第1話:また一人、勇者が消えた。開始3分で。
## 第1話:レベル0、スキル火花、初出撃3分で死亡
城門を出て森の小道を歩き始めてから、まだ3分も経っていない。
「勇者様、この先にスライムが出ることがあります。でもご安心を、我々がおりますから」
盾を持った兵士がそう言った瞬間、足元でぷるぷると青いゼリー状の物体が震えた。
「出たな、スライム!」兵士が剣を抜く。
俺も構えようとしたが、そのスライムを見て愕然とした。普通、スライムって雑魚敵じゃないのか?なのにこいつ、俺の腰の高さまである。しかも妙に素早い。
「うわっ!」
スライムは兵士に体当たりし、盾を軽々と弾き飛ばした。兵士は木に激突してぐったりしている。
「嘘だろ……」
俺は慌てて「火花」を使おうとした。指先に小さな炎が灯る。スライムに向けて放つが、火花は途中で消えてしまう。
「効かない……」
スライムがこちらを向いた。なんだあの殺気は。目なんてないのに、確実に俺を敵として認識している。
「やばい、やばいやばい——」
逃げようとしたが足がもつれる。スライムは飛び跳ねるように俺に向かってきた。避けられない。体当たりを受けた瞬間、全身の骨が砕けるような衝撃が走った。
「がっ……」
視界がかすむ。これ、死ぬやつだ。まさか異世界に来て3分で死ぬなんて。勇者とは何だったのか。
意識が遠のく中、頭の中に女性の声が響いた。
『まだ、諦めないで』
誰だ……?
『あなたなら、きっと——』
声は途切れ、俺の意識は闇に沈んだ。
250528 16:20
第1話:レベル0、スキル火花、初出撃3分で死亡 より タイトル改題