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アセンブル2 ― 14days  作者: 桜木樹
エピローグ

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2  hello world

 早いもので、僕が逸見くんに襲われたあの日から2週間が経過していた。その間に僕のまわりではいろいろなことが起きた。


 何よりも大きな出来事といえば杏珠の死だ。


 僕も逸見くんに殴られそれなりの怪我を負ったわけだが、なんとか一命を取りとめることができた。しかし杏珠は救急車で病院に運ばれた後すぐに息を引き取った。


 杏珠の死はすぐにカムライ教の信者たちに知れ渡った。それと同時に杏珠が養子であったことや、僕が杏奈の実の息子であることなど、これまで信者たちに隠してきたことをすべてを明らかにした。そして、カムライ教を終わらせることを宣言した――


 母が予言した世界の終わり。


 カムライ教を拠り所としていた者たちにとって、今回の事件はまさに世界の終わりと言えるだろう。


 母が受けっとていたメーにはなかった、母自身が告げた最後の予言。もしかすると、母はこうなることを予見していたとでも言うのだろうか……

 

 …………


 その日、僕と父はカムライ教の後始末をするためにそこに訪れていた。ここ2週間は警察が捜査を行っていて一般人の出入りが禁止されていて今日やっとここに入ることが許された。


 この建物を今後どうするかとか、お金がどうだとか、子どもの僕ではどうにもできないことはすべて父に任せた。本来ならそれらの仕事は葛西さんの役目のはずなのだが彼とは一切連絡が取れなくなっていた。

 彼の家の場所は知っていたので一度そこを訪ねてみたのだが、驚いたことに彼は退居していた。


 いったいどこへ行ってしまったのか疑問に思った僕は、個人的に杵島さんにも相談したがその後どうなったかについての報告は受けていない。


 事務所で父さんが仕事をしている間僕はボランティアとして集まった元信者の人たちとホールに並ぶ椅子を片付けていた。そこへ杵島さんが訪ねてきた。


「よう。元気か?」


 杵島さんはひとりだった。


「ええ。まぁ、それなりにですが……」


「そうか……ま、そうだよな。いろいろありすぎて心の整理をつけるには時間がかかるか……」


 杵島さんはどこか遠くを見つめるように目を細めた。


「僕なんてまだマシですよ。朝倉くんと比べたら」


 朝倉くん。元カムライ教の信者で同じ上ノ木高校に通う同級生。


 彼の境遇は僕より辛いはずだ。


 お母さんから自分が元幹部だったことを聞かされ、大親友の逸見くんが連続殺人事件の犯人であることが発覚して、思いを寄せていた杏珠がその彼に殺されたのだから。


「そうだな。そうなっちまったのは俺たち警察の責任だ」


 湿っぽい空気が流れる。僕はそんな陰鬱な空気を払拭するように話題を変える。


「ところで、なにか用事ですか? 父なら事務所にいると思いますが」


「ん? いや、用があるのは君にだ。葛西の件でな」


 そう言って僕の方に差し出してきたのはノートパソコンだった。それは10月の初めに葛西から受け取ったあのノートパソコンで、なにか捜査の役に立てばと思って僕が杵島さんに提供していたものだ。


「もしかして見つかったんですか!?」


 しかし杵島さんは首を左右に振った。


「まだ見つかってはない。ただこれのおかげでいろいろとわかったことがってな」


「いろいろというのは?」


 しかし杵島さんはそれは話せないと言って口をつぐんだ。どうやら僕の個人的な相談は警察全体の捜査要項になったらしい。そして目的は果たしたと言ってカムライ教のホールを出ていった。


 葛西さんの疾走は僕が思っている以上にきな臭いことになっていた。


 …………


 作業を終えた僕は家に帰る準備をしていた。父はまだしばらく時間がかかりそうだということで今まだ作業中だ。


 僕は父に先に帰ることを伝えてホールに足を運ぶ。するとそこには朝倉くんの姿があった。杵島さんが帰った後入れ違いになるようにホールにやってきた彼はボランティアとして後始末を手伝ってくれていたのだ。


「こんなところで、どうかしたんですか?」


「一緒に帰ろうと思って」


 この2週間で僕と朝倉くんの距離はグッと近づいていた。それまでほとんど話したことがなかった彼だが、事件の重要参考人として警察に一緒に出入りする機会も多かったし、同じような境遇におかれていたこともあってかちらからともなく話をするようになった。それが切っ掛けで学校でも話をするようになっていた。


 僕たちは一緒にカムライ教を出た。


 ここに来るときは父の車で来ていたため帰りは歩き。朝倉くんは自転車で来たらしく、それを押して僕に歩調を合わせてくれる。


 他愛ない話をしながら歩いていると、「ねぇ」と朝倉くんが改まる。


「気になってたんだけどさ。日高くんていつも敬語みたいな喋り方だよね?」


 僕は子どもの頃からずっとこの調子だ。いわば癖みたいなもので、それを誰かに指摘されたのは初めてだった。もしかすると、この喋り方が他人から見て壁を作っているように見えていたのかもしれない。それで今まで親しい友人と呼べる存在ができなかったのかもしれない。


「普通に喋っていいと思うよ。――その……友だちなんだし」


 朝倉くんが気恥ずかしそうに明後日の方向に顔を向ける。


 友だち……


 その言葉に僕も少し照れくさくなった。ただ、彼が僕のことをそう思ってくれていたことが素直に嬉しかった。


 何よりもあの時あの場所に彼が現れてくれたおかげで逸見君は動きを止めたのだ。それがなかったら彼の振り上げた凶器はそのまま僕の命を奪っていた可能性だってある。そういう意味においても朝倉くんは僕の命の恩人だ。


「そうですね、これは癖みたいなものですから。今すぐに変えるのは難しいかもしれませんが努力はしますよ。少なくとも友だちの前では、ね」


 そう言うと、朝倉君はこちらを向いて「うん」と頷いた。

 

 世界の終わり――


 もしかするとそれは、新たな世界の始まりを意味していたのかもしれない。

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