第0話:また一人……、勇者が誕生した。1847人目の勇者が。
異世界×勇者×ループ構造です
## 第0話:その日、俺は神に選ばれた。冗談じゃない
コンビニでバイトを終え、夜道を歩いていた俺、佐藤ユウトの人生は突然終わった。トラックのヘッドライトが視界を真っ白にして、次の瞬間には——
「おお、目覚めましたね!選ばれし勇者よ!」
俺の目の前に、まるでファンタジーゲームから飛び出てきたような白髭の賢者がいる。周りを見渡すと、石造りの立派な部屋に神官らしき人たち、そして美しい姫君まで。全員が俺を見て感動の涙を浮かべている。
「待て待て、何だこの状況」
内心パニックだが、賢者は構わずに続ける。
「この世界は今、魔王の脅威に晒されております。あなたこそが予言に謳われた救世主。我々の希望なのです!」
姫が俺の手を握り、潤んだ瞳で見上げてくる。
「どうか、この世界をお救いください」
俺の脳内は大混乱だ。異世界召喚?勇者?魔王?まるで深夜アニメの設定じゃないか。しかも俺は高校も中退寸前の、コンビニバイトで食いつなぐダメ人間だ。勇者なんて柄じゃない。
「えーっと、その、俺でいいんですか?見た目普通だし、運動もできないし——」
「謙遜なさらずとも!」賢者が大きく頷く。「まずは神から授かりし力をお選びください。初回特典として、三つの能力から一つをお選びいただけます」
目の前に光る文字が浮かび上がった。
【スキル選択】
1. 火花(指先から小さな火花を出す)
2. 読唇術(他人の口の動きを読める)
3. 探知(超短距離だけ敵感知)
「……これ、微妙すぎない?」
どれも世界を救えそうにない。でも選ばないわけにもいかないだろう。消去法で一番攻撃っぽい「火花」を選んだ。
指先に小さな火がともる。しょぼい。マッチの方がマシだ。
「素晴らしい!炎を操る力!」賢者は大袈裟に手を叩く。「では早速、魔王討伐の旅に出発いたしましょう!」
「ちょっと待てよ、まず説明を——」
俺の抗議も虚しく、あれよあれよという間に装備を渡され、護衛の兵士と共に城から押し出された。外は見事なファンタジー世界だが、俺には現実味がない。
「帰りたい……」
小さくつぶやいたが、もう遅い。勇者ユウト、レベル0、装備は初期装備、スキルは火花のみ。こんな状態で魔王と戦えと言われても、無理に決まってるじゃないか。
でも選択肢はない。とりあえず歩くしかないのだ。この、どう考えても詰んでいる状況を、どうにかして……。
250528 16:17
第0話:その日、俺は神に選ばれた。冗談じゃない より タイトル改題