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鉄のクラゲ

 海底都市の上空に得体の知れない何かが漂う。見張りの神官が形容したように鉄のクラゲに見える。


 巨大な体が大神殿を覆うように影を作る。金属の物体の下部が発光している。機械的な体と人工的な光は幻想的な世界とは対極の存在だ。唸るような音が海中を震わせている。


 ソラは人魚のオトとイルカのスズキさんと共に大神殿を離れていた。三人の護衛がつく。オトは自力で泳ぎソラはスズキさんの背にのってついていく。


 街の端までたどり着き振り返る。クラゲの全貌が見える。オトが眉を寄せ不審な顔をする。神官たちも不安を顔に出す。ソラは目を見開く。


 知っている。鉄のクラゲじゃない。あれは空想上に存在している。楕円形のあのフォルム、メタリックな見た目。ソラの脳裏に子供の頃見た映像がよみがえる。あれは…、


「ーーUFOだ。」


 おもわず口に出たソラの言葉にオトは「えっ?」と反応する。


「アレを知ってるのソラ?」


 ソラは首を横にふる。頭を抱えなんと説明したらいいか思考を整理する。しばらく悩み、そのまま言うことに決める。


「知らない。アレがなんなのかはわからない。

 でもアレと似た存在は知ってる。でもそれもぼくのいた世界の空想上の存在なんだ。」


 ソラの言葉にオトの顔はさらに困惑する。ソラは補足する。


「アレはぼくらの世界では未確認飛行物体(UFO)って言う乗り物なんだ。宇宙人の乗る…。」


「ーー宇宙人!?」

 

 突拍子もないソラの回答にオトはおもわず声が大きくなる。その声に二人を守るように前に出ていた神官が振り返る。オトは何でもないというように手をふる。


 オトは神官たちが目線を戻すと小声でソラに語りかける。


「もう少し詳しく話して。アレはソラの世界では空想上の…物語なんかにでてくる存在なの?」


 ソラはうなずく。


「そうだよ。映画とかで見たイメージにそっくり。アレに宇宙人が乗ってるんだ。

 映画なんかだと目的は侵略。宇宙人が地球の資源や土地を狙って宇宙戦争が始まるんだ。」


 そう言ってソラは右手で口を押さえる。オトは戦争…と口にだし表情が曇る。ソラは慌てて両手をふる。


「フィクションの話だよ。それにアレがUFOだって決まったわけじゃないし…。似てるなぁってだけ。」


「でも、魔王になるかもしれない人はソラと同じ世界から来たんだよね?

 だったら、その人はあの宇宙人の船を知ってる。あの船をイメージできるんだよ。」


 その言葉にソラはハッとする。背筋が凍り冷や汗が出る。心臓が脈打つ速度も上がる。


 アレは魔法…。天才作家"久遠蒼真"の造り出したイメージの具現化。ソラの不安は加速する。何をする気か想像もつかない。


 海底都市は夜中だというのにクラゲたちが群れをつくり街を照らす。クラゲたちの危険信号のような赤い光は人々の不安を煽る。いつもなら寝静まる時間、街の人々は眠れぬ夜を過ごす。


 都市の端に二つの影が立つ。二人は金属の船の発する光に目を細める。黒いローブとメイド服が海中を揺れる。



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