月を見て泣く
駅から家への帰り道、なんとなく公園に寄った。
夜中の1時の公園には当然人なんて誰もいなく、何本かの電灯と近くのマンションの明かりが公園内を静かに照らしていた。
ベンチに座って煙草を一本吸う。
今日も疲れた。最近は毎日終電帰りだ。
疲れたを通りこして頭の中が麻痺していて、何かを考えることができない。
最近常に頭が麻痺している気がする。
明日の朝も早い。早く家に帰って寝なければいけない。
こんなことしている時間なんて全くない。
頭ではそう考えるのだが、一方で体を動かす気にはなれず、手に持ったタバコをゆっくりと吸った。
煙草を吸いながら誰もいない公園を見る。
砂場、ぶらんこ、すべり台がある小さな公園だ。
虫の鳴くジージーという音と、たまに通る車の音だけが聞こえる。
静かだ。
静かというのはとても落ち着く。
考えてみれば静かな空間にいるのは久しぶりだと気づいた。
自分がいる場所はどこもかしこも何かの音で溢れている。
目の前の砂場には子供が忘れていったであろうバケツがある。
もう覚えちゃいないけどおれも砂場で遊んでた時期があったんだ。
そのことを考えると悲しいような、寂しいような、取り返しのつかないことに気づいてしまったような気がして不安になった。
自分の体を見る。
革靴にスーツ。
スーツも革靴も汚れているわけでもないのに、その姿は何故だかとても惨めな格好に思えた。
「早く帰らないと。明日も朝が早いんだ。こんなことをしている場合ではないぞ」
「考えたって辛くなるだけだ。ならばいっそ何も考えるな」
頭の中ではそんな声が渦巻いている。
帰らなければ。
しかしダメだ。体が動かない。
空を見上げると月が浮かんでいた。
月を見るのも久しぶりだった。
月は丸くて綺麗な満月だった。
なぜか涙が出た。