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無防備都市  作者: 昼咲月見草
アリョーシア村

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65/89

 案の定、2人が戻ると村ではソウルとトゥインが悪いような話になっていた。

 ウェザがそう説明したらしい。



 ウェザたちが狩りをしているとソウルとトゥインが軍馬と一緒にやって来て、馬と剣で彼らを脅し、魔女の森まで連れて行った。

 そして魔女を怒らせ、ウェザだけが先に送り返された、と。


 神殿勤めの村人が、村までの道の途中で待っていて教えてくれたのだ。


 これを聞いたソウルはトゥインの言った通りだったと受け流したが、そのトゥインはあまりのことに頭痛を覚えた。



 どう考えても頭が悪すぎる。

 すぐにバレるような嘘をなぜつくのか。

 つくにしてももっとマシな嘘をつけばいいだろうに、と。



「あいつらバカなのか? いや、バカだバカだとは思っていたが、俺の理解を超えるバカさなんだが。頭使って生きてないのか? 考えるってことができないのか? なんで生きてるんだ? もう勘弁してくれ!」



 あまりの言いように、ソウルは怒るのも忘れてつい庇ってしまったほどだ。



「いや、多分、大人たちに詰め寄られたか何かして、怖くてつい言っちゃっただけなんじゃないか? 何か考えがあって、とかじゃなくてさ」


「お前はいい奴だな、ソウル。俺はあいつらと同じ村に住んでるってことが恥ずかしいよ」



 わざとらしく大きなため息をつき、しみじみとそんな事を言うトゥインだが、きっと本気ではないのだろうとソウルは思っている。

 そうでなければ、こげ茶を連れ出した時点で逃げようがないほど徹底的に追い詰めているし、彼らがしたことがどういうことかなんて説明もしない。


 黙って村中に言いふらせばよかっただけのことなのだ。

 本当に罪を償わせようと考えるなら。


 だがトゥインはそうはせず、追いかけていい含め、連れ戻す事を選んだ。


 ウェザが洞窟の奥へ行ってしまったことで穏便には済まなくなってしまったが、それでもソウルがこげ茶と一緒に戻ったことでそこまでの問題にはならずに済んだのではないか。

 そう考えていたソウルを、村の入り口で待ち構えていた大人たちは魔女を怒らせたのかとなじった。


 村を出ようとしていた捜索隊の前に、縛られ、猿ぐつわをされたウェザが突然現れた。


 驚き、縄を解いてみれば「ソウルとトゥインがやった」と言う。


 ウェザにいつもついて回る村の少年たちは、口をつぐんで何も知らないと言ったため、大人たちとしてはその場にいない2人が何かとんでもない事をしたのでは、と考えたのだろう。



 全身鎧の魔女の夫を師匠に持ち、ドラゴンと相対したソウルには、村の大人たちがどんなに凄んで見せても怖くはない。

 だが大勢で決めつけられてしまってはどうにもならず、困ったなと思いながらも言い返せずにいると、そのすぐ近くで大きな爆発音がした。



 何事かと横を見ると、トゥインが見たこともないほど怒りをあらわにして、髪の毛を逆立たせている。

 横に向けてまっすぐに伸ばした手の先では、轟々と炎が上がっていた。



 今いる場所は村の入り口だ。

 村人が大勢集まってはいるが、建物などはない。


 何もない場所での爆発と炎上は、人々をただ驚かせるには十分だった。


 トゥインが広げていた指をぐっと握ると、炎は一気に消えた。


 誰もがただ黙って見ている中で、トゥインが静かに告げる。



「次、バカな事を言った奴は燃やす」



 ごくり、と何人かが息を呑んだ。


 村長が、わずかに非難の色を込めてトゥインを問いただす。



「お前、魔法が使えるのか」


「ああ」


「いつからだ」


「もうずっと前からだよ」


「なぜ言わなかった!」


「言う必要があるのか? 言ったらどうなってたんだ? 村のいらないお荷物扱いだった俺に、どうか魔法を使ってくださいと誰か頼みに来るのか?」



 そしてトゥインは嫌味な笑みを浮かべた。



「違うよな? 村の一員にしてやるからありがたく思え、そう言って死ぬまで魔法を使わせて使い潰したんじゃないか?」


「そんな事はせん!」


「どうだかな。あんたがしなくても、あんたの息子と孫は間違いなくそうしたと思うけどな」


「貴様、トゥイン、なんということを言うのだ! 疑うにもほどがある!」



 何人かは村長に同調したが、少なくない人数が顔を背けたり、トゥインに同情するような顔をした。

 ソーリャにいたとき、そしてこの村に戻って来てから。

 トゥインが村の子どもたちからバカにされ、軽く見られていたことを誰もが知っている。


 そんな彼が魔法を使えるようになったなら、隠して誰にも言わずに村を出ていくだろうと思ったのだ。



 そこへ穏やかな声がした。



「どうしました、村長。これはなんの騒ぎですか」


「おお、ホレイショ様」



 ソウルの保護者である神官のホレイショがやってきた。











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