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パニックJKと冷たい吸血鬼がもてなす喫茶店  作者: たー兄
アイドルの楽屋にて。
13/21

3.無理して気持ちいですか?

ケロケロケロケロくわっくわっくわっ!たー兄です。

好きな数字は・・・たくさんあるんですけど、特に好きなのは1と、3と、6と、9です。

「美羽ちゃんがさ、最近僕を、アイシテくれるんだよね。それはもう、たくさん!でも、事務所の社長が気に食わないみたいで、どっかに相談してこいだって。嫉妬してるのかな。」

「どうしてうちに?」

 当たり前の疑問だ。

 常連ならともかく、わざわざこの店に来る必要はない。

 Dは知也の質問を受け、何の悪気もなくにこにこと正直な気持ちを話した。

「え、だって、警察とか法律事務所とかの大きなところに行ったら、大事になって美羽ちゃんが可愛そうじゃん。ここだったら、相談したっていう証明だけできると思って。」

「つまり、ここは小さい店で、相談したところでロクな調査もしないと?そう言いたいんですか?」

 さすがにDも気まずくなったのか、視線を店の壁に向けて、黙り込んでしまった。

 対して知也は、一見獣のような目をしているが、倫からするとしんどそうだった。

 極力押し殺してあるが、荒く震えた息。

 こめかみから伝う汗。

 普段より赤い頬。

 全てが、彼の体調の悪さを象徴している。

 それでも、依頼を聞く探偵として、この店の店主として、Dと対峙していた

「・・・しますよ。聞いたからには、真実が分かるまで調査をします。それが、ーーーーーーーーーーー。」

 最後の言葉は、真横にいる倫にも聞き取れなかった。

 いや、知也は聞かせる気がなかった。

 Dも聞こえなかったであろうが、今はどうでもいいらしい。

 自分は適当に相談して終わらせるつもりだったが、どうやらそうもいかないと悟り、遠い目をした。

「で?依頼をお聞きしますよ?」

「ぁあ・・・警察には言わないでね?あのね、美羽ちゃんが1週間前くらいから僕をアイシテくれるってさっき言ったよね。・・・う~ん、言葉にはしづらいんだけど。僕に痛みをくれるっていうか・・・はじめは痛かったけど、今は快感。僕は美羽ちゃんからアイシテもらうの、好きなんだよ。周りの人は、何故か批判的だけど。」

 かなりDの主観が入っている。

 それでも、大体のことを察した知也は軽く頷いて顎に手を当てる。

 しばらく考えた末、Dに

「美羽さんの予定が開いている日に、お伺いしてよろしいでしょうか。」

「事務所に?・・・一番近いのは、今からだけど。」

 知也の瞳に一瞬、逡巡が浮かぶ。

 しかし、Dの「次は来週になるかな」という一言で表情が変わった。

 自分と依頼を天秤にかけ、迷いもなく依頼を選ぶ。

「では、今かr・・・」

「来週に!来週でお願いします!」

 知也の言葉を遮って、それまで一言も発さなかった倫が叫ぶ。

 理由は勿論、知也の体調だった。

 高校生の分際で出過ぎたことを言っているとは感じている。

 同時にここで引いてはいけないという決意も胸に秘めていた。

 高校生の倫でも、依頼の内容を察することはできた。

 そして、それが精神的にも肉体的にも、しんどそうな依頼だという事も分かっている。

(知也さん、ほっといったら無理ばっかじゃん・・・。)

 そんな事情をDは知る由もないが、ぎこちなく首を動かして頷いた。

 店主の意向であろう今日と、それに割り込んだ店員の提案の来週。

 どちらを選ぶかを吟味した結果、黙り込んだ店主よりも必死な目で訴えかける店員を選んだ。

「う、うん・・・来週でいいけど。」

 倫の目がきらめく。

 肩かった表情を一変させ、知也に向かってニコッと笑った。

 知也は表面上、温和な営業スマイルを浮かべているが、その心は荒れている。

 それでも、客が了承したことには逆らわず、お辞儀をしただけだった。

「お代は次回でいいのかな?」

「はい。」

「じゃあ、来週の午後2時にお願い。あ、これ名刺ね。ここの住所に来て。」

 ベルを鳴らしてあっという間に外に出たD。

 店の外で頭を下げて見送ってた知也だが、彼の姿が見えなくなった途端に店に引っ込み、椅子に深く座り込んだ。

 ひじ掛けを指でトントンと叩きながら、苛立たしそうに口を開く。

「倫。」

 怒りをはらんだ彼の声。

 倫は、後悔していなかった。

 罪悪感も微塵も感じていない。

「知也さん。・・・あの、無理して気持ちいですか?しんどいですよね。苦しい時に休むのは、全然悪いことじゃないと思います。休むのとサボるのをごっちゃにしないでください。」

 倫が知也の耳元でそう囁くと、一瞬息をつめた知也が倫を睨んで言い返そうとするものの、言葉が出ずに顔を伏せた。

 そんな知也を倫はしばらく表情を緩めて眺めていたが、ふと店内を見渡す。

「知也さん。お店、閉店時間ですよね。後片付けしときましょうか?」

「・・・。」

「知也さん?」

 目線を上に向けていた倫が、沈黙に思わず知也の方を向くと、肩ひじをついて瞼を閉じた店主の姿があった。

 ガタンと音を立てて立ち上がり、焦って知也をゆする倫。

(っ良かった・・・。寝てるだけか。)

「もう、無理するから。周りが大変になるのに。後片付けの方法分かんないんだけど!」

 倫の叫び声にも知也が目を覚ますことはなく、店内には沈黙だけが残った。

そういえば、倫の知也の呼び方が変わったことに気が付きましたか?

血原さん→知也さんになりました。

前章からです。

2人の距離が縮まった・・・?

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― 新着の感想 ―
[一言] はい、いらない報告をします。すみません。 俺も受け攻め診断やってみたんです。 なんかS60%,M40%でした。半々くらいだった… いらない報告でした! なんか、読み返すと、この時の知也さん本…
[一言] 同じ話に2回感想を書いてしまいすみません。 このDさん、ドMなんですよね? 俺は普段Sっぽいと言われるので、ドMの興奮が分からないのですが、 たー兄さんはSですかMですか?(答えなくていいで…
[一言] 奇数かな?と思ったら5,7がなかった… なんで5を入れないんですかっ! え、好きです、つきあってくだs(( 調子に乗りました。すみません。
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