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奈落の影  作者: ナラク
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第10章 - 新たなる出発

第9章 - 新たなる出発

健太たちは、リムの導きでついにエアリアスの町にたどり着いた。

壮大な城壁に囲まれたこの町は、王都と呼ばれるにふさわしい賑わいを見せている。

町の入口に立ち、健太はその圧倒的な光景に息をのんだ。商人たちが行き交い、町中には活気と興奮が満ちている。

リム、健太、そしてノキアに加えて、アジトから解放された人々も一緒に町に到着していた。

彼らは疲れきった表情を見せていたが、自由の喜びに満ちた様子も感じられる。

「まずは、盗賊のアジトから持ってきた品を換金しよう。」リムが静かに言った。彼女は顔にかかるフードを深くかぶり、周囲の視線を避けるように歩いていた。その様子に気づいた健太は、彼女の表情が見えないことに不安を覚えたが、あえて何も言わずに従った。

町の中央に位置する広場には、大きな市場が広がっており、そこでは様々な品が取引されている。健太たちは市場の片隅にある質屋に足を運び、盗賊のアジトから持ち帰った品々を一つ一つ確認しながら換金していった。

リムが交渉を行い、得られた金額は予想以上に高額だった。

「これでしばらくは生活費に困らないな。」健太がほっとした表情を見せる。

「そうね。それに、装備や服装も整える必要があるわ。」リムは落ち着いた声で答えたが、その口調にはどこか疲れが感じられた。彼女の視線はどこか遠くを見つめており、彼女自身もその火傷の跡を意識していることが伝わってきた。

ノキアも市場の雑踏の中で静かに立っていた。彼女は旅の疲れからか、少し無口になっていたが、その瞳には決意が宿っていた。

「新しい服を選びましょう、リム。きっと気分も少し楽になるわ。」ノキアが優しく声をかけた。リムは驚いたように彼女を見つめたが、やがて小さく頷いた。

新しい装備や服装を揃えるために、健太たちは市場を巡った。健太は質の良い革の鎧を購入し、リムには軽くて動きやすい服を選んだ。ノキアも新しいドレスを選び、彼女の顔に少し笑顔が戻った。リムは鏡を避けるようにしていたが、健太の勧めで新しいマントも購入し、そのフードを深く被った。

その後、アジトから解放された人々にもしばしの別れを告げた。

彼らはエアリアスの中でそれぞれの道を歩み始めることになったが、健太たちに感謝の言葉を何度も繰り返した。ノキアは、その別れの瞬間に涙を流したが、それでも前に進む決意を胸に秘めていた。

「これからギルドにも行かないとね。でも、急がなくても大丈夫。リムも準備ができたら、一緒に行こう。」ノキアがリムに向けてそっと声をかける。彼女の言葉には、リムを気遣う優しさが滲み出ていた。リムはノキアの気遣いに感謝しながら、小さく頷いた。

ギルドはエアリアスの一角に位置しており、広い建物の中には多くの冒険者が集まっていた。大きな掲示板には、様々な依頼が貼り出されており、それぞれの難易度や報酬が記されている。冒険者たちは自分のランクに応じて依頼を選び、受付で手続きを行っていた。

健太とノキアは、まずはギルドのカウンターに向かい、自分たちの銅クラスの登録を済ませた。受付の女性は彼らに優しく微笑みかけ、「頑張ってね」と励ましの言葉をかけたが、その後ろでリムは緊張した面持ちで待っていた。

リムはシルバークラスだったが、護衛任務の失敗により降格が決まっていた。彼女はギルドの規則に従い、再び銅クラスに戻ることを受け入れた。

彼女が受付で報告を行うと、受付の男性は短く「残念だね」とだけ言い、リムに新しい銅クラスのバッジを渡した。

「依頼の難易度は、冒険者のランクによって制限される。銅クラスの冒険者は、簡単な依頼しか受けることができない。低賃金だが、経験を積むには良い機会だ。」受付の男性は説明を続けた。「シルバークラスに昇格すると、依頼料だけでなく、国から一定額の金銭が支給される。しかし、今はまずは目の前の依頼を確実にこなすことが大切だ。」

リムはその言葉に黙って頷き、銅クラスのバッジをそっとポケットにしまい込んだ。彼女の顔には複雑な感情が浮かんでいたが、それを健太に見せないように努力していた。

「これから、少しずつ取り戻していけばいいさ。」健太がリムに優しく言った。

リムは少し驚いたように彼を見上げ、そして小さく微笑んだ。「そうね。頑張るわ。」

新たな冒険が始まることを感じながら、健太たちはギルドを後にした。彼らにはこれから多くの試練が待ち受けているが、今は一歩一歩進んでいくしかない。それぞれの心に新たな決意を抱きながら、彼らはエアリアスの町の中を歩き出した。


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