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53: チェ・スンヒョクの再会

日本チームの傭兵として東京に立つスンヒョク。偶然の再会は、静かな衝突へと変わった。「裏切り者」と呼ぶ者、謝りに来る者、そして電話越しに揺れる声——ジウン。スンヒョクは何も弁明しない。感情より方向を、仲間より実力を選んだ男の夜は、静かに深まっていく。丘の上でひとり夜明けを待ちながら、彼はただ一つの誓いを胸に刻んだ。必ず証明する、と。シーズン1、ここに完結。

53: チェ・スンヒョクの再会


「続きまして……七日の試合では、ウクライナがオランダを下して決勝へと進出しました」

チェ・スンヒョクは静かにリモコンを持ち上げてTVを消した。

「ウクライナが決勝に上がったとは……」

信じられないという目つき。しばらく静寂が流れた。消えた画面のテレビには、彼の寂しそうな顔がぼんやりと映っていた。

二〇二九年十月。俺が日本に来てもう一ヶ月が経った。ここは見知らぬ場所だが、慣れてきつつある。俺の夢はただ一つ。世界最高のカードマスターになること。そして今、俺はその夢へと一歩ずつ近づいている。いつの間にか俺はローランと一体になりつつある。まだ終わったわけじゃない。

スンヒョクはゆっくりと窓の外を眺めた。秋風が静かに流れ込んでいた。


山梨ジュンが遠慮がちに聞いた。

「スンヒョクさん、アリーナオンラインを始めてどのくらいになりますか?」

スンヒョクはしばらく考えてからうなずいた。

「今年で三年目です」

ジュンは感心したように目を細めた。

「そうなんですね……実力がしっかりしていると感じました。日本にはいつまでいるつもりですか?」

スンヒョクはしばらく視線を窓の外に向けてから静かに言った。

「アジア予選が終わったら……ロンドンかベルリンへ行くつもりです。あちらの方が大きな舞台ですから」

言葉の末尾に、妙な決意が漂っていた。その目にはすでに次の戦場が描かれていた。


その日の午後、居酒屋の片隅でスンヒョクは偶然、日韓アリーナ代表チーム間の選手交流会に居合わせた。ざわついた雰囲気の中、山梨ジュンが明るい笑顔で挨拶を交わした。

「はじめまして、みなさん」

キソンも静かに挨拶した。「よろしくお願いします」

誰かが低く「あ、スンヒョク……」と近づいてきた。スンヒョクは少し躊躇しながら言った。

「私は日本チームの傭兵として出場することになりました」

その瞬間、一人の男が目を大きく見開いてスンヒョクを指差した。

「ちょ、ちょっと待って……あいつ……数日前に会ったそいつじゃないか」

オ・ボムスだった。その声には怒りが混じっていた。

「なんで日本の傭兵なんだ? これのどこが裏切りじゃないんだよ!」

周りの人たちが静まり返った。

スンヒョクは静かに顔を向けてその男を見た。目つきは冷ややかだった。

「そもそも俺は韓国代表チームに入ったこともない。あなたとは何の関係もない話だ」

緊張感が広がった。隣で状況を見守っていたキソンが慌てて仲裁に入った。

「あ、ボムス兄さん……落ち着いて……」

しかしオ・ボムスはすでに興奮を抑えられなかった。

「お前に国家代表の場を譲ってやったのに、結局日本チームの傭兵になったってか? それが筋の通る話か?」

その言葉にスンヒョクの表情が固まった。そしてゆっくりと口を開いた。

「だから何だ? それがどうした?」

スンヒョクは立ち上がってオ・ボムスをまっすぐ見た。

「俺はあなたの気に入るために存在する人間じゃない。それに今はもう同じチームでもない」

彼は短く付け加えた。

「俺は少なくとも日本では自分の実力で認められた。あなたはそれを一度でも感じたことがあるか?」

言葉は短かったが鋭かった。オ・ボムスの顔が赤く上気した。何も言えなかった。

あたりは静寂に包まれた。スンヒョクはそれ以上何も言わなかった。山梨ジュンに頭を下げながら静かに言った。

「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」

ジュンは柔らかく笑いながら首を横に振った。

「気にしないでください、スンヒョクさん」

傍にいた坂柳エリカも頷いた。

「大丈夫ですよ。さっきは誰だって腹が立ったと思います」

スンヒョクは彼らの気遣いにしばらく立ち止まった。しかし視線は遠く、向こうにいる韓国チームの選手たちへと向かっていた。その中でもひときわ静かにしていたキソンと目が合った。

