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21: 龍袍の皇帝

タイトル:第21話 ― 皇帝の陥落、そして雪原の再起


学年1位、市大会優勝。完璧なスペックと傲慢なプライドで「教室の皇帝」として君臨していたパク・チャンソプ。彼はさらなる強さを求め、冬の北海道へと向かう。


そこで待ち受けていたのは、日本代表チーム「成田ジュン」一行との圧倒적인実力差だった。

得意の包囲戦術を打ち破るエリカの「黄金の盾」、チェスで翻弄するジュンの知略、そしてミユキの鋭い剣術。カードバトル、チェス, 武術……そのすべてにおいて惨敗を喫したチャンソプは, 初めて自らの「限界」と「歪んだ価値観」に直面する。


「勝てば正しい、強い者が正義だ」


その信念が音を立てて崩れ去る雪の夜、彼は敗北の先にある「真の強さ」の片鱗を見出す。

韓国の若き才能が、日本の地で洗礼を受ける。挫折を糧に、皇帝は一人のチャレンジャーへと脱皮できるのか。

1部 — 教室の皇帝

「おい、チャンソプ、お前今回の期末試験も学年1位なんだって?」

教室の中がざわめいた。先生はチャンソプを見つめてにっこり笑った。

「チャンソプ、学年1位おめでとう。いつも頑張ってるね」

チャンソプは恥ずかしそうに頭を下げた。

ジウンが先に拍手した。

「わあ〜本当にかっこいい、チャンソプ!」

ボラも笑いながら言った。

「あー、でも正直2位に落ちたのムカつく。それでもおめでとう、認めるわ」

先生はすぐに別の生徒に顔を向けた。

「スンヒョクも成績かなり上がったね?」

「ありがとうございます、先生」

スンヒョクは短く答えたが、口角が少し上がった。


2部 — スンヒョクの誓い

下校途中、ジウンが隣に近づいた。

「ねえ、スンヒョク。あんた今回の試験本当によくできたんだって?」

スンヒョクはカバンを肩にかけながら答えた。

「うん、隙間時間に勉強した。それに今、全国大会の準備も一緒にしてるし」

言葉は淡々としていたが、その眼差しには自信が滲んでいた。

「俺よりもソヘに感謝しないと……あの子はもう俺たちの傍にいないけど」

スンヒョクは窓の外を見つめてから、カードの中のシャルルマーニュの十二勇士を取り出した。

「これを見ると、ソヘのためにももっと頑張って生きなきゃって思うんだ」

その横でジウンが静かに彼を見つめた。

スンヒョクは微笑んで言った。

「勝てるよ。勝てるとも。俺、全国大会行ってもうまくやるから」


3部 — 空席

翌日の朝、チャンソプが学校に来なかった。

「今日、チャンソプは現場体験学習で日本の北海道に行ったそうです」と担任が言った。

「試験も終わったから今日は映画を見せてあげる。休みまで事故起こさず過ごそうね」

教室にしばらく歓声が広がった。

スンヒョクは教室に響き渡る歓声を静かに見つめた。

『思ったよりチャンソプへのアンチが多かったな……あいつ、偉そうにしすぎたんだよ』

心の中ではそう呟いたが、表情は無表情だった。


4部 — 北海道の聖堂

一方、日本の北海道のある小さな聖堂の前。

厚手のコートを着たチャンソプが雪の降る道の上に静かに立っていた。

「ここか……アリーナオンライン日本代表、成田ジュンの訓練場所が」

扉が開き、きちんとした黒いコートを着た青年が近づいてきた。

「初めまして、チャンソプ君」

その声は低くはっきりしていた。

「僕は成田ジュン。そしてこちらは坂柳エリカ、安藤ミユキです」

二人の少女が頭を下げて同時に言った。

「よろしくお願いします」

日本式の自己紹介が冷たい空気を切って続いた。

「日本は……もうアリーナの全国大会が終わったんですか?」

チャンソプが慎重に尋ねた。

成田ジュンが頷いた。

「はい、僕たちは先月すでに全ての試合を終えました」

チャンソプは両手をきちんと揃えた。

「もしよければ……対戦をお願いできますか?」

ジュンは黙ってチャンソプを見つめてから頷いた。

「行きましょう」

