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パニックJKと冷たい吸血鬼がもてなす喫茶店  作者: たー兄
アイドルの楽屋にて。
11/21

1.きゃく・・・客!?

ヒヒーン、パカラッパカラッ!たー兄です。

なんか・・・世界の中心で愛を叫びたいです。


※一応、前章で第1部完結ということで、ここから第2部です。

そのため、1部と説明が被っていますが、ご了承ください。

 月曜日。

 結局、倫が学校が終わり家から急いで『クリムソン』に向かった時には、店主は平然とした顔で接客をしていた。

 しかし、倫が来るなり説明もせずに奥に引っ込んだので、相当体調が悪かったのだろう。

 知也が入っていった扉を目で追うポニーテールでアホ毛が目立つ彼女は、現役女子高生の天川(あまがわ) (りん)

 PTSDを患っている。

 『クリムソン』の店主には、その原因である8年前の誘拐事件を解決してもらったという恩がある。

(何で平然とした顔してんだよ、あの人。)

「あ、もしかして・・・。」

「うぇ!?すみません、私、初めてでよく分からな・・・あ!前の男子高生!」

 呆然と立つ倫に、そーっと声をかけてきたのは、倫が初めてお客さんとしてきたときに、チーズケーキが美味しいと言っていた男子高生だ。

 相変わらず、詰襟の制服を着ている。

 今日も、無邪気にニコニコ笑っている。

「あれ?いつも土曜日の午前中に来てるんじゃなかったっけ?」

「いや、平日の放課後にもたまに来てるよ?」

(おぉ、『クリムソン』ガチ勢・・・?)

 平然とした顔で言ってのける男子高生に、倫はドン引きしつつ、あることに気が付いた。

 男子高生の前に、お水は置いてある。

 ただ、ケーキやドリンクがない。

 注文していない・・・ということはないだろう。

「っていうか、血原さん、注文受けました?」

「うん、受けてくれたよ。多分忘れられてるけど。」

(うんうん・・・って、は?忘れるなら注文受けんなよ、あの店長。てかそもそも店開けんな。)

 表面上は笑顔で、心の中で罵詈雑言を吐く倫。

 そして、注文を忘れられた男子高生は、のほほんと微笑んだままだった。

 そう、のほほんと・・・。

(え?何故に?)

 倫も、その様子に気づき、首をかしげる。

「怒ってないの?」

「え?だって、普段の知ちゃんが注文忘れておくに行くなんて有り得ないし。ていうか、たまにああなるんだよね。特に夏が多いかな。疲労かな・・・とかも思うんだけど、知ちゃんは何とか普通に振舞おうとしてるみたいだし、隠したいんならいいかなって。」

(あ゛?あの店長・・・めっちゃ愛されとるやないかい!)

 一見、一匹オオカミオーラを醸し出している知也だが、常連からは愛されているらしい。

「わあああ!もうこんな5時だ。バイバーイ!」

 毎度、時間に追われている男子高生。

 水だけ飲んで帰っていった。

 今回も名前を聞けなかったと倫が気が付くのは、彼が出てから数十秒経った後のこと。

 がっくりとうなだれる倫。

 誰もいなくなって静かになった店内には、息遣いだけが響いた。

(息遣い・・・うん?息遣い・・・血原さん!)

 倫が先ほど知也が入っていった扉を恐る恐る押し、中を覗いてみると・・・。

 倫の予想内と言えば予想内の光景が広がっていた。

 まず、玄関らしきスペースには脱ぎ捨てられた高級ブランドの本革靴。

 謎に新聞紙や雑誌、チラシなどの雑紙が散乱している廊下に、1人の男性が倒れこんでいる。

 ストレートの黒髪。

 白いシャツの上に黒いベストとエプロン。

 雪のように白い肌。

 肩で息をしながら床で丸まっているその男性こそ、喫茶店『クリムソン』の店主・血原(ちはら) 知也(ともや)だった。

「うわぁ・・・ちょっと外出してこれか・・・ヤバいな。」

 そして、知也は俗に言う吸血鬼だった。

 昔話の吸血鬼のようにニンニクと十字架が駄目なわけではないが、日光は1時間ほど当たるとすぐに熱を出す。

 今回は、倫の誘拐事件を解決するために外に出たことが原因だった。

 シャツのボタンが上から2つ開いていて、色気が半端ではなかった。

 整った顔立ちでもともと尋常じゃなくイケメンなのだが、頬を赤く染めて素肌を見せていると、なかなか破壊力がある。

 性別年齢問わずこの世界で、今の彼に逆らえる人はいない。

 それは倫も例外ではなかった。

 ・・・と、その時。

 知也がぴくんと動き、指先を動かした。

 そのまま、右腕をあげて、倫の頬に触れる。

(ん・・・♡)

 倫の頬がぼっとリンゴのように赤くなった。

 そして、知也が乾いた唇を微かに動かし、倫に何かを伝えようとする。

 倫の心臓が、ドクドクと高鳴った。

 倫が自分の顔を知也の顔に近づける。

 激しくなる鼓動にかき消されないように、心を静めて耳を澄ます。

「・・・く。」

「え?」

「・・・きゃく・・・。」

(KYAKU☆・・・え?きゃく・・・客!?)

 倫が脳内変換するまでに要した時間は約10秒。

「ベル・・・入口の、ベルが鳴った・・・。」

(うん。耳良すぎるね。私聞こえなかったよ。あはは。)

 さっきまで勘違いをしていたとますます真っ赤になる倫だったが、何とか立ち上がって店の方に体を向ける。

 目を閉じて落ち着いてから、知也に

「ちゃんと寝といてくださいよ?」

 と言い残して店に入った。

 倫は接客さえも教えてもらってないはずだが、妙に自信満々だ。

「いらっしゃいま・・・。」

「遅いなぁ!美羽ちゃんが可哀そうだろ!ね、み☆う☆ちゃ☆ん☆」

(癖強いのきたぁああアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!)

 

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― 新着の感想 ―
[一言] 世界の中心で、たー兄さんへの愛を叫びます。 ていうか倫ちゃん?あなたも結構キャラ濃いよ?
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