しばらく沈黙が流れた後、スンヒョクは何も言わずに席を蹴って立ち上がった。

「スンヒョク!」

キソンが慌てて呼んだが、彼はそのまま居酒屋を出て行った。背後でドアがバタンと閉まった。

キソンがつぶやいた。

「……本当に……俺に国家代表を譲ったのが、ただ日本に移住するためだったのか? それだけだったのか、スンヒョク……」

答えは返ってこなかった。


深夜、キソンとボムスは人気のない公園のベンチに一人で座っているスンヒョクを見つけた。

彼はぼんやりと空を見上げていた。

「スンヒョク……」

キソンが慎重に声をかけた。

「……何しに来たんですか、兄さん……」

スンヒョクは視線を向けることもなく冷たく言った。

ボムスが一歩前に出て口を開いた。

「悪かった。さっきは俺が軽率だった。お前の立場も知らないで……」

するとスンヒョクが顔を向けてボムスを見た。

「その謝罪……受け入れるつもりはない。お互い知り合いのふりはやめましょう」

ボムスの顔が固まった。キソンも戸惑って言葉を続けられなかった。

「俺は一度も国家代表が羨ましいと思ったことはない。そんなに大したことか? テレビに出て、太極旗をつけて戦うのが?」

スンヒョクはふっと笑った。

「兄さん、もう俺たちは敵だよ。次に会うときは、俺はあなたを倒す相手でしかない。勘違いするな。俺を仲間だと思うな」

その言葉が終わりきる前に、キソンのスマートフォンが鳴った。着信表示:チェ・ジウン。

キソンは一瞬戸惑ったが通話ボタンを押した。

「あ、ジウン。うん、今? 俺たちの四百日じゃないか」

彼が通話している様子を見ていたスンヒョクの顔に、微妙な変化が走った。聞き慣れた名前。

ジウン……?

電話越しに彼女の明るい声が聞こえた。

「誰と話してるの? 背景音が変なんだけど……?」

キソンは正直に答えた。

「あ、さっきスンヒョクに偶然会って。ちょっと話してた」

「……え? スンヒョク? 本当に? わあ……久しぶりだ……」

ジウンの声が一瞬揺れた。明るかった口調が微妙に低くなった。続く言葉は口から出られずに宙を漂った。

「……ねえ……」

その短い言葉と、間を置く息遣いだけで、スンヒョクにはわかった。彼女がまだあの日を覚えているということを。

スンヒョクは何も言わずに背を向けて歩き始めた。キソンの視界から素早く遠ざかっていった。

キソンはスマートフォンを持ちながらその姿を見つめてから、電話に静かに言った。

「ジウン……切ろう。今は……違う気がする」

電話を切った後もキソンはしばらく無言だった。スンヒョクが消えた方向を眺めながら、彼は思った。

あいつが最初から求めていたのは、この場所じゃなかったんだな。

怒りでも恨みでもなかった。ただ苦い諦めのようなものだった。


その夜、スンヒョクは宿舎近くの丘の上のベンチにひとりで座って、夜明けの空を見上げた。

東京の夜景の向こうにかすかに広がる暗闇の中で、彼はゆっくりとつぶやいた。

キソン兄さん。ジウン。ボムス。今日のあの目つきを忘れない。

彼らが自分を見ていた目つき。戸惑い、寂しさ、そして理解できないという表情たち。

スンヒョクは静かに顔を上げた。

自分が間違っていないとわかっている。最初からこちらが自分の道だった。感情より方向を信じると決めて、その選択は今も変わらない。

ただジウンの声が微妙に低くなったあの瞬間だけは、一瞬躊躇したということも事実だった。

……もういい。過ぎたことだ。

スマートウォッチの画面を開いて練習ログを確認していたスンヒョクは、ゆっくりと目を閉じた。

夜明けが訪れる東京の空には、星の光が淡く流れていた。

俺は実利を選んだだけだ。感情ではなく現実を。俺の選択は間違っていない。

そして静かに付け加えた。

必ず証明してみせる。俺がどれだけ正しかったかを。

東京の夜明けはそうして、彼の誓いを胸に抱きながら明けていった。

最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。シーズン1はここで幕を閉じます。スンヒョクが韓国を出て、ドイツへ渡り、そして東京へ——長い旅でした。仲間との別れ、片思いの終わり、そして「証明する」という誓い。すべてが次の舞台への伏線です。明日からはいよいよシーズン2が始まります。新たな戦場で、スンヒョクはどう戦うのか。どうぞ引き続きよろしくお願いします。

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