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伝説
無防備都市。
その街はそう呼ばれていた。
その昔、文明は一度滅んでいる。
地震・洪水・津波、あらゆる災害が各地で次々と起きた。
人々は天罰だと恐れた。
神が人間にお怒りなのだと。
それでも、いくらかの人間は生き残った。
ここもまた、かつて多くの人間が暮らし、そして水底に沈んだ場所である。
豪雨と暴風、雷鳴轟く中、山々の中腹より上を残して、他は全て水に呑まれた。
生き残ったのは、伝説に謳われる少女、ターニャ・ソーリャの言葉を信じて山に登った者のみである。
水が引いてのち、人々はそこに街を築き直した。
これが、無防備都市と呼ばれるソーリャの街の始まりである。
その街には今も、伝説の聖女の名を継ぐ守り手が存在する。
今代の守り手は、波打つ黄金の髪に、遠く海の青の瞳を持つ娘。
その名を、セレフィアム・ターニャ・ソーリャといった。