彼は静かに体を向けて聖堂の中へ向かった。


5部 — 黄金の盾の罠

到着した室内には照明が灯り、競技場が設置されていた。

そこで待っていた少女が先に口を開いた。

「アリーナオンライン、関東地方代表の坂柳エリカです。チャンソプ君、試合してもいいですか?」

チャンソプは頭を下げてはっきりと答えた。

「教育庁主管の韓日交流戦に参加できて光栄です」

エリカが説明を続けた。

「カードは合計7枚使用でき、交代や試合中の棄権は不可能です」

チャンソプは頷いた。

「理解しました」

その眼差しが鋭く変わった。試合はすぐに始まった。

エリカは躊躇なくカード7枚をテーブルに並べた。

「豊臣秀吉、ギルガメシュ、オーディン、ヘラクレス、ゼロ戦」

防御用カードとして嘆きの壁、ローラン、ローマの黄金の盾が二枚順番に置かれた。

チャンソプは目を細めてカード一枚を取り出した。

「ヘラクレス、ローラン……発進」

すぐに戦闘が開始された。巨大な衝突音とともにフィールドが揺れ動いた。

チャンソプのヘラクレスが素早く突進し、ローランが後ろを支えてエリカの陣営を突破した。

最初の衝突でチャンソプが優位を占めた。

エリカのギルガメシュが押され、オーディンはヘラクレスの猛攻に消滅した。

すぐに李舜臣のカードまで投入したチャンソプは完璧な包囲網を構築した。

『関東代表、坂柳エリカ……思ったより楽勝だな』

心の中でそう呟きながらチャンソプは集中を保った。

しかしエリカは一歩も引かなかった。

むしろ口角を上げて、残りのカード一枚をゆっくりとテーブルに置いた。

「面白いですね、チャンソプ君」

嘲りではなく、純粋な興味が込められた声だった。

「この局面でその選択をするなんて」

チャンソプの眉が少し揺れた。

勝負師の眼差しだった。貶めるのではなく、本当にこの戦いを楽しむ眼差し。

『……この子、侮れない』

ローマの黄金の盾二枚が赤い光を放って李舜臣とヘラクレスの猛攻を完璧に防いだ。

「防御戦か……?」

チャンソプは歯を食いしばってさらに激しく攻撃を浴びせた。

しかしエリカの表情は揺るがなかった。

「このカードはですね」

エリカが静かに言った。

「強い攻撃が入るほど……だんだん強く、相手のHPを吸収します」

黄金の盾二枚のエネルギーが豊臣秀吉とゼロ戦に流れ込んだ。

炎のような気配が二つのカードから噴き上げた。

チャンソプは目の前が真っ白になった。

黄金の盾は衝撃量を二倍に増幅させて、そのエネルギーをそのまま返した。

秀吉とゼロ戦が同時に突進して李舜臣とヘラクレスを瞬く間に倒した。

「パク・チャンソプ君、敗北!」

審判の宣言が聖堂の中に響いた。

チャンソプは息を切らして座り込んだ。指先が震え、目の前がくらくらした。

エリカはカードを整理しながら静かに頭を下げた。

「いい試合でした。あなたの包囲戦術は本物でしたよ」

チャンソプは歯を食いしばった。

「……これが日本代表チームか……」

成田ジュンが横で静かに言った。

「エリカは僕たちのチーム内で3位です」

チャンソプの目が大きくなった。

チャンソプは跳ね起きて声を高めた。

「これは不公平だ。お前らは日本の国家代表じゃないか。俺はやっと市大会の優勝者だぞ!」

言葉は飛び出したが、自分でも分かっていた。言い訳だということを。

成田ジュンは静かに彼を見つめた。嘲笑もせず、同意もしなかった。

「……もう一度対戦しよう」

ジュンは優しく首を横に振った。

「今日はここまでにしましょう。別の機会を設けますから」


6部 — 温泉旅館のチェス

温泉旅館に到着した二人は湯に浸かった後、静かな別室に移動した。

卓上にはチェス盤が置かれていた。

「簡単なチェスです。気楽にどうぞ」

チャンソプは集中して駒を動かした。しかし成田ジュンの手は相変わらず予測不可能だった。

結局クイーンとルークを全て失ってチェックメイト。

「……また負けた」

チャンソプはチェス盤を見つめてから黙って背もたれに寄りかかってため息をついた。

ジュンはゆっくりと駒を片付けながら尋ねた。

