表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポーション必要ですか?作るので10時間待てますか?  作者: chocopoppo
第一章 疲労回復のポーション
2/24

第2話 資格取得して良いですか?

Q3:松本はライセンス協会で怒りを覚えた。何故か?



「らっしゃせー」


ライセンス協会に入ると、気の抜けた声と入店チャイムが松本を出迎えた。

内部をきょろきょろ観察する松本に対し、受付カウンターの女性は気怠そうに手招きする。


「お客さん、とりあえずそこ。座んなよ」

「どうも」

言葉が通じるか少し不安だったが、普通に日本語のようだ。松本は安堵する。


勧められるままに対面に座り、松本は顔をしかめた。

女性は全身を短い茶色の毛で覆われており、顔つきからどこか猫のような雰囲気を感じ取れる。

もっとも、問題はそこではない。身体的特徴に触れるのはデリケートな問題になりかねないのだから。


問題は女性の服装だ。どこぞの如何わしいバーかと思うような、はだけるにしても限度があるような恰好をしている。

松本は決して女性嫌いというわけではないが、しかしTPOには人一倍厳しい男であった。

こちらは真面目に話を聞きに来ているのだ。仮にも協会というのなら、その構成員として協会の品位を落としかねない行為は慎むべきではなかろうか。

人間の第一印象は見た目、それも清潔感がものを言う。窓口なら真っ先に気を付けるべきだろう。


松本は密かに憤ったが、勿論顔には一切出さない。社会人ならばそうすべきだし、松本は社会人として当然の技能は会得している。



Q3:松本はライセンス協会で怒りを覚えた。何故か?

A3:窓口業務の職員の身だしなみが乱れていたため。



「で、今日は何の用?」

「ええ、日本からこっちに来ちゃったみたいで。同じ日本人のサイトウって人に、ここに行くよう勧められてさ」


服装だけでなく態度も悪いな、と松本は内心舌打ちをした。

そして、(これはほぼ無意識的に行っていることなのだが、)即座にミラーリングを行い相手の口調をトレースする。


ミラーリングは相手の仕草や口調に合わせることで、相手との距離を近づけ、親近感を与えるコミュニケーションテクニックである。

社会人であれば有効な場面は少なくないし、松本は社会人であるから、当然の技能として会得している。



「あー、ニホンジンね。ニホンだかニッポンだか知らないけど、まあ飽きずによく来るねぇ」

「ははははは」乾いた笑い。

「異世界から来る人ってのは少なくないけど、どれもこれも口揃えてニホンジンだ。……と、まあとりあえず、こっちの『ルール』を説明しとくよ」



そして、女性はこの世界に関する簡単な概略を説明してくれた。要約するとこうなる。


日本人はこの世界を『アナザー』と呼んでいる。人間以外の種族の割合が多く、多種多様な種族が暮らしている。俗にいう『魔法』も存在する。

狡猾で凶暴な種族や野生動物も存在しており、平たく『モンスター』と呼称されて駆除の対象になったりする。

ここはレナス大陸の辺境に位置する城下街で、そこそこ栄えている。

レナス大陸においては『ライセンス』制度が導入されており、個人の能力は全てライセンスにより評価される。



「……で、ここライセンス協会では、あらゆるライセンスの検定・認可が行われてるってわけ。今の時代、ライセンスがないとまともに就職も出来ないし、最初にここに来るってのは正しい選択だねぇ」

「なるほど……ホントに資格試験みたいなもんか」

「とりあえず、ライセンス取得のための総合試験から受けとく? 最初は初級だから、簡単な適性検査だけで終わりだよ」

「いや、待ってくれ」


用紙を取り出しかける女性を、松本は手で遮った。

世界についての説明は話半分に聞いていたが、ここは100%説明してもらわなければ。


「前例もあるようだから分かってるだろうけど、俺はこっちに来たばっかりで金銭は持ってない。後になって試験費用を請求されても困るんだけど、そのあたりはどうなってるの?」

「あー、そこ聞く? 急に目の色変わったね。これは国の制度も関係してる話だから、後で言おうと思ってたんだけど……」

「先に説明してくれ。ついでに国家の名前も教えて」

「いやそれはさっき説明したよ? お兄さんが聞いてなかっただけで」


呆れたような顔をしつつも、女性は説明を続ける。


「ここはエトールって国の城下町なんだけど、エトールではお兄さんみたいに、ニホンから来る異世界人が後を絶たないの。身元不明、住所不定の異世界人なんて気味が悪いし、治安も悪……くはなってないんだけど、まあとにかく気味が悪いでしょ。犯罪を起こされても困るってことで、ニホンジンには就職支援目的で、ライセンス試験料と当座の生活費に相当する補助金が支給されることが法律で決まったの」

「ふむふむ……」

無意識にメモを取ろうとしたが、あいにく手元にはペンも紙もなかった。


「内訳は、試験料の100,000レナスと生活費50,000レナス、合わせて150,000レナス。これを異世界からやってきた人には見舞金として無償で支給する代わり、その後の生活には一切関与しないってことね」

「15万……レナス。ええーっと、この国の平均初任月給はいくらぐらい?」

「えっ、どれぐらいだろう……分かんないけど、大体20万レナス前後じゃないかな?」

「なるほど」


大体1レナス=1円換算で良さそうだ、と松本は頷く。15万の見舞金なら十分とも思えるが、全く見知らぬ土地で生活するには心もとない気もする。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