14: 夏休み(下)
親友・ソヘが遺した『シャルルマーニュの十二勇士』。
悲しみに暮れる暇もなく、スンヒョクは新たな戦いへと足を踏み入れる。
そんな中、放課後の広場を恐怖に陥れる圧倒的な影――パク・チャンソプ。
「弱者に、大会に出る資格はない」
たった一人で七人を蹂躙する冷徹な王を前に、スンヒョクは静かに拳を握る。
チャンソプが持たぬ最後の一枚、伝説の『ローラン』と共に。
因縁が火花を散らす、市大会直前の第14話!
第1部 - 帰宅
その日の夕方、家に帰ったスンヒョクに母親がそっと尋ねた。
「スンヒョク、なんでこんなに遅くなったの?」
スンヒョクは軽く微笑んで答えた。
「ちょっと用事があったんだ。心配しなくて大丈夫だよ」
母親は深く聞かずに頷いた。
スンヒョクは適当に食事を済ませて部屋へ向かった。
扉を閉めるとすぐに、12枚のカードを取り出してそっと広げた。
その欠片は、まるで彼の心の中の重い荷物のように感じられた。
スンヒョクは集中しながら一枚、一枚を見つめた。
明日のために、もっと強くなるために。
スンヒョクは机の上に広げられた12枚のカードをゆっくりと見つめた。カードの中には伝説のシャルルマーニュの十二勇士が刻まれていた。ローラン、オリヴィエ、アングラン、ジェフラン、ジェリベル、ベランジェ、オブレ、トマ、ブリアン、ウィリアム、ウンゴルド、そしてイヴォン。まるで彼らが頭の中で作戦を練っているようだった。
「明日にはまた始まるんだな……」
深いため息とともに、スンヒョクはカードを片付けて重い心で床についた。
第2部 - 新学期前日
新学期の前日、再び現実に戻ってきた。
学校近くの路地で偶然会ったジウンとセリン。そしてカフェで勉強していたチャンソプまで。
三人はソヘの死について静かに話した。ジウンとセリンは涙をこらえきれずに互いをしっかりと抱き合った。
スンヒョクもソヘの顔を思い浮かべて胸が重くなった。足取りが一層重かった。
カフェの中。三人は一緒に食べ物を注文した。しばらく緊張も解け、ぎこちなかった心も溶けていった。
互いに笑いも交わし、話も少しずつした。懐かしさと悲しみの中でも小さな慰めが生まれる瞬間だった。
カフェの隣の席で、チャンソプは黙々と宿題をしていた。
セリンが低い声で言った。
「ソヘ……本当に悲しかった。残念だわ」
チャンソプはしばらく顔を上げてから、静かに答えた。
「うん……俺もそうだ」
そして再び本に視線を戻した。
すぐに雰囲気は落ち着いた議論モードに変わった。
皆が慎重に意見を交わした。
しかしその心の片隅には、相変わらずソヘの空席が大きく座っていた。
悲しみと懐かしさ、そしてその中で少しずつ育っていく明日への希望。
彼らはそうやって黙々と前に進もうと努力していた。
第3部 - 市大会の準備
宿題を終えてカフェを出るチャンソプは軽く微笑んだ。
新学期を前に不安な表情で窓の外を見つめるスンヒョクとジウン、セリンが目に入った。
スンヒョクがそっと口を開いた。
「今年の市大会で優勝したら、全国大会は冬に開かれるの?」
セリンは頷きながら言った。
「うん、そうよ。でも私、生まれてこんな大会に出たことないわ」
スンヒョクの不安が滲み出る言葉だった。
セリンはそんなスンヒョクに向かって笑いながら言った。
「とりあえず私たち三人の中で一番強いのはあんたよ、スンヒョク。
でもあんたは日程管理、対立調整、外向性が全部最悪でしょ。
だから代表は私がやるの、不満ない?」
スンヒョクは頷いて答えた。
「うん、何の不満もない。
むしろいいよ。
おかげでそれぞれの役割がちゃんと分担されるから、市大会でも勝てそうだ」
スンヒョクはポケットからカードを取り出して手に広げた。
何ヶ月もさまよっていたカードがついに自分の手の中に入った瞬間だった。
そのカードは誰かにとって最も貴重な「シャルルマーニュの十二勇士」だった。
心の片隅に誓いが湧き上がった。
『俺が優勝して必ずソヘの夢を叶えてあげなきゃ』
そうしてスンヒョクは微笑みながら新学期を待った。
第4部 - 新学期初日
放課後になると、新学期初日の緊張もいつの間にか収まり、スンヒョクはすでに「シャルルマーニュの十二勇士」のカード12枚を広げて、来週土曜日に市役所で開かれる市大会の準備を始めた。それぞれの役割を整理しながら呟いた。
