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無防備都市  作者: 昼咲月見草
セレとウォーダン

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14/89

報告

 アラゴンは、都市の役所から治安局、管理局に至るまであらゆるところに自分の息のかかった役人を置いている。

 セレフィアムの衣服の汚れを報告してきたのも、そういったうちの1人だ。


 地震があった当日、都市の外に市民と思われる子どもがいた、という話が入ってきたのも数ある情報のうちではあったが、この情報が奇妙だったのは、子どもが1人で都市の外へ出ることなど通常はあり得ない、という点がまずひとつだった。


 他にも、この子どもを迎えに管理局の人間が次の日向かったが、子どもはすでに転移魔法でいなくなったあとだったというのが、この情報の重要度を上げて届いた要因だった。



 この奇妙な報告を、アラゴンは何度も読み直していた。



 転移魔法が使える人間というのは限られている。

 近年、魔力の高い人間が減っているソーリャでは、それこそ名前を挙げられるほどに珍しかった。



「子どもを預かっていると知らせてきた人物について知りたい」


 指示を受けた秘書は、さらに詳しく書かれた資料を確認すると答えた。


「都市の外の、結界の内側にテントを張って生活している放浪の民の年寄りです。孫が熱を出して動けなくなった友人を連れてきたが、おそらく都市の住人ではないかとの事でした」


 子どもの容姿は、金髪に青い瞳。

 10才くらいの少女。


 アラゴンは「なるほど」とうなずいた。


「その年寄りと孫を見張っておけ。絶対に悟られるな」


「かしこまりました」


「それから神殿の兵士を何人か、都市の外の見回りに出してもらうよう、協力を取り付けろ」


「こちら側の協力者で、という事でよろしいでしょうか?」


「どっちでも構わん、聖女の狂信者ならな」


 書類を眺めながら、アラゴンは笑みを浮かべる。

 予想通りなら、狂信者たちは駒を配置するだけで勝手に動いてくれるだろう。


 上手くいけば、神殿を憎む聖女が出来上がる。

 そうすれば、彼が何もしなくても神官たちはその地位を奪われていくだろう。


 あの邪魔な紫の神官をこの街から追い出すときは、案外早くやってくるかもしれない。


 アラゴンは楽しげに椅子に背を預けた。








 その頃、被災した避難民たちは、怪我人や病人たちも連れてソーリャへと向かっていた。


 そこへ行けば、もしかしたら助けてくれる誰かがいるかもしれないからだ。


 ソーリャは豊かで美しい街だ。

 きっと助けてくれる。

 そう願って。


 ソーリャには聖女がいる。

 弱く、力無い、困っている彼らを見捨てるはずがない。そう信じて。


 近隣の町や村から、離れた土地からも、ぞくぞくと人々はソーリャを目指して集まってきていた。









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