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積み上げた積み木を崩すように

  海底都市に立つロボの背丈は頭一つ分街の建物よりも大きい。ロボの重量は大神殿をいとも容易く崩した。光る目は異様な不気味さをもつ。金属の体がクラゲの赤い光を反射する。エンジン音のような鈍い音が辺りにこだまする。


 人魚の長老は街を泳いでロボに近づいていた。神官の制止をふるきり単独で泳ぐ。あれほど巨大なロボットを前に策など無い。通用する筋力も魔法も皆無。しかし、じっとなどしていられない。


 この街を守るのが己の役目。義務感ではなく魂が体を動かす。この街で産まれ育ち守ってきた。愛着は誰よりも深い。そんな街がおもちゃのように壊される。恐怖よりも怒りが勝る。


 あのロボと比べ自分の握った拳の小ささに悔しさがこみ上げてくる。ちっぽけな自分にも腹が立つ。そんな自責の感情すら前に進む原動力にする。わかってるこの行動が現状を変えられないことは…。


 でも自分の家(海底都市)を家族(街の住人)を傷つけられて黙ってなどいられない。通用しなくてもぶつからなくてはならない。退いてはならない。


 この拳が砕けることになっても一発ぶん殴ってやらないと気が晴れない。長老は尾に力を込めて加速する。拳にも力が入る。


 ロボが動き出した。一歩を踏み出す度に地面がゆれる。周囲の建物がカタカタと震える。都市中央の大神殿を破壊し北へ歩む。そこにあるのは時計塔だ。ロボの目的地がそこなのかはわからない。建物を無視して破壊する。


 住宅は瓦礫へと変わる。飛び散った破片が泡と舞う。長老の視界はまだその光景をとらえていないがもしも目に入れば彼女の怒りは限界を迎えるだろう。


 積み上げた積み木を崩すように建物が倒壊していく。そこに根付いた思い出もろとも崩す。


 踏みつけられた食卓、家族写真、家具も衣服も押し潰される。無感情なロボの表情がそこにあったはずの家庭の温もりと対比する。一定の速度でロボは歩みを続ける。


 大神殿の跡地まで長老は泳ぎ着いた。ロボの背中と無惨に破壊された日常が見える。長老の両の手に水の渦が巻く。長老は思い切り腕をつき出す。水は光線のようにロボの背中に当たり、虚しく飛散する。


 人魚の長老は尾びれを目一杯ふるい泳ぐ。両の拳に炎を纏う。ロボの背中に次は直接炎の拳を突き立てる。一発、二発、三発…金属を叩く音だけがこだまする。ロボは長老にはお構い無しに歩みを続けている。


 放った拳に伝わる痛みなど長老は感じない。涙と鼻水が溢れ心だけが傷ついた。長老の怒りに反応するように炎の勢いが増す。怒りはやがて懇願に変わる。


「やめてくれ、やめてくれ、もうこれ以上、この街を傷ついけないでくれっ!私たちの居場所を奪わないでくれぇぇええ!!」


 心の叫びが口をつく。溢れる涙と鼻水が抑えきれない感情を物語る。


 ロボの動きが止まる。その直後ロボは半回転する。長老が気づいた時にはロボの左の拳が長老の半身に当たる。衝撃で脳が震える。何が起きたか理解する前に意識が飛ぶ。


 そのまま身体ごと吹き飛び長老は近くの民家に叩きつけられる。意識のないまま建物を落ちていき地面に彼女の身体は叩きつけられる。人形のように長老は動かなくなる。微かに上下する肩が生存を知らせる。


 ロボは再び元の方に向き直り無表情に歩みを続ける。地面を揺らす振動が長老の身体を微かに揺らせていた。


 


 

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