表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ラーメン屋で踊ろう

掲載日:2022/04/14

春のショートショートです。

四月だ。

春が来た。

でも俺にはまだ春は来なかった。

予備校に通い始めたが、今日は休み。

いい陽気だし、俺は散歩にでかけた。

暖かいというより暑いくらいだ。


川沿いをしばらく行くと珍しく人だかり。

「どうしたんですか?」と聞いた。

「自殺だとよ」とおっさんが言った。

死んだのは二十歳くらいの男性で、死因は溺死らしい。


見渡すと、川の対岸にラーメン店の看板が見える。

俺はその店に向かった。

俺にとって初めてのラーメン屋だ。

小さな店で、十人くらいで満席だろう。

いい陽気のせいか、ドアは開けっ放しだ。

入ると、店主が一人いるだけだった。

俺が入店したのに、店主は何も言わない。

かなり無口な店主のようだ。

だが味は意外に期待できるかもしれない。

俺は無難にラーメンを注文した。

だが店主は返事をせず、黙ってテレビを見ている。

俺の声が聞こえていないのか。


そこに、さっきのおっさんたちが入ってきた。

「いらっしゃーい」と店主が元気よく笑顔で言った。

男たちは常連客のようで、メニューも見ずに口々に注文した。

店主は楽しそうに作り始めた。


「なにかおかしいぞ」

さすがに俺は気付いた。

「そっか、そういうことか」

俺は立ち上がり踊り始めた。

しかし誰も気にもとめない。

そりゃそうだ……。


俺は店を出て、さっきの川に戻った。

「やっぱり……」

俺と同じ服を着た男が川原に横たわっていた。

もちろん俺と同じ顔だった。

指でつついてみた。

死んだんだから動くわけない。

と思ったら、(俺の体が)立ち上がって両腕をあげ背伸びをした。

そうこなくっちゃ。

俺の人生、まだまだこれからなんだからね。

俺は俺の中に入った。

周りの人たちはみんな驚いていた。

やっと俺にも春が来たようだ。

<おわり>

久しぶりに書いてみた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