」
頭の中で数十の戦略が駆け巡った。
「ベスト8戦で使おうか?それともっと大事な瞬間のために取っておこうか?」
悩んだ末、スンヒョクは結論を出した。
「状況を見て使おう。チームが危機に陥った時、このカードが俺たちを救えるはずだ」
手首のスマートウォッチがかすかに光った。
ベスト8戦の日程が表示された。
「来週...全力を尽くそう」
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そうしてスンヒョクは静かに目を閉じた。
心の中には緊張感と共に、小さな希望が芽生えていた。
「今度は...本当にうまくやれる」
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**[第8話 終わり]**
第8話を最後までお読みいただきありがとうございます!
ついにスンヒョクが持つ「ロラン」の正体が明らかになりました。スティーブ・ジョブズの遺言、そして世界的な企業「シュタインズ」が関わる壮大な世界観が、少しずつベールを脱ぎ始めています。
また、ソヘの完治という嬉しいニュースも届きました。この吉報を力に変えて、強力な2年生たちが待ち構えるベスト8戦を勝ち抜けるのか。
次回、いよいよ運命のベスト8戦が幕を開けます。応援よろしくお願いします!




