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十一話 二度目の裏切り

 そういえば、ご近所さんなのに一華ちゃんの姿を見ないなぁと思っていたのだが……その理由がようやく分かった。


「髪の毛、染めたんだね」


「んっ? そうだよ。二年くらい前に染めたかな?」


 厳密に言うと、俺はこの子をたびたび見かけていた。

 しかし、髪の毛を染めている上に、体も大きくなっていたので、一華ちゃんと認識できていなかったのである。


 近くでしっかりと見たら、幼い頃の面影があると分かるけど……少し距離が離れたら、彼女だと分からない。それくらい成長して変化している。


「大きくなったね。もうすっかりお姉さんだ」


「……たくみにぃ、もしかして子供扱いしてるでしょっ。わたし、もう中学三年生なんだからね?」


 褒めたつもりだったけど、一華ちゃんはどこか不満そうである。

 ほっぺたを膨らませて、抗議するように睨んでいるけど……愛らしい顔立ちのせいか、まったく怖くなかった。


 やっぱり、俺にとって一華ちゃんのイメージは子供のままだ。

 それを、彼女も感じ取っているようである。


「ほら! おっぱいだってちゃんとおっきくなってるでしょ? 身長はちっさいけど……おっぱいなら、クラスで一番だから!」


 そう言って、胸元を強調するようにぐっと突き出してくる一華ちゃん。

 さすがは花菜さんの娘だと思った。発育が良くて、視線のやり場に困る。


「わ、分かった。ごめんごめん……久しぶりだから、まだ俺の中で一華ちゃんは子供のままだったんだよ」


 謝りながら理由を伝えたら、一華ちゃんも少し溜飲が下がったらしい。


「まぁ……たしかに久しぶりだもんね。最後にオシャベリしたのが小学校5年生の夏休みだったから、あの時以来だもん」


 良かった。なんとか許してくれた。


「詳しい日時まで、よく覚えてるね」


「だ、だって、えっと……わたし、記憶力いいのっ。成績もいいんだよ? 去年の席次、学年で十番以内だったから!」


「おお。それはすごい」


「……えへへ♪ すごいでしょっ――って、違うの! たくみにぃに褒められるのは嬉しいけど、今はそれどころじゃなくて!」


 久しぶりの再会だったので、身の上話ばかりしてしまっていたけれど。

 どうやら一華ちゃんは、緊急に知らせないといけないことがあったことを思い出したらしい。


「何かあったの?」


「うん! えっとね……たくみにぃ、落ち着いて聞いてね? その、今から言うことで傷つけちゃうかもしれないけど……それでも、たくみにぃは知らないといけないことだから、伝えるね?」


 先ほどの緩い表情から一転して、神妙な顔つきになる一華ちゃん。

 よっぽどの出来事があったみたいだ。


 いったい何が起きたんだろう?

 固唾をのんで、彼女の話に耳を傾けた。


 すると、一華ちゃんはゆっくりと……いや、恐る恐ると表現したほうが適切かもしれない。

 それくらい、俺に気を遣った様子でこんなことを報告してくれた。


「たくみにぃの彼女さん……さっき、うちの兄貴とデートしてたの。ほら、駅の近くに……ほ、ホテルがいっぱいあるところあるでしょ? そこで仲良さそうに歩いてて……気になって尾行してたら、ホテルに入って行っちゃったの」


 話してくれた内容は――武史と香里についてだった。

 ホテルというのは、あれだ。俗にいうラブホテルのことだろう。駅の近くにホテル街があるので、間違いないだろう。


「…………」


 まさか、連日で浮気しているとは……そのことに驚くよりも、怒るよりも、なんだか呆れてしまっていた。


 あの二人はやっぱりクズだ。

 一応、俺が体調不良で学校を休んでいる状況で、それを好機と言わんばかりに二人で盛り上がっているらしい。


 まぁ、とはいえ二人が俺を裏切っていることは昨日発覚しているわけで。

 一華ちゃんの報告によって、ショックを受けているというわけではない。


「っ……」


 だけど、二人が交わっている場面を思い出してしまって、急に吐き気がこみあげてきた。


 やっぱり、一日程度でこの傷は癒えていないらしい。

 一華ちゃんの前では、ウソでも元気なふりをしたかったのだが……それは無理そうだった――。

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― 新着の感想 ―
[一言] 香里はクソだな。武史と繋がったんだから、好きでもない主人公と恋人関係を維持している意味が分からん。 一華ちゃんに心も身体も慰めてもらいなさい。 それがいい。
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