「俺がエースを担当するのが正しい……戦闘戦略、核心攻撃、それから……ジウンはサポートとバフ、セリンは防御と戦略支援……どれくらい息が合うか見守らないと」
その時、下校途中の学校前の広場ではざわめきが起こった。他の学校の子供たちが集まって騒がしく話していた。
「おい、そこにパク・チャンソプってやついるか?」
「あの冷たいやつのことだよ、俺たちの練習試合の時に一人だけ抜けたって聞いたぜ」
「そうそう。その日チーム練習だったのに、そいつ一人でカバン持って俺たちの戦略資料を全部持ってテチドンの塾に行ったんだって」
「いや、それで終わりか? カードバトルの練習してやるって言いながら、俺たちのデッキの弱点だけ全部把握して、後で『実力不足』って冷たく言って出て行ったんだって」
「おい、パク・チャンソプどこだ? 顔一度見てみたい」
「あいつが市大会出るんだって? マジで面倒くせえ」
話している子供たちは互いに不満を吐き出しながらパク・チャンソプを非難した。彼らは「あの冷たくて非情なやつ」のせいで自分たちが味わった不満と怒りを交わした。他の学校の子供たちの間でもパク・チャンソプの行動はすでに噂のように広がっていた。
スンヒョクはその声を遠くから聞いて、心の片隅が複雑になった。自分が準備する大会とこの対立が、単純なカードゲーム以上の意味を持つことを感じた。「果たして今回はどんな結果が出るんだろう……」呟きながら足を速めた。
第5部 - 広場の対決
「おい、パク・チャンソプ! その戦略資料返せよ! なんで勝手に持って行ったんだ?」
「この前は一緒に練習してくれるって言ったのに、弱点だけ把握して俺たちに実力不足だって言ったじゃねえか!」
学校前の広場はどんどん騒々しくなった。集まった子供たちの中から怒りの声が広がっていった。その瞬間、群衆の視線が広場の向こうからゆっくりと歩いてくる一人の少年に向けられた。
パク・チャンソプだった。
「おい、パク・チャンソプ! その資料、俺たちのチームで一番大事なやつだったんだぞ! それを勝手に持って行ってテチドンに渡したのか?」
「俺たちには実力不足だって言っておきながら?」
「お前、マジで許さねえ……」
パク・チャンソプは黙って彼らを見つめてから、口を開いた。
「どけ」
しかし誰も引き下がらなかった。
「どかねえよ」
「今さら何、謝りでもするつもりか?」
チャンソプはしばらくため息をつくように顔を上げた。
「時間の無駄だ。実力がないなら大会に出るなって言ったはずだ」
その声は冷淡で、眼差しは冷たかった。
「その戦略資料? オープンソースのパクリなら……騙された方がバカだろ? この界隈は元々そういう風に回ってる」
その言葉を聞くやいなや、怒った相手校の高校生三人がスマートウォッチからカードを取り出してホログラムバトルの構えを取った。
「おい、決着つけようぜ! お前がどう出ようと俺たちは全部受けてやる!」
しかしパク・チャンソプは平然と自分の伝説級カード11枚を繰り広げた。空中に浮かび上がったホログラムの騎士たちが戦場の空気を完全に変えてしまった。
「どけ」
その声はもはや警告ではなかった。
「実力の差がわからなければ……学ぶしかないな。このレベルの低い連中め」
言葉が終わるやいなや、チャンソプのカードが猛烈に相手を圧倒し始めた。眩いホログラムエフェクトと電子音、まるで現実とゲームが混ざり合ったような激突が繰り広げられ、広場は瞬く間に一方的な虐殺劇に変わった。
その瞬間を遠くから見守っていたスンヒョクは口をきゅっと閉じて、カードをカバンに詰め込んだ。
『……あいつは、絶対に止めなきゃ』
第6部 - 圧倒
「ぐっ!!」
広場のあちこちから呻き声が上がった。チャンソプは冷たい表情で自分の前を塞ぐ学生たちを一人ずつ撃破した。ホログラムカードが振るわれるたびに相手のデッキが崩れ、カードの耐久度が削られていった。戦闘システムによる衝撃波で体を支えられなくなった子供たちが座り込んだり後ろに押し出されたりした。
「どけ。この程度の警告も理解できなければ……学ぶしかないな」
チャンソプの指先から再び一枚のカードがきらめいて飛んだ。ホログラムの騎士の剣撃が相手プレイヤーのメインカードを強打し、カードにひびが入って光を失った。あちこちに壊れたカードの破片がデジタル粒子のように散らばり、敗北した学生たちはスマートウォッチを掴んだまま膝をついた。
粉々になったデッキ、壊れたカードホログラム、粉砕された戦略。
