第9話「俺たちの決算説明会」
【冒頭:やすらぎ荘・集会室】
ホワイトボードに大きく書かれた文字。
《第1回 やすらぎファンド 決算説明会》
誠:「今日は、皆さんで“投資の結果”を振り返る会です」
全員が真剣な表情で座っている。
中西:「プレゼンの準備は、できとる」
山根:「失敗した話なんて、あんまりしたくねぇけどな」
トミ:「でも、それが一番大事なのさ」
名倉がホワイトボードの脇から顔を出す。
名倉:「発表者には特製カレーせんべい進呈。涙をぬぐってから食べてくれ」
一同、くすりと笑う。
***
【プレゼン:中西】
中西:「……インド株は好調だったが、通貨変動に翻弄された」 「配分を間違えた。“広く分散”のつもりが“あいまい”になっていた」
誠:「勉強になります」
中西:「ワシはな、過去の自分にこう言ってやりたい。“ヒマラヤ見ても投資先は決まらん”と」
拍手。
***
【プレゼン:トミ】
トミ:「介護系株、悪くない流れだった。ただ、“持ちすぎ”た」 「不安だからって、同じ系統に偏るのはリスクってわかったよ」
誠:「ポートフォリオのバランス、大切ですね」
トミ:「バランスが一番難しいんだよ。人間関係も、恋愛も、株もね」
春香が噴き出す。 「トミさん、それ全部経験談ですよね?」
***
【プレゼン:山根】
山根:「正直、オレはノリで選んだ。言い訳はしない」 「でも、“自分で選んだ責任”っての、わかった気がする」
誠:「それが一番大きな学びだと思います」
山根:「ただな……買ったその日から下がるって、あれ呪いか?って思ったぞ」
一同笑い、拍手。
***
【プレゼン:小倉】
小倉:「私の選んだ企業は、業績も安定していましたが——」 「“安心できるもの”しか選べなかった。それが限界でした」
春香:「でも、その“限界”をわかってるのが、すごいと思います」
小倉:「……ありがとうございます。言えて、少し楽になりました」
***
【誠のまとめ】
誠:「今日、皆さんの言葉を聞いて、“投資は結果だけじゃない”と改めて思いました」
「学び、反省、そして何より“責任”を持つこと——それが、皆さんを投資家にしている」
一同が静かにうなずく。
名倉:「プレゼンしたからには、今夜はカレーうどんだぞ。汁が染みるぞ、覚悟しろ」
山根:「もう心に染みてるわい!」
笑い声が部屋に広がる。
***
【ラスト:ホワイトボードの下に貼られた紙】
そこには新しい文字が書かれていた。
《やすらぎファンド 第二期 始動》
その紙を見て、誠がふっと笑う。
「じゃあ、次の作戦名、考えましょうか」
──次回へ続く。