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レーザー光線

 海底都市に鳴り響く鐘の音が夜を裂く。街の人々は様子を伺う。大神殿上空に現れた鉄の円盤。誰もが息をのみ、視線を宙に向ける。


 神官たちが大神殿付近の住人に避難を呼び掛ける。寝ぼけたままの我が子を抱えて逃げる母親。隣家の老人に手を貸す男。転ぶ子供。悲鳴を上げる若い女性。

 人間も人魚も海底都市の住人は皆パニックになって逃げ惑う。


 大神殿の屋上には人魚の長老と護衛の神官が一人、円盤の様子を伺う。下手に手出しはできない。攻撃すれば反撃される恐れがある。ここではまるでこの街全体が人質にされたようである。


 人魚の長老の長い黒髪が波に舞う。真剣な眼差しが緊張感を煽る。長老と神官の耳には魔道具のイヤリングが光っている。装着者同士がテレパシーで会話できるという道具だ。ソラやオト、彼らを護衛する三人の神官も装備している。


 上空の円盤がソラの世界の空想上の乗り物であるという連絡はうけている。しかし、未だに目的は謎。UFOが現れてすでに三十分は経過している。街の人々の避難も完了している。


 それでも緊張感は続く。張り詰めた空気が海中の水を揺らす。発光するクラゲたちは赤く輝き警告を告げる。


 円盤から離れた所で避難した人々が事態を眺める。不安の顔が並んでいる。


「アレは何?」

「いつになったら帰れるの?」


 何一つわからない進展しない状況に不満が出始める。責任者の神官は困り果てなだめることしかできない。


 円盤から響く機械音が一定間隔で唸りを大きくする。その音は人々の身体に響き心臓の鼓動を速くする。


 生き物の拍動のように唸りを続ける円盤。鳴りやまない危険を報せる街の鐘の音。恐怖を煽る合唱は住人の精神を蝕む。


 一瞬、静寂が訪れる。円盤の拍動が止む。次の瞬間。闇に包まれた海底都市に一筋の光の線が走る。円盤から出た光りは真っ直ぐに避難している人々の元に届く。


 その光線は一人の住人を捕らえる。一瞬の出来事に周りの人々は事態を呑み込めない。気づいたときには次々に光の線が人々に当たる。円盤からは無数の光が蜘蛛の糸のように伸びる。


 光線は確実に人々を捕らえ命中する。遅れて悲鳴が轟く。次々に光に包まれ周りの人が"消える"。安否を心配する間もなく襲いかかる光線。逃げ惑う人々の背中に光の線が容赦なく当たる。


 光線を浴びる人々とは別の位置にいたソラたちは呆然と立ち尽くしている。海中を漂い眺めることしかできない。何が起きてるのか理解できない。


 レーザー光線を思い起こさすその光に、遠くで眺めるソラはあの光の先で起きている惨劇を想像する。おもわず目をつむり首をふる。


 大神殿の屋上には先ほどまで居た長老の姿はなかった。人魚の長老は必死に尾びれをこぎ、光の先へ向かう。手から水魔法を操り推進力にしている。避難者を先導させた神官とも連絡が取れない。不安が長老の背を押し急かす。


 一瞬の静寂。光線は止み、悲鳴も消えた。まるで夕立が去ったように辺りは静寂を取り戻す。しかし、円盤の機械音が辺りを包む。


 長老が急いで被害の状況を確認する。先ほどまで避難者が集まっていた広場には誰もいない。人間も人魚も大人も子供も人影はない。


「なんだこれは…!?」



 長老は目の前の光景に疑問が口をついた。広場には白い影がうごめく。感情の読めない赤い瞳が長老を見つめる。


 人影がなくなった広場には跳ね回る"ウサギ"の群れの姿があった。

 


 


 


 

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