表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
桜の朽木に虫の這うこと  作者: 朽木桜斎
第2章 出会い
25/82

第24話 思索の時間

 俺はいま、夢を見ているんじゃないだろうか?


 あのとき、あのおそろしい魔王桜(まおうざくら)に出会ったとき、俺はすでに死んでいて、いま体験していることは、彼岸(ひがん)での出来事なのではないだろうか?


 お師匠様、アクタ……


 早く、会いたい……


 二人とも無事なのだろうか?


 いや、無事でなければダメなのだ。


 あの二人に何か起こるだなんて、俺にはとうてい耐えられない。


 どうか、無事でいてくれ……


 いや、待てよ。


 俺がもし本当に死んでいて、二人が存命であるのなら、俺たちは永遠に会えないことになる。


 いっそ、そのほうがよいのか?


 でも、会いたい……


 くそっ、なんなんだ、このトンチ問答は?


 循環論法にはまってしまいそうだ。


 落ちつけ、違うことを考えよう。


 ふう……


 真田虎太郎(さなだ こたろう)くん。


 俺は心のどこかで、彼を見下していたのではないのか?


 こんな子どもに、何がわかるのかと。


 しかし、あの子は確かに答えた。


 問いかけるという形で。


 蝶になることにではなく、這うことに意味があるのではないか、と。


 這うこと、這いつづけること、か。


 それが人間という、存在なのではないか?


 蝶になれたら、そのあとには何があるというのか?


 這うことに意味があるという命題は、(しん)なのではないか?


 俺は耐えられるのだろうか?


 「毒虫」として這いつづけることに……


 南柾樹(みなみ まさき)


 俺はなぜ、あの男にアクタを重ねたのか?


 あんなうさんくさい、いけ好かないやつに。


 気に入らない、あの男のすべてが、その存在が。


 待て、落ちつけ。


 存在を否定してはいけない、それだけはダメだ。


 どんな存在にも、他の存在を否定する権利などないはずだ。


 いまの俺は冷静ではない、とりあえず落ちつくんだ。


 彼にはどこか、「影」のようなものがあった。


 確かにそれを感じた。


 そこに何か、アクタが重なった秘密があるのかもしれない。


 星川雅(ほしかわ みやび)


 彼女は魔物だ。


 おそらく内面は、あの表面以上に。


 決して立ち入ってはならない領域が、彼女の中にはある。


 立ち入れば、あるいは……


 あの女からは、聴きださねばならないことが山のようにある。


 魔王桜、アルトラ、そしていま俺を閉じこめるこの空間。


 その元締(もとじ)めである「組織」の正体とは、いったい?


 ただでさえ混乱しているのに、さらに情報を集める必要があるのか。


 くそっ、もどかしい……


 そして、真田(なさだ)さん


 真田、龍子(りょうこ)さん。


 真田さん、真田さん……


 ん、なんなんだ……この感覚は?


 頭の中が、真田さんでいっぱいになる。


 彼女の容姿が、そのやさしさが、俺の心を埋め尽くす。


 なんだか……変だ、俺。


 なんなんだ、これ……


 体がほてってくる……熱い……


 心が、満たされてくる……ああ……


 わからない、わからない、が……これは……


 真田さん、真田さん……


 真田――


 わけがわからない……


 人間は、難しい……


 はあ……


 こんなふうにして、ウツロはしばし、思索にふけった。


(『第25話 昼食への勧誘』へ続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