「チャンソプさん、カードゲームを初めて始めたのはいつですか?」

「……中学1年生。最初はただ楽しくてやってた」

「今も楽しいですか?」

チャンソプは答えられなかった。

ジュンは強要しなかった。ただ静かに待った。

「……分からない。いつからか勝つことが全てだった気がする」


7部 — 雪の降る庭園

庭園に風が吹いてきた。二人は並んで立って雪に覆われた木を見つめた。

ジュンが先に口を開いた。

「チャンソプさん、一つだけ聞いてもいいですか」

「……何だ」

「あなたがアップした動画で、『国産はゴミだ』と言った言葉。今でもそう思いますか?」

チャンソプの肩が固まった。

しばらく沈黙が流れた。

「……あの時は本気だった。俺が使うカードが弱いと感じて、それが全部国産カードのせいだと思ってた」

彼は目を閉じた。

「でも……今日エリカに負けて分かった。俺が負けたのはカードのせいじゃなかった。俺がエリカのデッキを甘く見て、自分の公式だけを信じてた」

ジュンは何も言わなかった。

「その言葉……後悔してる。その言葉を聞いた人たちに、本当に申し訳ないと思う」

ジュンはゆっくりと頷いた。

「それを自分で言えるなら、十分です」

チャンソプは顔を上げて空を見上げた。

「お前はなんで俺にこんなに親切にしてくれるんだ? 俺、すごく傲慢に振る舞ったじゃないか」

ジュンはしばらく考えてから言った。

「あなたが強いのは本物だからです。その力がどこに向かうかの問題だっただけで」

彼は静かに付け加えた。

「僕も昔、勝つこと以外何も見えなかった時期がありました」


8部 — 木剣対練

剣術の対練でもチャンソプは負けた。

安藤ミユキの木剣は速く正確だった。

膝をついて地面を見つめていたチャンソプは今度は言い訳しなかった。

「……強いな」

ミユキが手を差し出した。

「韓国でまた会う機会があれば、その時もよろしくお願いします」

チャンソプはその手を握って立ち上がった。

9部 — 帰国前夜

ホテルに戻る道、雪が降っていた。

チャンソプは歩きながら考えた。

『俺は学年1位で、市大会優勝者だった。でも今日一日でカードゲーム、チェス、剣術全部負けた』

敗北が崩したのは自尊心だけではなかった。今まで自分を支えていたある公式のようなものだった。

『勝てば強い。強い人が正しい』

ところがエリカは勝っても相手を貶めなかった。ジュンは自分より弱い相手にも本気で接した。

『……それが本当に強いってことか』

宿の扉を開ける前、チャンソプは少し止まった。

その日初めて、彼は負けることが恥ずかしくないことを知った。いや、正確にはこう思った。

『今の俺は負けた。でもこれを踏み台にすればいい』

曲竜袍を纏った皇帝のように君臨していた場所から、彼は初めて一歩降りた。

そしてその一歩が、もしかしたら最も大切な一歩だった。

読者の皆様、第21話をお読みいただきありがとうございます!


今回は、物語のもう一人の主人公とも言えるチャンソプにスポットを当てた「日本遠征編」をお届けしました。これまでスンヒョクのライバルとして圧倒的な壁であり続けたチャンソプですが、井の中の蛙だった彼が広い世界(日本代表)に触れ、鼻をへし折られるシーンを描きたかったのです。


エリカに負けた後の彼の言い訳や、その後のチェスや剣術での敗北を通じて、彼が「勝敗」という結果以上に大切な「対戦相手への敬意」や「自分自身の未熟さ」を認めていく過程を丁寧に描写しました。特に雪の降る庭園でジュンと対話するシーンは、彼の心の氷が少しずつ溶けていくイメージで執筆しました。


最強の敵から、真の学友へと変わっていくチャンソプ。そして韓国で牙を研ぐスンヒョク。二人が全国大会で再会する時、どのような化学反応が起きるのか……。


これからの展開もどうぞご期待ください!面白いと感じていただけたら、評価やブックマークをいただけますと幸いです!

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