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第1話 最初の召喚

「ゲームは、未来の戦場そのものである」


2026年、AIと第四次産業革命の頂点。

世界各国が国家戦略として採用した次世代AR戦闘ゲーム『アリーナ・オンライン』。

その壮大な実験場として選ばれたのは、韓国だった。


現実は残酷だ。

学校では「干物」と嘲笑され、喘息に苦しみ、息を潜めるように生きる少年、チェ・スンヒョク。

彼にとって現実は、ただ耐え忍ぶだけの場所に過ぎなかった。


しかし、一通の告知が彼の運命を変える。

《アリーナ・オンライン:校内選抜リーグ開催》


「ここなら……違うかもしれない」


最弱の少年が、歴史上の英雄たちを召喚し、共に戦う仮想の戦場へ。

国家の思惑が渦巻くゲームの中で、全てを諦めていた少年の痛快な反撃(下克上)が始まる!


――これは、ゲームが戦争になった世界で、最も弱い少年が英雄となる物語。

プロローグ ― ゲームが戦争になった世界


2026年。


世界はAIと第四次産業革命の頂点に到達していた。

医療、交通、国防はもちろん、教育や娯楽に至るまで、人工知能が関与しない分野はもはや存在しない。


その中で、最も爆発的な変化をもたらしたのが――「ゲーム」だった。


ドイツのシュタインズ、アメリカのテスラ、日本のソニー。

三国の巨大企業が共同開発した次世代グローバルAR戦闘ゲーム

『アリーナ・オンライン』。


それは単なる娯楽ではない。

青少年の戦略的思考、チームワーク、創造力、そしてAIとの共存能力を測定する仮想訓練場。


各国政府はこれを次世代人材育成プログラムとして正式採用し、

「ゲームは未来戦争の予行演習である」という言葉が、世界の常識となった。


韓国も例外ではなかった。


ソウル・江南。ネクソンタワー38階、極秘会議室。


高解像度ディスプレイに囲まれた空間で、B代表は重い沈黙の中にいた。

その正面に座るのは、白いスーツを纏った金髪の青年。


ドイツ・シュタインズ本社理事――カール・フォン・ハインツ。


「本当に、この国全体をテストベッドにするつもりですか?」


抑えた声には、はっきりとした緊張が滲んでいた。


ハインツはコーヒーを一口含み、穏やかに微笑む。


「テストベッドであり、起点です。

韓国は特別な国ですよ。ゲームに最も熱狂し、同時に最も警戒している」


「青少年の中毒問題です。親世代の反発も強い」


「だからこそ、面白い」


ハインツは机を指で軽く叩いた。


「アメリカは自由を、日本は伝統を掲げる。

しかし韓国は、その両極の間で均衡を取ろうとする社会です。

ゲームを国家戦略へと昇華できる、唯一の土壌だ」


「言葉遊びでしょう」


B代表は苦笑したが、その瞳は揺れていた。


「言葉遊びなら、イーロン・マスクと共に大統領府へ書簡など送りません」


ハインツがタブレットを操作すると、ロゴが映し出される。


《ARENA ONLINE:時空を越える者》


「AIと共に戦い、思考し、協力する。

その過程で“国家の意志”を自然に刷り込む。

これはゲームであり、教育であり、外交兵器です」


「なぜ、韓国から?」


「文化影響力です」


ハインツは即答した。


「BTS、ドラマ、ウェブトゥーン、eスポーツ。

韓国はすでに世界に“物語”を輸出している。

加えて、ゲーマーの集中力と適応力は異常なほど高い」


B代表は唇を噛んだ。

これは娯楽ではない。国家が管理する新たな戦場だった。


「AIが人類を試し始めた時代です」


ハインツは窓の外を見た。


「戦争はドローンで、政治はアルゴリズムで。

そして未来の兵士は――ゲームの中で育つ」


その瞬間、B代表のタブレットが震えた。


発信者:大統領府

内容は一行だけ。


『アリーナ・オンライン』テストベッド事業、即時検討せよ。


第1部 ― 痩せ細る少年


2026年4月。京畿道・瑞原特例市。白元高校1年。


窓際の隅の席で、チェ・スンヒョクは数学の問題集を開いていた。


『微分を用いて三次関数の極値を求めよ……』


ペンを握る指が微かに震える。

昨夜も、息苦しさで眠れなかった。喘息は治らない。


「スンヒョク、昼食べないの?」


隣の声に首を横に振る。


昼休みになると、世界はさらに狭くなる。

足音、笑い声、無意識の視線。

それだけで、胸が詰まった。


食欲は、もうずっと前になくなっていた。

痩せて、青白く、無口な自分。

だから彼は食事より、問題集を選ぶ。


数学、歴史、科学、英語。

それだけが、自分の存在証明だった。


『気にするな。誰も長く見ていない』


嘘だ。

些細な言葉が、刃のように心を削る。


「2等級……またか」


成績表を見て、苦笑する。

十分ではない。決して。


昼休み、彼は図書館へ向かった。

ぶかぶかの制服が、細い体を強調する。


図書館の最奥。人目につかない席。


「……まだ食べてないの?」


声をかけたのは、同じクラスのチェ・ジウンだった。


「昼も食べずに、またここ」


淡々とした声。だが、確かな心配。


「……食べたくないだけ」


視線を落とす。


「嫌いなのは、食べ物じゃなくて自分でしょ?」


言葉に詰まる。


「太って見えるんだ。鏡を見ると」


「運動は怖い。息も苦しいし……

どうせ変われないなら、もっと痩せた方がいい」


ジウンは深く息を吐いた。


「もう十分だよ。……痩せすぎ」


廊下から笑い声。


「また“干物”だってさ」


スンヒョクは、ただ本に顔を埋めた。


第2部 ― アリーナという名の機会


昼食を取らず、オレンジジュースだけを飲む。


甘さより先に、不安が来る。


図書館へ戻る途中、掲示板が目に入った。


《アリーナ・オンライン 校内選抜リーグ》


全国リーグ進出。奨学金。


胸の奥が、わずかに熱を持つ。


『ここなら……違うかもしれない』


「一緒に出よう」


ジウンが笑った。


「私、もう申し込んだ」


その夜。


スンヒョクのスマートウォッチが、

本人の操作なしに起動した。


――《ARENA ONLINE 接続確認》


画面に浮かぶ文字を見つめながら、

彼はまだ知らなかった。


ここから、自分の呼吸が変わることを。

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