まさに一方的な圧殺だった。
その時、チャンソプの前を誰かが塞いだ。
目を上げると中学生くらいに見える子供が震える声でやっと言葉を吐いた。
「謝って……兄さん……俺、あの時のチーム練習の時……実力不足だって言ったじゃないか……」
チャンソプは眉をひそめてから、何も言わずに中学生を通り過ぎて歩いた。
「そもそも実力が足りなかっただろ」
その言葉とともに、再び11枚のカードが空中に広げられた。燦然たる光の中でカード一枚一枚が鋭い剣のようにホログラムを描いた。
中学生は悲鳴を上げてそのまま後ろに退いたが、すでに遅かった。
彼のカードケースは耐久度が0になって非活性化され、手に握ったカードは無力に光を失った。
地面は壊れたカードデータと砕けたホログラムの破片、崩れたデッキで満たされた。
遠くから見守っていた子供たちは口を閉じられなかった。
敗北した学生は四人、降伏宣言した学生まで合わせると七人。
泣き声と呻き声、カードの戦闘音が混ざって、広場はもはや平和な学校前の風景ではなくなった。
チャンソプは周囲を一度見回してから、静かに笑いながら言った。
「弱い奴ら……だからお前らは負けるんだ」
そして手にカード一枚を回して見せながら悠々と広場を出て行った。
残されたのは、壊れたカードと敗北の傷だけだった。
第7部 - 気づき
「あれが……シャルルマーニュの十二勇士のうち11枚? はあ……」
チャンソプのカードデッキが炸裂するように広げられるのを見た瞬間、スンヒョクは息を呑んだ。どれもこれも圧倒的なカードだった。しかし、あいつには「ローラン」がない。
それに気づいた瞬間、スンヒョクの背中に冷たい気配が走った。
『だとしたら……ローランまで手に入れた俺なら……』
彼は初めて自分の力がどこまで上がったのか測ってみた。チャンソプが見せた圧倒的な実力は確かに恐ろしかったが、同時に彼を超える可能性が目の前にちらついた。
崩れた広場に学生たちが座り込んでいた。デッキが壊れたまま、それぞれスマートウォッチを掴んで絶望しながら帰っていく彼ら。チャンソプは最後まで冷静に何枚かのカードを投げた。
「持ってけ。必要ないだろうから。弱者ども」
軽蔑と無関心が混ざった声だった。
第8部 - 伝わった知らせ
その日の夕方、スンヒョクはそのことをセリンとジウンに伝えた。
「本当? パク・チャンソプ一人で七人を完全に……?」
セリンの目が大きくなった。ジウンは唇を噛んだ。
「ありえない。でも……あんなに強いなんて……誰があんな実力を……」
驚いたが、同時にその実力に萎縮した自分を感じた。
「あのカード……本当にただのゲームレベルじゃないかもしれない」
スンヒョクが低く言った。
チャンソプの眼差し、実力、態度——全てが本当のプロ選手のようだった。
そしてその瞬間、
スンヒョクの心のどこかに恐怖と覚悟が同時に芽生えた。
第9部 - 正義
チャンソプにとって「正義」とは、ただ強さの別名だった。
スンヒョクは広場に座り込んで絶望していた七人の子供たちを思い浮かべた。
チャンソプは一度も自分の行動を否定しなかった。
むしろ、強いから全ての行動が正当化された。
それはもしかしたら——最上位に昇った者だけが享受できる、
この世界の冷酷な現実だったのかもしれない。
「きっと……市大会で再び会うことになるだろう」
スンヒョクはそう呟きながら窓の外を見つめた。
恐ろしくもあったが、不思議と覚悟が固まった。
そんな相手がいるということ。
自分が彼と同じ舞台に立てるということ。
『ソヘ……俺、必ず勝つよ』
スンヒョクは拳を握った。
『君のカードで、あいつを必ず倒す』
【第14話 終わり】
第14話ををお読みいただき、ありがとうございます!
今回はチャンソプの「圧倒的な強さ」と、その裏にある「冷酷な正義」を描きました。
七人を相手に無双するチャンソプはまさに怪物のようですが、彼が唯一持っていないのが、スンヒョクの手にある『ローラン』です。
ソヘの想いを受け継いだスンヒョクと、強さこそが正義だと信じるチャンソプ。
二人の対立は、もう単なるゲームの勝敗を超えたものになりつつあります。
ついに来週は市大会が開幕します!
最強のカードセットを揃えたスンヒョクは、果たしてあの「怪物」を止めることができるのか?
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