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幸運の落とし物  作者: 小桃 綾


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3/4

最後に出てきたもの

拾った財布から出てきた沢山のお守り。

私はその財布に込められた思いの強さを感じていました。

 そのあとは金券が出ることもなく、レシートが数枚出てきただけ。商品券もタクシー券もなし。

 ガッカリだった。早く帰ってお風呂入りたい。


 全部出尽くしたと思ったが、お巡りさんが財布をしっかり開いて最後の確認をしていると、カード類を入れるポケットの中に小さく折りたたまれた紙きれが入っていた。

 お巡りさんは破れないように慎重に取り出す。

 少し黄ばんでヨレヨレになっているその紙きれからは、大事に持っていた年月と、思いのようなものを感じた。


 他人の財布の中身をジロジロ見るのも良くないと思い、交番内の張り紙を眺めることにした。

 この張り紙にキクチさんがいたらすごいな。


「これは、電話番号か? ……ちょっとかけますね」


「あ、はい」


 お巡りさんは私に声をかけてから受話器を持ち上げ、広げた紙きれを見ながら番号を押し始めた。


 もし電話の相手がキクチさんの知り合いだったら、すぐ返せるかな。

 良かったね、すぐご主人様のところに帰れそうだよ。

 ……えっと、キクチキクチ……。良かった、指名手配の張り紙にその名前はなかった。

 まあ指名手配犯が身元の分かるもの持ち歩かないよね。


 ……あれ? 電話が鳴ってる?


 上着のポケットからスマホを取り出して画面を見ると、知らない番号からの着信表示だった。

 非通知や知らない番号からの着信は出ない。あとでネット検索して、迷惑電話かどうか調べることにしている。


 十秒ほどして電話は切れた。

 よし、番号を覚えて検索してみ……


「つかぬことをお聞きしますが、キクチサエコさんをご存知ですか?」


「……え?」


 声の方に顔を向けると、お巡りさんは受話器を既に戻していて、私を静かに見ていた。


 お巡りさんが私に見せてきた紙きれ。そこに書かれていた数字だけの羅列は──


 私の電話番号だった。

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― 新着の感想 ―
全くの赤の他人だと思っていた落とし物の主が、実は自分の電話番号の書いた紙を持っていた。 これは確かにゾクッとしますね。 言うならば見知らぬ相手から距離を詰められたような感じでしょうか。
わぁ、これは怖いですね。 どんな風な結末になるのか、ホラーだけに様々想像しながら待っていますね。 読ませていただきありがとうございました。
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