第6章:未知の敵
健太とリムは、小川での安息を後にして、再び町に向けて歩き始めた。
だが、道は次第に暗くなり、霧が立ち込める中、視界がぼやけ始めた。辺りの静けさが不気味に響き、二人の心に不安が募っていった。
「霧が…急に濃くなったね…」リムの声には不安が混じっていた。
健太も同じ異様な空気を感じ取っていた。
胸の奥で警鐘が鳴り響くような感覚が広がり、全身が固まるような緊張感に包まれた。
何かが、すぐ近くに潜んでいる。その存在は、ただの脅威ではなく、圧倒的な力を持つ何者かだった。
突然、二人の周囲の空気が一気に重くなり、その重圧の為に健太は息苦しささえ覚える。。
まるで空気そのものが重く圧し掛かってくるようで、全身が硬直し、動けなくなった。
「これは…何だ…?」健太は心の中で叫びながらも、声を出すことすらできなかった。視界の片隅に黒い影が揺らめいたかと思うと、その瞬間、彼の首筋に冷たい感触が走った。
いや、実際には得体のしれない何者かの殺気が首筋に当てられたのだ。
それは一瞬の出来事だった。
健太は、何かが目の前を通り過ぎたような錯覚を感じたが、それが何であったのかすら理解する暇もなかった。
彼の全身が凍りつき、呼吸さえも止まりそうだった。
リムもまた、その異様な空気に飲まれ、全身が震えていた。彼女の呼吸は浅くなり、冷や汗が額を伝って流れ落ちた。
恐怖が喉を締め付け、声が出せない。
「これが…死というものか…」健太は瞬間的にそう感じた。
目の前の存在が放つ圧倒的威圧感に、全身が支配され、まるで自分の命がもう尽きようとしているかのように思えた。
やがて、霧の中から巨大な黒い影が現れた。
その姿は、まるで闇そのものが形を成したかのように、漆黒の甲冑に包まれ、巨大な剣を握りしめていた。
甲冑の隙間から覗く目は、冷たい氷のように鋭く光っていた。
「お前が…あの方と同じ存在か…」低く、冷たい声が響き渡った。
健太はその声にさらに体が強張り、何も返事をすることができなかった。目の前の騎士の剣は、まるで光を切り裂くかのような速さで動き、彼の首筋に触れていた。
剣の動きは一瞬で、目にも留まらない速さだ。
健太はそれがどのようにして自分に迫ってきたのかすら理解できていない。
「この剣の重みがわかるか?お前は、この力に耐えられるか?」黒い騎士の声は低く、だがその言葉には確かな威圧感が込められていた。
健太は剣の冷たさを肌で感じながら、恐怖に押しつぶされそうになりながらも辛うじて耐えていた。
彼の全身は恐怖に凍りつき、わずかに震えている。
「まだその力を完全に制御できていないようだな…」騎士は健太を見下ろしながら、冷たい目で彼を評価しているかのようだった。
「今のままでは、遊び相手にすらなりえん。
成長するがいい、そして再び我が前に現れるのだ。
その時、この剣をもって、存分に相手をしてやろう」騎士は冷酷に言い放った。
その言葉が終わるや否や、騎士は再び霧の中に溶け込むように姿を消した。
まるで最初からそこに存在しなかったかのように、静寂が二人を包みこむ。
健太はようやく体を動かすことができるようになり、息を吐き出す。
リムも同じように、全身から力が抜けて倒れそうになっていたが、何とか踏みとどまった。
「あの方と同じなのかとは何のことだろう…」リムは恐怖に震える声で呟いた。
健太とリムは、再び進むべき道を探し始めたが、その心には深い不安と疑念が残ったままだった。
彼らは、これから何が待ち受けているのかを知らないまま、ただ前に進むしかなかった。