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どんな魔法よりも優れている。

 大神殿の屋上でランプが右に左に浮遊する。ソラの手の動きはそれを指揮するように動く。重力を操り物体を飛ばす月の魔法。


 ソラのセンスは抜群だ。長老はその才能に興奮と驚き、そして底知れぬ恐怖を感じる。オトの視線はランプを追い笑みが浮かぶ。


 最後にソラが手を引くとその手元にランプが収まる。オトが思わず拍手する。ソラは歯を見せ少しはにかむ。


 長老は時刻を確認する。日付が変わるまで一時間。ここまでだな長老は心の中で呟く。そしてソラに告げる。


「冥月王が眠りにつくまで一時間を切った。魔法の訓練はここまでにして事態に備えて今は休もう。」


 ソラはうなずく。魔法の訓練は思ったより疲労が残る。普段使っていない筋肉を使ったような疲労感。自然と一息もれる。


「さて、少年が言う"魔王"がいつ動き出すか…

 できれば、日付が変わってすぐには動いてほしくないな。少しでも時間がほしい。」


 そう言う長老の顔はこわばっている。ソラはすぐに訂正にはいる。


「その魔王が、あの人が現れるっていうのは僕の勘で…。なんの根拠もないというか…。そんな気がするってだけで」


 自信なさげに言うソラ。長老は上を向く。眼差しは遠くを眺める。


「これは私の考えだがな少年。

"勘"はどんな魔法よりも"優れている"。特に恐怖に根付いた勘はな。人間の本能に直結した根元的なものだからな。」


 長老の言葉にソラは息をのむ。呼吸が乱れ心臓の鼓動が恐怖を煽る。


 圧倒的文才をもつ男のイメージ力が世界を改変していく。子供がイタズラに積み木を崩すように世界のバランスを崩していく。あの"天才作家"の姿はソラの想像の中では魔王よりも神に近く感じられた。




 ーーソラは大神殿の一室で仮眠をとっていた。緊張で眠れないかと思われたが慌ただしい1日の疲れがソラの意識を飛ばした。


 深い呼吸に合わせてソラのお腹は上下する。このまま朝を迎えられればなんと幸福なのだろう。しかし、現実はそうはいかない。


 深夜の海底都市は静まりかえっていた。一部の者たちは世界の危機に備え身構えていた。大神殿の警備が強化される。


 どんな危機が訪れようと異界者であるソラはこの世界の命運を握る存在だ。なんとしてでも守らねばならない。


 警備には神官たちのほか街の人々も参加し夜通し交代で行われる。皆が家族や大切な人のことを考える。"世界の危機"漠然とした言葉だが過去数百年繰り返されてきた事実が恐怖を煽る。


 日付が変わる。街に変化はない。だが、緊張は続く。一秒一秒が長く感じる。


 仮眠室でソラは深い眠りに入ろうとしていた。寝息をたてて眠るソラの鼓膜を鐘の音が揺らす。昼間聞いたのと同じ鐘の音だ。ソラはおもわず飛び起きる。


 部屋の外が慌ただしい。ソラは部屋をでてオトを探す。仮眠室を警備していた神官がソラを止め落ち着かせる。深く呼吸を吸って気持ちを整える。


 ソラは少し冷静になり神官に状況を確認する。神官も事態をあまり把握していないようだ。外の見張りからうけた連絡をそのまま伝えると前置きして話し出した。


「海底都市上空に……巨大な鉄のクラゲが現れた。」


 

 


 



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